ととのわないプレイリスト②(邦楽編)
2年ぶりに、ととのわないプレイリストの邦楽編を紹介したいと思います。
ととのわないプレイリストについて補足します。
〜今から遡ること2年半ほど前〜
ととのいプレイリストなるものをサウナ女子(サ女子)さんが公開し、音楽好きなサウナフリークたちに影響を与えた。その選曲のセンスの良さに刺激を受けたぷいぞうが「ととのわないプレイリスト」なるアンサーを返すなど、一部でととのいプレイリスト談義が活性化し、SaunaCamp.さん、フロシアンテさん、DJ水風呂さんたちのリレー企画に発展したという経緯がある。
民明書房『ととのいプレイリストで君もととのう』より
下記に当時の私のプレイリストとSaunaCamp.さんのプレイリストをご紹介します。※なお私の古いブログは一切更新しておりません。
ととのいプレイリストとは、文字通りととのいを表現しているように聴こえる、サウナに入って多幸感に満ちている時に聴きたくなる曲、よりチルアウトするために聴く音楽のことを指しています。
一方で「ととのわないプレイリスト」とは、文字通りその対極の、ノーサウナ状態で精神も肉体もアンバランスな状態であることを更に助長するためのプレイリストです。岡本太郎の「芸術は心地よくあってはならない」という発言からインスパイアされています。
用途としては、これらととのわない曲を聴き込み、サウナに入る直前に聴いてよりコンフュージョンな状態を敢えて作り出し、サウナの気持ち良さを倍増させたいとき、ノーサウナが続いて負のエネルギーが溜まってる時に敢えて聴き、負のエネルギーを掛け合わせることにより逆にプラスのメンタルにガラッと変えたいときなどに有効です。是非、試してみてください。
今回は邦楽編とし、前回同様5曲に絞って紹介したいと思います。選定する上でのマイルールは以下の通りです。
⚫︎ハードコア、メタル、ノイズ、スクリーモなどなど「単純に激しい曲」は却下。
⚫︎コンセプチュアルな演出が強いバンドなどは却下。
⚫︎今回は邦楽に限る。かつ、歌があるものだけとする。
ととのわないプレイリストだからといって、単純に激しい曲を持ってくればいいわけではありません。そんなことをしたら全曲ブラストビートになってしまいますよね。ととのわない=激しいではないのです。
同様に、スターリン、人間椅子、ハナタラシ、初期のボアダムス、頭脳警察、キングブラザーズ等々も却下です。
音楽的にはアリ寄りのアリですが、見た目の怖さや不気味さ、危うさなどをすぐに想起させてしまうのでこれらも残念ながら無しとします。
また、THE ROOSTERSの「Case of Insanity」、The ピーズの「日が暮れても彼女と歩いていた」、「シニタイヤツハシネ」等々に代表される救いようがない歌詞のうた、悲しすぎる/鬱過ぎるのバラードも無しです。目に見えて悲しい曲を聴くという行為も今回もプレイリストの哲学から反れています。
なお、ナゴム系は優秀すぎてどのバンドもイケてしまうので逆の意味で今回は無しとします。
シンプルに、楽曲から放たれる「ととのわなさ」をメインに選曲しました。(この感覚、伝わってくれ~~~~)それでは早速一曲目に参りましょう。
ゆらゆら帝国/夜行性の生き物三匹
1曲目はゆらゆら帝国の「夜行性の生き物三匹」です。日本語ロックの2拍子の曲で最もカッコいい曲の1つではないでしょうか。曲のカッコよさもさることながら、このPVの中毒性がものすごい。なにもない空間でひょっとこ3人がただただ阿波踊りを踊っている、ただそれだけですが静かな狂気に浸蝕され、あっという間に惹き付けられます。
なんのインタビューかは忘れましたが、「普段何を読まれているのですか?」という記者の質問に、坂本慎太郎さんが「TVブロスとか..普通ですよ」みたいに応えてて本当にヤバい人だー、と感動したことを覚えてます。
逆に、ゆらゆら帝国に影響を受けたっぽい若い世代のバンドたちってこういう質問をされたとき、「夢野久作」とか、「ガロ」とか言っちゃうんですよね。ああ、普通だなあ..見た目のまんまじゃん..と感じちゃう。(この感覚、わかりますよね?)なので、意識的にヤバそうな雰囲気を演出しているバンドは却下なのです。
話を戻して、ゆらゆら帝国を聴いたことない方、聴かず嫌いだった方、ぜひこの機会にこの中毒性を味わってみてください。全然ととのいません。
54-71/beyo〜nd
2曲目は、54-71(ごじゅうよんのななじゅういち)の「beyo~nd」です。ととのわないプレイリストの邦楽編を考えたとき、真っ先に自信を持って思いついたのはこの曲でした。
もともと、ハードコア系の音楽をやっていたそうですが、あるときを境に方向転換し、無駄な音を削ぎ落とすということを追及していった結果、このようなサウンドスタイルに行き着いたとか。
ベースはヒップホップなのですが、味付けはノーウェーブ系とでも言いましょうか。ルーズに聴こえますが、非常にタイトで心地よいグルーヴがあります。リズム隊の抜き差しもとてもいいアクセントになってます。生バンドというのもとても良い。
単なる変態バンドのイメージはあまりにも惜しいアレンジの知性溢れるバンドです。今でも充分光るアレンジなんだぞ、と強くオススメします。食わず嫌いせず、最後まで聞いてみてください!こちらも全くととのいません。
憂歌団/おそうじおばちゃん
3曲目は憂歌団の「おそうじおばちゃん」です。名前は知ってるけど、ちゃんと聴いたことないという方、結構多いんじゃないでしょうか。
一時期、サウナ界隈では「本物」とは何か、「本場」とは何かという話題がのぼっていました。その話者たちの唱えていた論法でいくと、日本人には本物のブルースやジャズを演奏できない、ということになるのですが..そんなことはあるはずがありません。
憂歌団は正真正銘、日本の「本物の」ブルースバンドです。
木村さんの「一日働いて2000円~」とシャウトする熱いボーカルからは、高度経済成長期の混沌を逞しく、飄々と生きる浪速のおばちゃんの生き様が生々しく伝わってきます。市井の人々が営む日々の生活より湧き起こる怒りや熱情、ユーモア、アイロニーなどのブルースの精神性を見事に表現していると思います。
バンドのグルーヴ感、ドライブ感も秀逸で、内田さんのギターもご機嫌なアドリブが冴え渡っています。
今日も一生懸命働いたけど、明日いや明後日までノーサウナで頑張らなきゃ!といった時に聴くことをオススメします。この曲はととのわない曲というより、ととのわない日常を乗り切る応援歌的な意味合いで選びました。必聴!
Tempalay/そなちね
4曲目はTempalayの「そなちね」です。ドラマ『サ道』をご覧になられていた方はご存知の通り、ドラマのエンディングで流れていた曲です。最近、新しいものは全然追っかけなくなってしまったのですが、この曲はドはまりしました。
「え?めっちゃととのいそうな曲じゃん」と思った方、恐らくドラマでの印象(2サビのみ)が強いのだと思います。ぜひフルコーラスで歌詞とPVの映像も併せて聴いてみてください。ど頭イントロからBメロまでの陰鬱な展開に戸惑うと思います。そこからの綺麗なメロディのサビの落差にやられること必至です。
個人的には たま × FISHMANS 的な曲調とアレンジ、つげ義春 × 松本大洋的な詩と映像の世界観がとても好みです。方向性はペシミスティックというか一種の破壊願望的な雰囲気が感じられて、ととのわなさをすごく助長しているなあと思ったので挙げさせてもらいました。
タイミング的にもタイムリーだし、まだ通して聴いていない方はぜひ!サウナイケナイ状態が続いててもう踏ん張れない時に、もう沈むとこまで沈んでしまおうという時にピッタリだと思います。
在日ファンク/きず
ラストは在日ファンクの「きず」です。バンドの編成、楽曲はジェームス・ブラウン直系のファンクバンドです。
ハマケンのボーカルもスタイルこそはJB のまんまですが、それを歌詞や独特のパフォーマンスによってオリジナルに昇華させているのはさすがです。SAKEROCKってものすごいフロントマンが2人もいたと思うと改めて稀有なバンドだったんだな~と感じます。
執拗なまでの「きず きず きず」というリフレインがだんだんとくせになって気がつくと口ずさんでいます。
PVのシュールな実験映画のような世界観も併せてととのわなさを加速させてくれます。
すべてはサウナのため
そんな小難しく考えないでもっと好きな(ととのう)曲を聴けばいいのに..と思った方も多いと思います。もちろん、全部好きな曲なんです。
これらの曲をどういう時に聴いているか振り返ってみると共通性があって、サウナ行けなくてやり場のないフラストレーションを抱えている時だということがわかったんです。それをプレイリストにしたら面白いかな~っていう単なる思いつきです。なんでもかんでもサウナに結びつける悪いクセ。
頭をひねって難しいことをこねくりまわすのも好きですが、シンプルに、自由に、思いついたことをそのまま楽しみたい、というのがそもそものきっかけです。サウナに入ってギリギリまで我慢して水風呂との落差を楽しむのもよいですが、音楽でもそういった反動をブーストできるよ~、と提案したかったのです。
サウナの楽しみ方は色々結びつけたりしなかったりすれば無限にあるわけで。サウナに入ってるときに他の人に迷惑をかけない限り、楽しみ余地はいくらでもあるよ、という主張が本当の伝えたいことです。
例え1人であっても、このプレイリストが誰かのサウナライフを豊かにすることがあったなら、そんな嬉しいことはありません。
今日もノーサウナで頑張るあなたに幸あれ。