しゅんしゅんぽん×セブンソードさん×とのむらのりこさん
短編小説 『思い出の作り方』PJ
最悪だと思った。こんなことってある?
楽しみにしていた野外授業。みんなで作るカレーを食べるのを僕はすっごく楽しみにしていた。
ねえ、何があったか想像できる?
そのすいはん係の男の子が水を入れるのを忘れてたんだって。で、でき上がったのが、こげこげのカチカチのごはん。とうぜん食べられるわけがなかった。
わかってるよ、僕だって。誰にでも失敗はあるし、近くには何人もいた。大人だっていたんだから、それに気が付かなかった周りの人もわるい。そして、その子はとても落ち込んでいた。
それがわかってるからこそ、怒るに怒れない。
でも僕はこの野外活動をすごく楽しみにしていた。一生の思い出にしたいと思っていた。それなのにこんなことないよ。
ねえ神様、でもしょうがないんだよね。「いろんなことは起こりえるんだよ」ってママが言っていた。世の中にはいろんなことがあって、それは誰にもどうしようもないことなんだって。
それはわかっている。でも……
ママが迎えに来たとき、僕は一番最初にその話をした。
ママは笑いながら聞いていた。
僕にとっては笑い事じゃなかった。
でもママはこう言ったんだ。
「そのことが、一生の思い出になるんじゃない? ほら、あのとき水を入れ忘れた子がいたって、とてもいんしょう的な思い出になるよ。そしてたぶんその子も、今は落ち込んでいても、いつか大切な思い出になるはずよ」
ママはニコニコしながらそう言ったけど、僕はなんだかすっきりしなかった。
そんな気分で家に帰ってきた。
僕が明日の予定を確認しようとカレンダーを見たら、そこには今日のところに『野外活動』と『カウンセリング』って文字が書いてあった。
「ママ。ここにカウンセリングって書いてあるけど」
僕のその言葉に、ママは振り向いてカレンダーを確認する。
そして、「ギャー忘れていた! ダメもう間に合わないわ。あーまた予約のとりなおしだー」そう言って、スマホを出して電話をしていた。
『僕の野外授業の日、ごはんが焦げてカチカチになって、ママはカウンセリングを忘れていた』これは一生の思い出になるのかな。
そう思うとなんだかすごく笑えてきた。
《了》
セブンソードさんと、とのむらのりこさんの親子コラボをしてみましたー。
いかがでしょうか?
カチカチのごはんにもカウンセリング忘れにも、ほっこりと笑ってしましました。
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