あるオンラインイベント企画の備忘録
8月初旬、2日間で10セッション、総視聴者数2,200名を超えるビジネス系オンラインイベントを行いました。
多くの人たちの尽力により実現できたイベントでした。私が関わった中で、学んだことを備忘録として書き出しておこうと思います。
これまで以上にコンテンツの力が問われる
企画するにあたり、(会場に参加者が集まって行われる)これまでのリアルイベントに比べ、オンラインにはどのような特徴があるかを調べました。
調査時期が緊急事態宣言の真っ只中であったため、今とは少し異なる状況ですが、大きく違いはないように思います。
リアルイベントでは著名なゲストを迎え、集客できれば他のセッションが多少面白くなくても会場内に参加者を留めておけました。オンラインではゲスト講演だけを聴講し、興味のないセッションには参加しないことが容易にできます。
登壇者が参加者の質問やコメントに即興で応えていくことも容易になりました。予定調和感が少ないセッションは参加者の満足度を高めることができますが、登壇者には即興性や会話しながらコメントを処理する能力も必要になります。
スライドに沿って一方的に話すだけのセッションはeラーニングに近くなってしまいます。内容そのものが面白くないとすぐに離脱につながります。
これまでは会場の雰囲気や休憩中のドリンクコーナーなど、五感で楽しむことも出来ましたが、視覚と聴覚だけがイベントとの接点になりました。イベントに参加しながら他のことを行う”ながら参加”も出来るようになりました。そのため、参加者に楽しんでもらうための演出や構成が、テレビやラジオに近くなったと思います。
これまで以上に登壇者のファシリテーションスキルや話術、セッション構成、コンテンツそのものの力が問われるようになったように思います。
企画を円滑に進めるために、意志決定の軸をつくる
今回の検討項目を自分なりに整理しました。
はじめから全てを決めていた訳ではなく、やりながら考え、決め、変更していきました。
まずはじめに目的とターゲットを明確に定めました。認知拡大なのか、ビジョンや知見の理解浸透なのか、自分達の商品のPRなのか、リードの獲得なのか。もちろん複数の目的があるものですが、最も注力すべき目的が何か、ターゲットは誰なのか、関係者と意識を合わせました。
目的とターゲットに応じて、セッション構成やゲスト、コンテンツ、デリバリ方法などが異なってきます。最も避けたかったのは、誰かの一声であれもやらないといけない、これもやらないといけないと、右往左往することでした。最も注力する目的に合わせて、実施するかしないかを判断できる軸をつくりました。
ライブにするか、事前収録にするかのバランスも苦労しました。参加者と双方向で即興性のあるライブの方が、満足度を高めることが出来ると思う一方、社内の登壇者はまだオンラインに慣れていませんでした。
そこで知名度が高く、オンライン経験豊富なゲストを招待するセッションはライブで、自分達の知見やサービスを伝える社内登壇者中心のセッションは事前収録にしました。
オンラインではゲスト講演だけ聴いて離脱することが容易になります。これまではゲストの単独講演でも十分でしたが、今回は必ずゲストと自社の登壇者をセットにし、自社の知見を訴求できるようにしました。
リアルイベントの企画との最も大きな違いは配信&視聴環境の設計でした。今回はイベントプラットフォームEventHubを活用しました。その狙いは以下2点です。
・1つの視聴空間に参加者を留め、他のセッションの興味を喚起
・誰がどれだけ視聴したかのデータを取得
実際には機能面で期待していたことが思ったようにできないこともありましたが、上記2つの目的については達成できたと思います。
なお、今回の反省点の1つがフォローアップ施策を初期に定めておかなかったことです。イベント終了後の対応が後手にまわりました。フォロー項目によっては、コンテンツや配信方法などが変わってくることもあります。イベント企画では、目的やターゲット設定とフォローアップ施策を初期に定めておくべきだと学びました。
リアルとオンラインの特性を理解し活用する
企画者、参加者、双方の経験から、主催者や登壇者の一方的な情報発信であればリアルよりもオンラインの方が優れていると感じています。双方向性の高いワークショップでさえ、オンラインで十分なケースも増えています。今回、オンラインワークショップも1セッション行い、十分な評価をいただきました。
では、リアルイベントは必要なくなっていくのかと言えば、私はそうではないと思います。リアルイベントは以下のようなときに大きく価値を発揮します。
・納得感や共感の醸成
・素敵な偶然との出会い、予想外の発見
・味覚、触覚、嗅覚の効果的利用(接待等)
これまでのリアルイベントの多くがオンラインに代替されていく一方、リアルイベントでしか出来ないことの価値は高まっていくはずです。
逆に一方的な発信など、オンラインで十分なイベントをリアルで行うと参加者の評価は下がっていくのではないかと思います。
リアルとオンラインの特性を理解し、うまく組み合わせることで、これまでにない体験や発見が生まれる場をつくることができる、つくっていきたいと私は思います。
いつか役に立つ日が来れば
最近は複数日、複数セッションで開催される大規模イベントも増えてきました。
私が面白いと思うイベントは、ライブ感が強く即興性が高いイベントと、テレビ番組に近い高品質な演出(多くは事前収録)のイベントです。
また”ながら参加”ができるラジオ的なイベントも面白そうです。
コロナ渦の状況を鑑みながらですが、リアルイベントも徐々に増えてくると思います。
世の中が少しずつ新しい方向に向かう中で、私も何かしらの貢献ができたらいいなと思います。そのときにこの備忘録が役に立てばと思い、書き留めてみました。