植物由来の新素材でサステナブルな服づくり ~カポックノット 深井喜翔さんにお話をお聞きしました~
あなたが普段身に着けている衣料品の世界でサステナブル、エシカルといったキーワードが良く聞かれるようになってました。
Public Mindでは、共感できるお話をお伝えするStoriesとして、こうしたサステナブル・エシカルファッションに取り組む方々をご紹介していきます。
今回は植物由来の新素材でサステナブルな服づくりを進めるカポックノットの深井喜翔さんにお話を伺いました。
あなたの服選びを大きく変えるかもしれない木の実
こちらの木の実をご覧ください。主に東南アジアで収穫されるカポックです。日本でも観葉植物として知られています。
この実から採れる繊維には、あなたの服選びを大きく変えるかもしれない無限の可能性が溢れています。
まず従来のコットンの1/8という圧倒的な軽さ。そして繊維の中が空洞になっており、寒い時に湿気を吸い、温かく発熱するという機能を持ち合わせています。
カポックは高機能ですが軽さと短さ故に繊維にすることが難しく、商品化が困難な素材でした。こうした課題を乗り越え、エシカルカポックダウン™として商品化したのが、エシカルファッションブランド「カポックノット」の深井喜翔さんです。
学生時代から社会課題をビジネスで解決することを学び続けてきた
深井さんのサステナブルな思考は慶應義塾大学環境情報学部(SFC)の学生時代にありました。
「大学では『社会課題はビジネスで解決する』ということを学んでいました。当時からロールモデルはSFCの先輩でもある社会起業家の方々。例えばバングラデシュをはじめとした途上国の素材や文化を生かしたものづくりを進める株式会社マザーハウス社長の山口絵理子さん、副社長の山崎大祐さん。病児保育や障害児保育などの社会問題を次々と解決する認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんでした」
ソーシャルビジネスを学んできた深井さんですが卒業後は有休地を取扱う不動産会社に就職します。
「とりあえず会社員をやってみようと思いました。ビジネスでは利益だけを追い求めるのではなく、社会性と事業性の両立を目指すことが常識だと思っていましたが必ずしも常識ではなかった、ということにも気づきました」
その後、大手化学メーカーの化学繊維を扱う部署でカポックに出会います。
「学生時代から変わらず社会課題をチャンスと捉え、ビジネスとして解決できないかテーマを探し続けていました。社会性と事業性が担保され、お客さんにも喜んでいただけるような商品を作りたい。カポックならそれが実現できると思いました」
アニマルフリーとエコを実現するエシカルダウンカポックTMができるまで
皆さんが冬に着られるダウンの中綿に多く使われているのが水鳥の羽毛です。1つのダウンで約30羽分の羽毛が使われているといいます。カポックはこの水鳥の羽毛を代替できるのです。皮革や毛皮、羽毛などの動物性素材を使わない「アニマルフリー」という言葉がありますが、カポックはアニマルフリーを実現します。
また植物由来といっても木そのものではなく、カポックの木の実が使われるので森林伐採の必要がありません。カポックの需要が増えることでカポックが自生する東南アジアでの雇用創出や緑化、森林保全のサイクルが生まれることにもつながります。
ダウンを代替する高機能なカポックですが、商品化する過程で苦労がありました。
「カポックの実からとれる繊維は吸湿発熱の高い機能がありますが、軽さと短さゆえに加工が難しいと言われてきました。中綿として使いやすいようシート状にしたのですが、カポックとリサイクルポリエステルをどうするか。接着剤の材質を何にするか。接着剤の量はどの程度にするか。何度も何度も試作を繰り返しました。こうしてできたのがエシカルダウンカポック™です」
旧来のアパレル業界慣習を打破 Farm to Fashion
エシカルダウンカポック™をコートの中綿にして商品化したのが2019年10月。翌月にクラウドファンディングのMakuakeで販売を開始したところ、大きな反響を呼びました。
「Makuakeでは何度かクラウドファンディングを行っています。昨年実施した「エアーライトジャケット」のクラウドファンディングは、4500を超えるMakuake実行プロジェクトの中から20社選ばれるMakuake of the yearにノミネートされました。アパレルでは唯一でした」
カポックノットはエシカルダウンカポック™を使った新商品を次々と発表していますが、アパレルブランドとして他にはないコンセプトを掲げています。
「コンセプトの一つに Farm to Fashion を掲げ、原料の調達からお手元に届くまでのプロセスを大切にしています。従来の下請け、孫請けが慣例化したアパレル業界の分業制ではなく、カポックノット独自のサプライチェーンを構築しています」
独自のサプライチェーンをつくるにあたり、深井さんはインドネシアのカポック農園からカポックの研究施設、カポックシートの開発や製品のデザイン、縫製工場に至るすべてのプロセスを把握し、自ら足を運んでいると言います。
「モノづくりではいいモノをつくるだけでなく、お客様につくる側の熱量が伝わることも大事です。私はカポックノットの商品に関わるすべての現場に足を運ぶようにしています。国内だけでなくインドネシアのカポック農園など行く場所がたくさんでとても大変です。他のブランドの方にも『そこまではやれない』と言われました。しかし人任せではなく自ら足を運び、この目で見たことを伝えることで私の熱量がお客様にも伝わると信じています」
これからの展望
カポックノットの今後について伺いました。
「今年の秋の新商品は「薄くて軽くて暖かい」を追求した極薄ダウンシャツです。3シーズン楽しめる極薄ダウンシャツで、男女を問わずに楽しめると思います」
「これまでにない薄さ3ミリの快適さをぜひ体感してほしいです」
「極薄ダウンシャツ」は9月20日からMakuakeで販売開始しました。開始から8時間で400万円以上の支援が集まっています。
価格や商品の情報はこちらのページでご覧いただけます。
極薄シャツダウンをはじめとした商品は東京銀座にあるThe Crafted GINZAで実際に手に取ることができます。
https://thecrafted.jp/
また、The Craftedは9月29日までルクア大阪に期間限定出店しています。
サステナブルの前に「あなたの心が躍るか」が大切
最後にサステナブル、エシカルな服選びについてお聞きしました。
「例えばサステナブルやエシカルを謳う衣料品を買ったとします。買った瞬間は『いいことをした』と気持ちよく思うかもしれません。しかし、その一瞬だけで長く続かず、そのうち着なくなり、最終的に廃棄してしまうことがあるかもしれません。サステナブルやエシカルの前に普通の服選びと同じように『あなたの心が躍るか』どうかを大事にしてください」
サステナブルファッション、エシカルファッションという言葉が良く聞かれ、服選びの一つの切り口になってきました。しかし深井さんがお話しされるように普通の服選びと大きく変わりはありません。
ぜひ、極薄ダウンシャツも実際に手に取ってみて「あなたの心が躍るか」どうか体感してみてはいかがでしょうか。
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