越庭風姿さん【旬杯リレー小説】承「潮曇りの峰」 →転(PJ)
起ストーリー【C】PJ
承ストーリー「潮曇りの峰」越庭風姿さん
転ストーリー『宇宙に漂う心』作:PJ 約1500文字
日本国でAIが結婚相手を決めるようになったのは、いつからだっただろうか?
『マイナンバーを元にAIが最適な相手を選び出す』
それは人口減少を抑えるため国が打ち出した画期的な対策だった。
もちろん国民には人権があり、拒否申請は受け付けられる。
この制度が申込型ではなく拒否型だったことが、この国で成功を収めた理由なのだろう。
『立候補よりも推薦。郷に入れば郷に従え』
日本の生涯未婚率は目に見えて減少し、出生率も3を超えた。これは1980年代の水準だった。
日本での成功例をみて、先進国でもこの政策が検討されるようになった。将来的には国を超えたマッチングも行われるのであろう。技術革新を通じ世界は近くなっていった。やがて一つになるのであろう。そのように人類は進化してきた。
ボクたち人間という名の種族は、これからもコンピュータとより一層融合への道を進むのだろう。はたしてそれをボクたちは【共生】と呼ぶのか【浸食】と呼ぶのか?
でも、どちらでも同じことだった。いずれにしても、それはもう随分と前から始まっていたことだ。
白いボートに乗ったキミを見送った日。あの日以降、ボクはキミに会うことが叶わなかった。キミがどこにいるのか見つけることすらできなかった。
もし再びキミに出会うことができていたなら、ボクは今でもまだ地球にしがみついていたかもしれない。
ボクは民間にも開かれたISS(有人による国際宇宙ステーション)の研究員募集に応募し、今ではその研究員として地球の周りを回っていた。
そしてそんな宇宙いるボクにまで、お国はAIによってえらばれた結婚相手の通知を送ってきていた。こういうのもお役所仕事というのだろうか?
地に足つかぬ、こんな無重力状態の中で、どうやって結婚相手や家庭のことを考えろというのだろう?
ボクは結婚相手の通知を当たり前のことだが、すべて断っていた。
毎回、拒否申請のためには一度ログインする必要があり、申請を断ると親の元へ連絡が送信された。
拒否申請のたびに母親から抗議のメールが来る。毎回繰り返される、その一連の流れにボクは辟易としていた。
『新しい惑星を見つけたい』
それがボクの夢だった。そしてそのために宇宙に来た。
量子コンピュータを活用したAI予想により、その分野の研究は一気に加速した。その恩恵を受けボクたちのチームもいくつもの新しい星を見つけた。
ボクはきっと、自分の夢を実現させたのだろう。
このままこうやって宇宙に抱かれたまま、遠い未来まで行けたらそれはそれでいいのかもしれないと、ボクは思った。
それでもボクは今日も、地球の周りを『9.8m/s²』 で落下し続けていた。そのスピードでは、宇宙に飛び立つことも、地球に戻ることもできなかった。宇宙へ飛び立とうとするボクを、地球の重力がいつまでもつなぎとめていた。
こと座の『ベガ』と、わし座の『アルタイル』。その距離は15光年と言われている。遠く遠く離れたその二つの星に、何故お互いに引きつける力があったのだろうか?
宇宙ステーションの窓は3層構造になっていたが透明度は高かく、そこからはたくさんの星々を肉眼で見ることができる。7月7日。ボクはふと窓から目視で『ベガ』と『アルタイル』を探してみた。でもボクにはそれを見つけることができなかった。昔、地表から見上げたときには、あんなに簡単に見つけられたはずなのに……。
いつかの七夕。キミと見た夏の大三角形。その日も空の上では、織姫と彦星は天の川で隔てられていた。光の速度でも15年も出会うことのできないほどの遠い遠い距離の彼方に。
今この瞬間。もしボクが光に乗ることができたら、一秒にも満たずにキミの元に行けるだろう。でも、それはキミがどこにいるか見つけられることができたらの話だ。
『量子コンピューターAIにキミの情報を入れれば、ボクはキミを見つけ出すことができるのだろうか? それとも役所に届け出を出せばいいのだろうか?』
そんなことを思いながら、暗い宇宙の中でボクは1人ふわふわと浮遊したまま『織姫』と『彦星』を探していた。
PJ所感
承の物語のラストとは、少しずらしてストーリーを綴ってみました。
専門知識がないので難しいですね。
こんな形もいかがでしょうか?