汽水域のサービスデザイン
PUBLIC DESIGN LAB.では、分散した資産をネットワークとして組み合わせ、サービスデザイン思考によって価値を共創する「あたらしい公共」を探究するための研究・実践活動に取り組んでいる。公共におけるサービスデザインの注目度はここ数年で徐々に高まっており、行政DX、スマートシティ、シビックテック、市民共創など、さまざまな文脈で「サービスデザイン」というキーワードを見かけるようになった。
と同時に、サービスデザイナーが活躍するフィールドは、企業における事業開発にとどまらず、さまざまな分野に拡がり始めている。その拡がり方もさまざまで、民間から行政、都市から地方、企業から社会、人間から自然、など多様なベクトルが見られる。こうした複数の領域が交差するフロンティアを、ちょうど海水と淡水が混じり合う「汽水域」として捉えると、そこにこそ、「あたらしい公共」が芽吹く豊かな生態系がありそうだ。
一方で、「サービスデザイナー」という職能の定義はいまだ不明確だ。「サービスデザイン」というもの自体がそもそも学際的であるがゆえに、サービスデザイナーの専門性も一面的には捉えられない。かく言う私(小橋)も、「サービスデザイナー」という肩書きを名乗ってもう7年近く経つが、未だに、「あなたの専門性はなんなのか?」と問われると、説明に窮してもごもごしてしまう。
ただ、この曖昧さを都合よく解釈すると、「汽水域でうまく立ち振る舞うための術」と捉えることもできる。数年前に、社会問題を解決する新たなキャリアとして、企業、行政、非営利組織という3つの垣根を超えて活躍する「トライセクターリーダー」という人材像が叫ばれたが、いま、その使命を担うのは、汽水域で活躍するサービスデザイナーたちなのではないだろうか(と、これも都合良く解釈してみる)。
今回のシリーズでは、そうした「汽水域」でサービスデザインを実践している人たちをゲストに迎え、その人が自分のフィールドや職能をどのように捉えていて、どんな実践をしているのかを、ラジオ形式の対話によって探っていく。汽水域に生きるサービスデザイナー(的な人)たちの実践知をつなげることで、「あたらしい公共」の輪郭が見えてくるかもしれない。
Episodes (随時更新)
#1:都市と地方をまたぐ「野良サービスデザイナー」の生態
Guest:株式会社MIMIGURI 明間 隆さん
#2:行政と市民をつなげる超実践型サービスデザイン
Guest:Code for Japan 砂川洋輝さん
#3:境界を越えるバウンダリースパナーとしてのデザイン
Guest:中山郁英さん
#4:人間と自然の境界を溶かすマルチスピーシーズデザイン
Guest: ACTANT 南部隆一さん
#5:ルールメイキングの“関わりしろ”をデザインする
Guest:世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 隅屋輝佳さん
#6:ケアをひらくデザイン
Guest:ケアと暮らしの編集社 守本陽一さん
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