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小説『ハロウィン・ムーン(後編)』【ハロウィンパーティー】

ずっとやりたかった創作。
それは、2022年に開かれた『十六夜杯』の【OP/ED】の物語を小説にすること。
この曲は私が作詞と作曲を担当し、歌は「shizugon」さん、イラストは「しち」さんが担当しました。
曲を作る前から私の中には、おぼろげですが一つのストーリーがありました。

9月の十六夜を見上げ、お互いを思い出すかつての恋人。
そんな前編から、後編にはどう繋がるでしょうか?

➡まずは前編から

エンディングの動画は、みんなの俳句大会【十六夜杯】のエンドロールを生かしたまま、歌詞を追加しました。
そして、間奏にある『二人のシーン』も作り直していますね(2分50秒~)。
ちなみにナレーションの声は七田苗子さんの息子さんです😁

もうすぐハロウィンですね!
riraさんがやっている【みんはいハロウィンパーティー2024】にも花を添えられれば、、、

小説の後に、歌の動画と歌詞を貼りますので、是非とも一緒にお楽しみください!!

【ハロウィン・ムーン(後編):真柴陽一】

作:PJ 1000文字

 毎年この季節、僕はこの街を訪れる。
 秋の終わりに行われるハロウィンのパレード、いつも月の光が薄くなり街に溶ける頃。今年も変わらない風景。秋の夜風が頬を冷たくなぞっていくことだけは同じだ。
 地元の温泉を守りながら、僕は心の奥底ではいつか咲に巡り合える奇跡を信じ続けていた。そして僕は今年もこの街の賑わいに身を委ねる。
 自分でも馬鹿げているということはわかっている。
 父は「いい加減にしろ」と吐き捨て、母は「最後のチャンスね」と笑った。
 今年のパレードを最後にすることは決めていた。来週には父が選んだお見合いの相手に会うことが決まっていた。
 昔から、僕は自分の望みを隠したまま歩いてきていた。多分これからも変わることはないだろう。
 でも、もし。もし彼女と再び出会うことができたら、何かが変わるかもしれない。

「私、絶対に30歳になる前に結婚するの。絶対にそう決めてるの」
「咲(サキ)はいつもギリギリだから、結局29歳になるね」
 僕はいつまでもその言葉を忘れることはできなかった。
 どうしようもない、馬鹿げた奇跡。

 通りは秋の色彩で満ち、パレードの行列が行き交っている。
 仮装した子供たちが太鼓に合わせて声を上げ、行列の先では大きな花火が上がった。
 夜空に散る光が、街の至る所に舞い落ちる。見上げれば、今夜の月は不思議なほどにぼんやりとした輪郭を持ち、ほんの少しだけ光の筋が見えた。

 ハロウィンナイトの魔法?
 月のいざない?
 祭囃子が響き渡る広場の中、肩までの黒髪が、秋の夜の微かな光に照らされ、まるで夜空に浮かぶ幻影のように佇んでいた。

 ほんの束の間、ぼんやりとその姿を見つめた。あの頃と変わらない彼女の幻がそこにあった。どこか寂しげで頼りなく、夜に一輪だけ咲いているコスモスみたいに、ゆらゆらとしていた。
 20:00ちょうどの最初の打ち上げ花火が上がる。
 人々はパレードを止め、一斉に花火を見上げた。
 そんな群衆の中、2人だけが花火を見ていなかった。
 僕と彼女は真っすぐとお互いを見つめていた。
 僕が一歩、彼女に近づこうとすると、彼女は突然、僕と逆の方向に走り出した。
 僕は訳も分からず、彼女を追いかけた。
 二人とも一言も話さず、ただ走った。
 暗闇に向けて進み続ける僕達から、パレードの音が遠く離れて行った頃、花火の音が突然止んだ。
 彼女は立ち止まり、その視線が僕の方へ向けられた。
 次の瞬間、僕の後ろでまた一つ大きな花火が咲いた。
 彼女の瞳には、あの日の十六夜の月が浮かんでいる気がした。
 暗闇を裂くように鮮やかな火の花が開き、夜空の最後の残光が静かに消え去る中で、彼女の小さな声が風に乗って僕の元に届いた。
 彼女がそっと差し出したその手に、僕は手を伸ばした。

《終わり》

ボーカル   shizugon
作詞作曲   PJ
イラスト   しち
ロゴデザイン rira
動画     PJ

『十六夜パレード歌詞』

【Aメロ】
月明り君をいざなう
パレードが始まるよ

笑顔の準備はOK?
ハロウィンの始まりさ

【Bメロ】
メロディ…言葉乗せて
出会おう、二人ここで

【サビ】
みんな集まって
花火打ち上げ
続くパレード
太鼓鳴らして
ラッパ「ぷいぷい」と

伸ばす手の先の
君を連れ出して
あの空へ
浮かぶ丸い月に揺れる二人

【Aメロ】
仮面の下に涙
隠して歩いてきた

【Bメロ】
失くしたものを探し
ここに来たよ僕は

【サビ】
さぁさぁ、手を取って
踊りあかすよ
夜はこれから
手を鳴らして
口笛「ぴいぴい」と

廻る輪舞(ロンド)だね
笑顔ぐるぐると
溶け出す夜
二人見上げた、輝く満天の星

【ラストサビ】
みんな集まって
花火打ち上げ
続くパレード
太鼓鳴らして
ラッパ「ぷいぷい」と

伸ばす手の先の
君を連れ出して
あの空へ
浮かぶ丸い月に揺れる二人

今宵集まって
踊る輪になって
子供のように
つないだ手を
ずっと離さないで

君の隣には
ほら僕がいるよ
大丈夫さ
また会おうね
白いnoteの上



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