誰も教えてくれない【固定費削減】
堅苦しい話は抜きにして "金融リテラシーゼロの友人が「火の車」家計から抜け出した事例" を用いながら【固定費削減方法】をお伝えしていきます
30歳独身、フルタイムの正社員(平均年収より少し多い給料)で実家暮らしだったにもかかわらず、資金繰りに苦しんでいる知人がいました。ここでは仮にA君と呼びます
一年半ほど前のある日のことです。いつもの通りお昼にA君と散歩をしていると、私に唐突に問いかけました
「ところで、貯金とか投資ってしてる?」
(おっ、得意分野じゃん?)と思いつつ、まずは正直に答えました
「貯金も投資もやってるよ。」
間髪入れず、A君が質問しました
「そうなんだ。ちなみにどれぐらい資産あるの?」
私はリアルではわりとオープンな人間なのですが、正直に答えたら引かれるかもしれないと思い、控えめにこう告げました
「そこにある〇〇なら新車で買えるぐらいかなぁ、値段知らないけど。」
A君の目の色が変わるのがわかりました。そして、引かれていることもわかりました
「ダブルインカムだからだけどね(^^;)」
とフォローを入れるも上の空の模様。その後少し無言の間を置いて、決心したかのようにA君が切り出しました
「実は、貯金が全くなくて親にも借金しててお金に困ってるんだけど、どうすればお金が貯められるのかなぁ?」
”ぷっちょ氏の資産形成相談” の巻、はじまりはじまり~
(特定を避けるため一部変えておりますがほぼ実話です)
【Aくんの家計と資産状況】
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A君は10年ほど前からエクセルで家計簿をつけるほど超ド真面目な性格ですが、ローンなど固定費に対する認識が甘いタイプでした
これは後でわかったことですが、お人好しなので電話営業を断れず副業コンサルでカモとして嵌められそうになったことやマルチ商法(MLM)に手を出して借金したこともあり、お世辞にも賢いとは言えません。本人も「考えることは苦手」と公言しております
そんなA君は、友達で外食に行こうという話になった際には度々「給料日前だからちょっときついかなぁ」と言っていたことから、貯金は少ないだろうということはわかっていました
iPhoneの新しいのが出たらその最高容量版(20万円ぐらい?)を買ったり、300万円ぐらいする新車を乗り回していたことから、生活費を切り詰めているパターンではないことは一目瞭然だったからです
一方で、相談を受けたちょっと前に引っ越すまでは職場まで実家通いであったため、本人としては贅沢をしているつもりはあまりなさそうで、みんなこんな感じなのだと思っているようでした。従って、30代前半で新車のアウディを即金で買えるという家族持ちの同期の存在には面食らっていたようです
そんなA君ですが、相談に乗るにあたり、まずは固定費を教えてもらうことにしました。すると、典型的な貯金できない家計体質であることが明らかになりました
ざっくりと箇条書きすると月の固定費は以下です
・家賃 :2万円
・光熱費 :1万円
・車のローン :5万円(親からの借金)
・医療保険&生命保険:1.5万円
・スマホ代 :1万円(本体代ローン含む)
・タブレット用SIM :6千円(本体代ローン含む)
・おしゃべりロボット:6千円(本体代ローン含む)
・定額アプリサービス:5千円
・昔の専門学会誌購読:5千円
・結婚相談所 :2万円
・スポーツジム :1万円
月額合計 :15.7万円
会社の寮住まいであるため家賃は2万円と抑えられていることが救いですが、固定費の多いこと…
他にも細々したものはありましたが、それは除いております。これに加えてスキー旅行が趣味で冬場は二週間に一度ほどスキー合宿に行き、一人暮らしであることもあり外食が多く、上述の通り好きなものはローンしてでも買ってしまう習慣があったことから、家計は火の車(貯金ほぼゼロ)でした
この内訳を聞いたとき、この手の家計は投資系の読み物や雑誌ではたまに見かけますがほぼフィクションだと思っていたため、私としても開いた口が塞がりませんでした。「ホントにいるんだ・・・」という感想です
ということで、とりあえず固定費を如何に削減するかが大事であるかということについてまずは説明し、一つずつ精査して少しずつスリム化を進めていくこととしました
【固定費の改善項目】
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[車のローン]
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車はすでに購入済みであり、かつ借金元が親であるためまだ良いのですが、なんとA君はまだ4年しか載っておらずローンもまだ残っているというのに、別の新車(300万円以上)に乗り換えようとしているということがわかりました。
「ケチケチして切り詰めたって何のためのお金?って感じだし、車ぐらいちゃんとしたものに乗らないとね」
とのことでした。これは前途多難だなぁ、と思いつつこう告げました
「その気持ちはよくわかるけど、お金を増やしたいのなら一時の満足感を優先して消費に走ってたら難しいよ。特にローンは将来のお金をも奪うものだから、それに値する価値があるかは考えた方が良いと思うよ。自分だったら逆に、将来お金を運んできてくれる資産にお金を使いたいね。」
そんなもんかなぁ、という困惑した表情を浮かべつつ、とりあえず新車の契約は見送ることになりました。これは、後に「あの時、止めてくれてありがとう」と感謝されることとなりました
車のローン:5万円(親からの借金)⇒借金倍プッシュ回避
[医療保険&生命保険]
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日本の社会保障制度を丹念に調べればわかることですが、ほぼすべての人にとって医療保険は不要です。世界トップレベルのソーシャルセキュリティーネットワークが日本にはあるためです
しかし、A君はご多聞に漏れずこの制度を全く知りません。従って、保険屋に勧誘される(おどされる?)がままに医療保険を組んでいたようです。更に、独身であれば生命保険は基本不要だと思いますが、A君はばっちり契約しておりました
そこで、日本の社会保障制度についてざっくり説明しました。傷病手当から高額療養費制度、さらには傷害年金や遺族年金の話まで一通りお話ししたところ、社会保険一つで斯くも充実しているのかと驚いてました
「この情報を踏まえて民間保険の契約の見直しを勧めるけどそこから先どうするかは個人の自由だよ」と伝えたところ、とりあえずネットや本で社会保障制度について調べてから決めるとのことでした
後日、どうしたのか聞いてみたところ、全部解約したとのことでした
これには驚きました。私は医療保険も生命保険も利用していないということは伝えてましたが、それは極端だからいきなりそうするのはお勧めはしないと伝えていたからです
A君の行動力に少し驚きつつも、他の固定費にもメスを入れていくこととしました
医療保険&生命保険:1.5万円 ⇒ 0円
[スマホ、通信費関連]
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A君のスマホ等通信費関連の固定費は以下のようでした
・スマホ代 :1万円(本体代ローン含む)
・タブレット用SIM :6千円(本体代ローン含む)
・おしゃべりロボット:6千円(本体代ローン含む)
・定額アプリサービス:5千円
高い、高すぎる!!
スマホ代に関しては、本体代のローンは月6千円ぐらいであり後は両親と通信容量をシェアしながら4000円ぐらいを親に納めているということだったので、ノータッチとしました。本当は楽天モバイルがその地域では十分な通信速度で格安なので最高のコストパフォーマンスなのですが、家族でやっていることに口出しするのはナンセンスだと思ったからです
そこで、その他の項目を攻めることにしました。タブレットはどのぐらい使っているのか聞いたところ、iPhoneの最新版を買ってからは全く使ってないとのことだったのでそれは解約しようとなりました。また、おしゃべりロボットについては、購入後二週間ぐらいはたまに遊んでいたけれど、その後一年以上全く触れていないそうなので、それなら不要だよねと話しました
しかし、解約を決心しつつも戸惑うA君。訳を聞いてみたところ、解約の際には本体代を一括して払わないといけないそうで、その代金を払えるほどの預金が無いとのことです
そうやって解約を渋らせてるんだという世の中の仕組みを一つ知ったところで、タブレットとおしゃべりロボットをヤフオクで売りに出してみて売れたらその収益で残債を払えばどうかと提案しました
とりあえず週末にヤフオクで売りに出してみるということで、週が明けて状況を聞いてみたところ、タブレットはあっさり希望価格で売れたと喜んでました。おしゃべりロボットはその後二週間ぐらい粘ったのですが、相場が下がってしまったようで売れなかったので少し値引きしたところようやく売れました
この売却益を利用して、無事タブレットとおしゃべりロボットのサービスとSIMの解約を行うことが出来ました
残りの定額アプリサービス5000円に関しては後ほど発覚したのですが、A君も契約したことを忘れてたように利用価値が無いので則解約となりました
・スマホ代 :1万円 ⇒現状維持
・タブレット用SIM :6千円 ⇒解約
・おしゃべりロボット:6千円 ⇒解約
・定額アプリサービス:5千円 ⇒解約
[その他サービス]
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A君が利用していたその他の月間費固定サービスは以下です
・昔の専門学会誌購読:5千円
・結婚相談所 :2万円
・スポーツジム :1万円
昔の専門分野の学会誌というのは、学生時代に購読していた学会誌です。現職では全く異なる業務を行っているので必要なのかどうか聞いてみたところ、仕事には必要ないけど何かの役に立つかもしれないからとの答え。では、どのぐらいの頻度で読んでるのかを聞くと、思いついたときにたまにパラパラとページをめくる程度とのこと
(いらんやん)と言いたい気持ちをグッと堪え、固定費削減を進めて行くに従ってそのうち要らないと気づくだろうと考え、この件は保留としました
次は結婚相談所ですが、話を聞くと月に4人程度のマッチングされた異性とデートでき、フィードバックを貰えるサービスだそうです。ただし、連絡先の交換はカップル成立まで禁止されているとのこと
それなら街コンとか行けば一回5千円で何十人と出会えるし連絡先も交換できるんじゃない?と告げると興味を持ったので、早速休みの日に街コンを試してみるとのことでした
試してみた結果、街コンの方が遥かに良いと気づいたそうで、結婚紹介所は後日解約してました(身近に気になる異性ができたというのも理由としてあるそうですが)
最後の項目スポーツジムは全然行っておらず、市営のフィットネスクラブなら一回300円でジムの利用からプール、シャワーまで利用可能とのことだったので、こちらを使うということで解約となりました
・昔の専門学会誌購読:5千円 ⇒保留
・結婚相談所 :2万円 ⇒解約
・スポーツジム :1万円 ⇒解約
【知識増強のためにオススメした書籍】
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さて、上記の固定費削減を進めていくには三カ月程度を要しました
私の話だけでは説得力に欠けるし客観性も無いため、節約に関する本を一冊紹介しました
節約だけではなく人生訓が学べる偉人の書、皆さんご存知『私の財産告白』です
後者は、ブロガーとしても有名な虫取り小僧さんが、金融庁職員に向けてNISA制度とインデックス投資について説明するという内容で、その質はさることながら読みやすさ・とっつきやすさは他の追随を許しません。さすが「有名ブロガー×金融庁」の最強タッグといったところです
これに合わせて、私は株式投資の優位性について熱弁をふるいました。とはいっても質疑応答が中心ではありましたが…
具体的な銘柄を推奨するのは憚られるため、いつもの通り「USA!!USA!!!!」とはいかなかったところ、最終的には先進国株式インデックスに興味を持ったようでした。リスクに関して口酸っぱく説明したため、米国一国というカントリーリスクは取らない方針としたのでしょう
生活防衛費の考え方を伝えたところ、生活防衛費を貯めつつ投資も並行して行うこととなりました
【NISAを開始】
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フットワークの軽いA君は、NISAの存在と株式インデックス投資の優位性を知ると、持ち前の行動力を発揮して即座につみたてNISAの口座開設を行いました
証券会社は楽天証券。この頃にはコスト意識が以前とは比べ物にならないほど高くなっており、開設理由は楽天クレカ利用で投資額の1%ポイントバック(500ポイント上限)があることとSPU目的とのことです
ランニングコストの大幅な改善により毎月数万円の投資資金は捻出可能になっていたため、つみたてNISAの投資枠である年間40万円をフル活用すると意気込んでました
購入商品は、eMAXIS Slim先進国株式90%とeMAXIS Slim日本株式10%です
自分ならeMAXIS Slim米国株式かeMAXIS Slim全世界株式にするなぁと思いつつも、ここは口出しすべきことではないと考え、インデックス投資家としての門出を祝いました
【現在のAくんの状況】
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以前のA君の状況に比べて遥かに堅牢な家計体制が構築できたため、その後の資産状況や投資成績などの細かな話はしておりません。ベースさえ出来上がればそこから先は自分で進めていけますし、資産形成の方法を教えてほしいと言われた私の役割は終わったと考えているからです。
その後1年以上が経過しましたが、A君からはたびたび感謝の念を伝えられます。とはいえ、私が行ったことは知識と考え方を伝えただけであり、意思決定にはあまり介入しないようにしたため、この成果は間違いなくA君が自ら得たものです。しかし、お返しがしたいと何度も言われるので、「アッパーマス(3000万越え)になったら美味しいお酒をご馳走してね」とだけお願いしました
ある日、例によって散歩していた際に、これまでと違ってどんどんお金が貯まっていくと嬉しそうに報告してくれました。さらに、コスト意識が高まったために、無駄遣いが日に日に減っているそうです。また、世の中のサービスに関する見方が180度変わったと言っておりました
保険から通信関連から結婚相談所に至るまで解約を断行した荒療治を行った甲斐はあったようで、今後ははめこみビジネスにハメられる心配も無さそうで心強い限りです
A君の今後の更なる資産形成と、かつてのA君と似たような状況にある人たちが無自覚なラットレースの罠から抜け出せることを切に願います
【固定費削減】や【節税】については、個人の資産状況や目標によってやることが大きく変わるため、今後機会があれば個別でアドバイスをする会などを開催したいと思います。ぜひお楽しみに