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遠回りで愛知〜東京を移動①
5月に台湾へ出張があり、ちょうど時期が重なるように日本で学会も開催されるということで単身一時帰国。学会会場は関東であったが、実家の愛知県にも帰郷。普段なら東海道新幹線で浜名湖・富士山・駿河湾と将来住みたい個人的NO.1の静岡県が誇る景色を楽しみながら最速で移動するのが定石。ただ約1年ぶりの帰国熱に浮かされたこともあってか、今年3月16日に金沢〜敦賀間が延伸開業した北陸新幹線を使って実家から関東へ移動した。さらにはグリーン車よりも上の階級・グランクラスという貴族・王族のものしか立ち入ることのできない、半ば伝説的な席を1ヶ月前から慣れないえきねっとで確保した。今回は(興味がない人にとっては)時間的に無駄としか思えない迂回旅行について2回に渡ってまとめてみる。
名古屋〜敦賀 特急しらさぎ
実家の新幹線最寄駅は東海道新幹線の基本こだま停車駅なのでまずは愛知県から福井県の敦賀まで出なくてはならない。1日でそこから名古屋・敦賀を回り東京まで移動すると到着がやや遅くなりそうなのであくせくすることなく移動したい。幸運にも移動を考えていた日の前日にバンテリンドームで中日ドラゴンズ対東京ヤクルトスワローズの公式戦があり、熱狂的燕党の母とその一戦を観戦し、延長戦で勝利した余韻に浸りながら余裕を持って名古屋で1泊。
朝食をホテルで済ませ、名古屋駅へ。実家へ戻る母親を新幹線改札口で見送り、名古屋から敦賀までは特急しらさぎで移動するため自分は在来線のホームへ、はやる気持ちを抑えながらかけあがる。乗る予定のしらさぎの到着まではまだ時間がある。ホームをあてもなく歩いていると、ホームの端にきしめん屋の看板が。新幹線のホームにあることは知っていたが、まさか在来線にもあるとは。愛知県出身といえども、三河地方なので地元の食文化は名古屋の影響をそこまで受けていない。それでもいわゆる名古屋飯は嫌いではない、むしろ無性に食べたくなることがある。きしめんも例外ではない。しかし朝食はさきほどホテルで母と一緒に食べたところ。次々と立ち昇る湯気の奥に吸い込まれてゆく他の客を見ていると、丼一杯分が入る隙間のないはずの胃袋に少しずつ空間ができ始めているがわかる。でも先ほどホームの売店で車内で食べる予定の黒い稲妻を買ってしまった。そんな脳と消化器の小さな攻防をJR東海の職員は知ってか知らずか、特急しらさぎ5号の到着を告げる。結局きしめん屋の暖簾をくぐることなく、しらさぎに乗車することに。
しらさぎはひだとともに名古屋と北陸を結ぶ重要な長距離特急で、その歴史は1964年にも遡る。最盛期には富山まで脚を伸ばしていたが、北陸新幹線の開業により金沢止まり、そして今回の延伸で敦賀止まりの特急となってしまった。いずれ"サヨナラしらさぎ号"でも運転されるのだろうか。廃止される最終運転時にだけ駅に集まって列車を撮っているのか集まった人間を撮っているのかわからない状態には興味がなく、できれば現役の内に乗っておきたい派である。
名古屋を出ると一宮・岐阜・大垣・米原と経済的に余裕のなかった大学生時代に関西から帰郷する際に度々利用していた東海道本線を西へ。特に大垣・米原間は快速列車でもほぼ各駅停車になるので東海から関西圏へぬけるある意味難所なのだが、特急しらさぎはすべて通過するのでJR東海が誇る難所もただの通学路に成り下がる。名古屋駅で買った黒い稲妻もいつの間にかなくなっていた。米原からは北陸本線に入るので進行方向を変える、つまりスイッチバック。米原から北陸本線を乗るのは実は初めてで、その景観はなかなか趣のあるものである。長浜あたりから歴史のありそうな家屋が立ち並び、さらに遠くには伊吹山をはじめとする高い山々が連なり、徐々に北陸が近づいているのが感じられる。滋賀県と言えば琵琶湖、日本一広い湖をその車窓に期待したいところだが、北陸本線はほとんどの区間で琵琶湖から離れているので、席は名古屋から乗る場合は進行方向に対して左側を確保したほうが良いかもしれない。
個人的に車窓で目を惹かれるのは水のある風景で、渓流や湖、一面に広がる海などはずっと見ていられる。今回そのリストに加わったのは水の張られた田んぼ。5月は田植えの時期で稲も育ってはおらず水田が太陽の光をいい具合に反射しており、この景色の素晴らしさに初めて気づくことができた。小学生の頃、社会の稲作に関するテストで100点中10点という追試しても間に合わない点数を叩き出したことをふと思い出しながら、水田の景色を楽しんでいると琵琶湖の西側を北上する湖西線と合流し、まもなく敦賀。
新幹線の延伸で関西・名古屋方面からの列車用のホームも新設されており、新幹線との乗り継ぎの利便性を考慮した作りになっているようだ。
1時間20分という通勤にしては長く、旅行にしては短い所要時間だが景色を十分に堪能できた。ここから今回の主役、北陸新幹線で一気に東京まで。
つづく