スペインからノルウェーに戻る、鉄道で-3日目-
スペインから始まりフランスを通って3カ国目のドイツ・カールスルーへで1泊し、明けた翌日はドイツ国内を北欧に向かって北上する、だけでは面白くないのでここでも少し正攻法から逸脱することになる。
カールスルーへからデンマークに向かうにはおそらくそのまま北上し、フランクフルト〜ハンブルクを通ってデンマーク国境を越えるのが定石かもしれないが、カールスルーへから向かう最初の目的地はドイツの首都・ベルリン。下の地図を見ていただけたらわかるように、ベルリンはカールスルーへからデンマークへの直線距離からは離れている。にもかかわらず今回の経路を選択した理由はまた後ほど。
カールスルーへ中央駅から乗り込む列車はドイツ国鉄が誇る高速列車・ICE。調べてみるとどうやらこの列車はスイスのチューリッヒ中央駅を始発としており、ベルリン・ゲズントブルンネン駅までおよそ8時間半かけて走破するらしい。しかも驚いたことにカールスルーへに到着した時点で席はほぼ満席で意外とベルリンまで行く人の多いこと(こちらの長距離列車はどの席がどこからどこまで予約されているか、各席に表示がされている)。余程の乗り鉄でもない限り8時間も鉄道で移動しようとは考えもしなさそうだが、こちらではむしろ「えっ?飛行機に乗っちゃうの?」式の考え方が浸透しているのかもしれない。
カールスルーへを出発するとフランクフルトに向かってほぼ北上し、30分かそこらでマンハイム中央駅に到着。確かここは給水塔が有名だった様な気がしたが、そんな人の思いを知ってか知らずか列車はさらに30分後にはフランクフルト中央駅に到着。ドイツの交通の要衝だけあってこの駅には東西南北どの方向からも列車が我先にとやってくる。国内だけではなく、フランス・ベルギー・オランダ・オーストリアといった隣国まで足を伸ばす国際列車の本数も多い。
完全に余談だが、この列車に乗る1ヶ月ほど前に仕事でフランクフルトからウィーンまでICEで移動したことを思い出した(下の動画参照)。行きは特に問題もなく快適な6時間だったが、帰りの列車が途中のオーストリア・リンツで立ち往生。ドイツ語の案内が分からないので隣に居合わせた女性にどういうことか聞いてみると、この先の線路沿いで第2次世界大戦中の不発弾が見つかり、それの除去作業によって全ての列車を一旦止めるとのこと。結局2時間後の後続車に乗ることができたが、やはり戦争なんてものはやらないに越したことはないのだなと痛感した。
フランクフルトからは列車は向きを変え、東へ向かう。ハーナウ中央駅で今度は進路を北東にとると、ドイツ特有の重厚さの中にも洒落た雰囲気のある街並みが次第に深い森に変貌していく。フルダ・アイゼナッハ・エアフルトとドイツ中央部の都市を抜けていくと、ドイツ東部の大都市・ライプチヒ中央駅に到着する。このあたりまで来ると森よりも平たい土地が目立ち、至る所に風力発電の風車が休むことなく回っているのが見られる。ライプチヒからは再び進路方向を変え、ベルリンに向かって北上する。
カールスルーへを出て5時間半、ベルリン中央駅の地下ホームに到着。この駅は2006年頃に開業した比較的新しい駅で、地下部分と高架部分にプラットホームがあり、それぞれが立体交差している構造。その中間層に飲食店やカフェ、スーパーマーケットや色々なお店が軒を連ねており、この駅だけで半日は時間が費やすことが可能だろう。
ベルリンに着いたのは夕方だったので、ここで1泊と行きたいところだがこのまま数時間後の列車に乗るのがベルリンまで来た理由。ここからスウェーデンの夜行列車・Snälltåg(下の動画参照)に乗って、目が覚めたら一気にスカンジナビア半島という鮮やかな流れ。ここからの旅の後半はほぼ弾丸強行日程。
何度か行ったことのあるベルリン市内のデパートで息子へのお土産を購入したり、夕飯を食べて発車時刻を待つ。途中、スペインから来たと思われる旅行者に「乗る予定だった列車に乗り遅れて、別の列車に乗らないといけないけど新しく切符を買うお金がないから恵んでくれ」とよく分からない相談を持ちかけられつつ、ストックホルム中央駅行きの夜行列車に飛び乗る。
予約した席は6人分の寝台個室。客車もかなり年季が入っており、6人用ということで快適かと問われれば「……..」としか答えようがないが、それでも横になって寝られれだけで十分である。片道で749SEK(1SEK=13JPY)と考えると、格安と言える。しかも寝台ではなく普通席(とは言え昼行列車に比べると広め)を予約すればさらに安価で移動することが可能だ。
夜行列車での移動もこちらではかなり人気のある移動方法のようだ。6人用個室はベルリンの次の停車駅、ハンブルク中央駅で満室になってしまった。そのうち半分は若い女性の1人旅で、スペインからノルウェーまで鉄道で帰る途中と説明すると奇異な目で見られるどころか、「環境に優しくていいわね」と、褒め言葉を頂戴した。
途中ドイツからデンマークの国境を越える深夜にデンマーク警察に寝ているところを懐中電灯で照らされて起こされるという逃亡犯の様な扱いを受けながらも(旅券の確認、ちょいちょい抜き打ちであるようだ)、目が覚めると列車はすでにデンマーク・コペンハーゲン周辺に差し掛かっていた。食堂車は連結していないが、車掌からコーヒーや軽食を購入することが出来るので起きがけのコーヒーを飲みながらおそらくこの列車から見える車窓の最大の見所・オーレスン橋からの眺めを堪能する。この橋を渡ればマルメはサンクスよりもすぐそこ。
12時間かけてドイツからデンマークを通り、スカンジナビア半島の入り口に到着。とは言え最終目的地のノルウェー・ベルゲンはこの半島の西端。口を開けて襲いかかるエイリアンに見えなくもない半島の下顎から上顎まではまだまだ。
続く。