このタイ・ホラー映画がおもしろい2 「フォービア/4つの恐怖」「フォービア2/5つの恐怖」

前回に続き、今回もタイのホラー映画2作をとりあげる。
実は2作とも、2009年にタイの映画を観まくっていたときに、タイ語版のDVDで観たので観たもの。しかし内容はすっかり忘れていたので、初めて観たのとほとんど同じ感覚で楽しめた。
どうやら「女神の継承」が公開されたタイミングで、日本での配信が開始されたようだ。

「フォービア/4つの恐怖」


原題 สี่แพร่ง Si phraeng(4つの交差点)
英語のタイトル 4BIA/Phobia
公開 2008年

監督 バンジョン・ピサンタナクーン、パウィーン・プーリジットパンヤー、ヨンユット・トンコントーン、パークプム・ウォンプム
脚本 
出演 アピニャ・サクジャロエンスク、ライラ・ブンヤサック、ナッタポン・チャートポン、カンタパット・ペルプーンパチャラスク、チョン・ワチャナーノント、マニーラット・カムウアン

[内容紹介]


4つの短編からなるオムニバス。「孤独」(監督:ヨンユット・トンコントーン)事故で足を骨折したビンは、ケータイのメッセージで見知らぬ男と出会うがーー。「報復」(監督:パウィーン・プーリジットパンヤー)一人の少年がクラスの不良グループからリンチを受け、死亡するが、少年は黒魔術でいじめっ子たちを呪っていたーー。「真ん中の人」(監督:バンジョン・ピサンタナクーン)渓流下りを楽しんでいた4人の仲間。だが、ボートが転覆し、一人が行方不明になってしまうーー。「最後のフライト」(監督:パークプム・ウォンプム)某国の王妃からの指名を受け特別便に機乗したフライトアテンダント。1対1の客室内ではなぜか王妃が彼女につらくあたるーー。

[解説]


正直、1話め、2話めはさほどでもなかったが、3話め、4話めの進むに連れおもしろさが増すので、1話だけ観て観るのをやめるのはもったいない。
1話め「孤独」、孤独だからといって見知らぬ人と安易につながるのは危険。オカルト要素がなくてもふつうに怖い。
2話め「報復」、どこの国にもいじめはあるんだなとは思うが、これはもはやいじめを通り越して犯罪。また、いじめられた少年の黒魔術による報復も容赦ない。
3話め「真ん中の人」は、コミカルなホラー。4人の若者の会話の中で、「心霊写真」のネタバレがあったのだが、案の定、このエピソードの監督は「心霊写真」のバンジョン・ピサンタナクーン自身だった。なお他にも「シックスセンス」「アザーズ」などのネタバレもあったりするので、気になる人はこれらの作品を観てからにしよう。
4話め「最後のフライト」は、「心霊写真」のもうひとりの監督パークプム・ウォンプムの作品。これはシチュエーションが秀逸。チャーター便の1対1の客室内での出来事は逃げ場がなくて怖さ増し増し。ส

2024年12月15日、アマプラで鑑賞。

「フォービア2/5つの恐怖」


原題 ห้าแพร่ง Ha phraeng(5つの交差点)
英語のタイトル Phobia 2
公開 2009年

監督 バンジョン・ピサンタナクーン、パウィーン・プーリジットパンヤー、ソンヨット・スックマークアナン、パークプム・ウォンプム、ウィズート・プーンウォララック
出演 ジラユ・ラオーンマニー、ニッキー・ニコール・セリオー

[内容紹介]


5つの短編からなるオムニバス。「見習い僧」(監督:パウィーン・プーリジットパンヤー)いやいや出家して修行僧となった少年が味わう恐怖ーー。「共同病室」(監督:ウィズート・プーンウォララック) 事故で両足を怪我した少年が共同病室で一夜を過ごすことに。隣のベッドには死ぬ間際の老人がーー。「バックパッカー」(監督:ソンヨット・スックマークアナン)タイの田舎でヒッチハイクする日本人カップル。大型トラックに乗り込めたのはいいがーー。「中古車販売」(監督:パークプム・ウォンプム)事故車を修復して客をだまして売りつける悪徳中古車ディーラーの女性が体験する一夜ーー。「最後に」(監督:バンジョン・ピサンタナクーン)『双生児2』の撮影現場で起こった信じられない出来事ーー。

[解説]


前作「フォービア/4つの恐怖」の大ヒットを受けて作られたオムニバス・ホラー。話数も1話増えて5話となった。これも5話めがダントツおもしろいので、もし1話めを観てこんなものかと思っても、そこで観るのをやめないで、最後まで観てほしい。
1話め「修行僧」 山奥の寺に出家した少年が味わう恐怖。むしろタイの修行僧の実態が垣間見えて、そちらのほうに興味を感じた。
2話め「共同病室」 両足を怪我して入院した少年の隣に寝ているのが、何やら偉い高僧。1話めとお坊さんネタがかぶっている。それだけタイでは仏教が身近ということか。
3話め「バックパッカー」 日本人カップル登場。ヒッチハイクしようとしてもなかなかクルマがつかまらない。このときの二人の会話が、タイのことをめちゃくちゃ下に見ている。まぁ15年前だったらそんな感じだったのかも。しかし、こんな見知らぬ人のクルマに乗ったら超自然現象など起きなくてもふつうに怖いことになりそう。
4話め「中古車販売」 事故車をだまして売りつける中古車ディーラーの女性がひどい目に遭う。ちゃんと因果応報になっているので、怖いは怖いがすっきりする。
5話め「最後に」 これがダントツ。「フェート/双生児」の続編(もちろん実際には作られていない)の撮影現場で起こる出来事を描いているのだが、笑いと怖さの緩急が絶妙! 監督は「心霊写真」「フェート/双生児」「フォービア/4つの恐怖」3話め「真ん中の人」のバンジョン・ピサンタナクーン。「フェート/双生児」の主演女優が登場するほか、「真ん中の人」の登場人物4人が役名もそのまま、映画製作のスタッフとして登場している。「フェート/双生児」のセルフパロディや「心霊写真」、「真ん中の人」ネタもあったりして楽しめる。
もちろん、これらの作品を観ていなくても問題ないが、できればこの3作を観た上で観ることをおすすめする。
それにしてもバンジョン・ピサンタナクーン監督、コメディのセンス抜群だな。通常、タイのコメディ映画を観ても文化の違いからかそんなに笑えないことが多いのだが、この作品はめっちゃ笑えた。フィルモグラフィを見たところではこの監督の長編コメディはないようだが、ぜひ撮ってもらいたい。

2024年12月16〜17日、アマプラで鑑賞。

いいなと思ったら応援しよう!