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中央ヨーロッパ1周弾丸鉄道旅行❷-ベルリン〜ウィーン-

次なる目的地はオーストリア🇦🇹・ウィーン。ここからようやく中央ヨーロッパの雰囲気が溢れ出す。夜行列車まで半日ほど空いた時間をドレスデンまで寄り道することで埋めようと思ったが、独りで観光する気は微塵も湧いてこず、気づけばベルリンに戻ってきてしまっていた。

ベルリンから乗る夜行列車の始発駅は切符によるとベルリン・シャルロッテンブルク駅(Charlottenburg)。始発駅になるほどの、さらにはどこか煌びやかで雅な響き"シャルロッテンブルク"、さぞかし立派な駅だろうと思いを馳せながらベルリン中央駅からSバーンと呼ばれる近郊列車で移動する。10分も経たないうちに到着。確かに乗り場も8番線まである大きな駅であるが、発着する列車のほとんどが近郊列車もしくは地域間急行だけであり、駅の設備・周囲も欧州を代表する国の首都の駅にしてはどこか物足りない。駅のホームには製造年不明のベンチとゴミ箱が並んでいるだけで、雨風をしのぐ屋根も一部にしかかかっていない。8番線もある広い駅構内を長距離列車が惰性で通過していく様がその寂しさに拍車をかける。

昭和の古き良き商店のような小さい待合室で待つことにするが、「本当にこの駅であっているのだろうか」と次第に不安になっていく。30分くらい待っただろうか。発車時間まではまだ余裕があったので、結局より確実であろうベルリン中央駅に戻ってそこから乗ることにした。

ベルリン中央駅の発着表示。NJ457が乗る列車。

駅の窓口で列車が予定通りであることを確認し不安を拭い去ることができた。シャルロッテンブルク駅とは対照的な、ショッピングモールかと見紛うほど何でも揃っている中央駅で乗車前にREWEというドイツの大手スーパーで晩御飯を調達する。乗車直前の高揚感に任せてそんなに強くないにもかかわらず500mlのビールを2本買ってしまう。

REWEで買った晩御飯。

それにしても何故だろう、長距離列車に乗るときにはほぼ必ずと言っていいほどにサラミに手が伸びてしまう。これとほぼ同じ現象が高速道路のサービスエリアでのフランクフルトである。普段はそれほど食べるものでないのに、ある特定の場所・条件によってスイッチが入る一種の衝動だろうか。ビールとサラミだけでは教科書通りの反健康食なので、サラダを買うことで罪悪感をなだめる。

今回乗る列車はオーストリア鉄道・ÖBBが運行するナイトジェットと呼ばれる夜行列車で、ウィーンを中心にヨーロッパの東西南北へ網を広げている。この列車の行き先はオーストリア第2の都市グラーツだが、ポーランド🇵🇱・チェコ🇨🇿を通ってウィーンに入りそこからグラーツまで南下するという経路を辿る。つまり中欧4カ国を一夜のうちに走破してしまうのだ(ちなみに現在ではポーランドは通らずにドイツからチェコに入り、オーストリアに至る経路になっている模様)。

3人用寝台個室。就寝時にはシートが下段のベッドになり、中段・上段ベッドは壁から引き出す仕様。

しかも今回は3人用個室を追加料金を払うことで独り占めするという合法的な暴挙にでることにした。ナイトジェットには3つの座席区分があり、最安の通常座席(Sitzen)、6人用コンパートメント(Couchette)、そしてこの3人用個室(Sleeper)がある。値段は時期にもよるが通常座席ならば40ユーロほどで長距離を移動することができる。ちなみにこの合法的かつ非紳士的行為に払った金額は200ユーロ。

個室はカードーキーで解錠施錠できるもので非常に安心。ヨーロッパの夜行列車は時折、よからぬことを考えている人間が侵入していることもあるらしく、こういった安全性は確認しておきたいところ。個室内は3人分の座席が進行方向とは逆を向いて並んでおり、就寝時にこの座席が下段のベッドになる。中段・上段のベッドは壁から引き倒す必要があるようだ。ただこの個室、3人で利用するには狭く、3人が並んでケン玉に興じる隙間もないほど。やはり追加料金を払っておいて正解だったようだ。

列車は午後6時43分にベルリン中央駅を出ると以前の中心駅・ベルリン東駅に停車する。10月にもなるとこの時間はすでに日没を迎えており、夜景が車窓に映し出される。それから1時間ほどしてドイツ・ポーランド国境のフランクフルト駅に到着。フランクフルトと言ってもここは日本からの直行便があるフランクフルトではなく別のフランクフルト。正式にはフランクフルト・アン・デア・オーダー(an der Oder)で、馴染みのあるフランクフルトはアム・マイン(am Mein)。OderとMainはそれぞれ街を流れる川の名前で、同名都市を区別しているのだが、なぜオーダー川が女性名詞でマイン川が男性名詞なのか、ここにドイツ語を挫折した理由が垣間見える。

日中特に激しく動き回っていなかったが列車を待ち疲れたからだろうか、ポーランドに入ったあたりで睡魔の集団に襲われ、3人個室を1人で堪能する間もなく早々と電気を消して就寝準備。起きる頃にはチェコからオーストリアに入る頃だろうかとぼんやり考えながら眠りに落ちようとする……が、浅い眠りからすぐに引き戻される。ポーランド国内、非常に揺れがひどい。常に線路のポイント上を通過しているような音と揺れが続き、いつの間にか線路の上を走ってないのではないかと錯覚してしまうほど。おそらく眠気と戦いながらのことなので、通常の状態よりも余計に感じてしまっているのかもしれない。

しばらく眠気と車輪の狭間で揺れ動きながらもそのうちに瞼の蓋が下り、眠りに。目が覚めるとチェコのブジェツラフ(Břeclav)駅に停車していた。この駅はオーストリア国境に程近く、寝ている間にかなり走ってきたようだ。

ナイトジェットの朝ご飯。

ナイトジェットで寝台を利用する場合は上のような朝ごはんが提供される。事前にアンケート用紙のような注文表に食べたいものを選んで乗務員に渡すと目的地到着の30分〜1時間前くらいに個室まで運んできてくれるなかなか気の利いたサービス。ただ、なぜヨーグルト以外2つもらえたのかよく覚えていない。合法的に3人個室を単独占拠したからだろうか?

ウィーン中央駅に到着。

朝ごはんを食べていると空が徐々に朝の色に染まっていき、ウィーンが近づいてくる。3人個室はそれなりに楽しめたが、ウィーンから乗る次の列車のことを考えると少し気が重くなる。次の列車は同日の夕方発車のナイトジェットでベルギー🇧🇪・ブリュッセル南行き。ウィーンに朝7時に着いて、発車までまた半日以上待たなければならない。いくら弾丸日程とはいえ夜行列車を乗り継ぐのは少し浅はかだったかもしれない。

続く。

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