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モヤモヤ②

眠い目をこすり、駒大生の通学の波に逆らい、やっとの思いで駒沢大学駅につき、殺人的に混んでる田園都市線に乗り込む。

どの車両も混んでいて、背中とお尻で先に乗り込んでる乗客を押し、強引に乗り込まないと一生駒沢大学駅にいることになる。
まるで、満杯になっている灰皿に、さらに吸い殻を押し込むようだ。
扉を閉められる瞬間は毎回、自分がタバコの吸い殻になった気分で気が滅入る。

先日、そんな駒沢大学駅のホームに、歳の頃は16、7くらいで、バイオリンケースを背負った少女がいた。

満員電車に乗り込むのに慣れておらず、何本も電車にのれずに見送っている感じだ。

綺麗な顔をあえてかくすようにメガネをし、スタイルの良さをあえてかくすかのようにルーズなシルエットのワンピースを着ている。

なんて奥ゆかしいんだ。

2年後に控えた音大受験の為にバイオリン以外の欲望は全て抑え込む生活をしているに違いない。

少女は意を決したようにオレが乗り込んだ車両にバイオリンケースをかばいながら乗り込んできた。

よし、それでいい。
そうしないといつまでも電車にはのれないよ。
がんばれ!

発車間際に乗ってきたので、少女は四方を人に囲まれることなく幸運なことに、扉とオレにはさまれた位置を確保した。

三軒茶屋につくと、さらにたくさんの人が乗り込んできたが、オレと少女はなんとか扉の近くの場所を死守。

オレはその少女とバイオリンを守るために扉に壁ドンのごとく手をつき、混雑から少女を守って渋谷まで。

自分では壁ドンしてる自分の事を、目黒蓮くんのようなイメージでいたのだが、地下鉄の窓は非情にもガラスを鏡に変え、目黒蓮くんはどこにも見当たらずギラギラした竹中直人だけがうつっていた。

少女はオレのしわしわな腕の壁ドンで守られているなんて、一生気付くことはないだろう。
でもいいんだ。
オレの純粋なキモチはいつでも一方通行で見返りを求めないものだから。

少女は渋谷で降り、代わって同じ位置に今度は20代半ばくらいの女性が乗り込んできた。

おいおい
今日はなんてついてるんだ、ではなく
また可憐に咲く花を守らなければ❕
と思ったのも束の間、その女性は扉のほうを向かず、オレのほうを向いて、ノースリーブのシャツで、つり革につかまっている。

なんて破廉恥な❗️

さっきまでのオレの純粋なキモチは完全にふきとばされ、老眼で至近距離が見えないのに、混んでてメガネをずらせないもどかしさのまま表参道に着き、モヤモヤした気分のままいつものコンビニへとむかう。

明らかにフィリピン人だと思うのだが、サイパンという名札をつけて毎朝がんばっている子がいるファミマへ。

サイパンちゃん
母国の両親も心配してると思うけど、オレも毎日心配で様子をみにきてるの知っているかい?

いや
知らなくていいんだ。
オレのこのキモチは純粋なのだから。
見返りはその笑顔だけでいい。

ただお釣りを渡すとき、オレの手にふれたくないからといって、小銭をパラリと落としながら渡すのはやめてくれないか、、😢

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