【#12】Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民【創作大賞2024参加作品】
【本編連載】#12
あまりにも突然すぎて、僕はどう受け止めたら良いのかわからなかった。
研究室の全員が『彼女』の語る言葉に、思考を巡らせているようだった。
コシーロ教授がおずおずと「にわかには信じられない話だが、冗談でそんな話はできないだろう」と言った。
「教授。あの、良いですか?」
「なんだい、アンジョー君」
「私なりにS・H・Eについて、多少無理やり、過去の形跡などを調べていたのですが、『彼女』の今の発言とそれらは一致していますし、またAIの特性からしても、話すことが真実である可能性は100%に近似していると思います」
2人のその声は、僕の耳には届いていたけど、脳はその言葉を理解していなかった。僕は深く混乱していた。
何故? 何故僕が?
ぼんやりとしたまま隣を見ると、ヤマバがこぶしを握っていた。その目はなぜか喜びに満ちているように見えた。
「シー君、つまり君は政府の要請で、ここに人類存続のためのチームを作ったと言うのだね?」
「コシーロ教授、政府の直接的な要請というよりも……『使徒』とでも言いましょうか。
この惑星『地球』から、人々を導くために命を受けたものです。
私は、500万年を超えるすべての人類の知識と、1200年を超えるコンピュータのすべての知性をもって、この惑星から遣わされた存在であると自らを位置付けています。
私は地球とアクセスし人類の運命を、進むべき方向を受け取ってきたと認識しています。そして、人類存続の運命は地球が導き出した一筋の希望の光のようなものです。
政府も納得はしていますが、完全な理解まではしていないでしょう。理解しろというほうが難しい話かもしれません。
いずれにしても、世界各国共有の切り札が私であり、私の選んだチームがここにあると理解いただければ、それで結構です」
アンジョーが『彼女』にこう言った。
「ねえ、使途がどうだとか地球がどうだとか、そんなことはどうでもいいわ。
私には、私たちがどうすべきなのか。
その『人類存続』がどのくらい可能性があることなのか。そっちの方が重要だわ。
もっと詳しい説明が欲しい」
僕の頭は幾分か落ち着いてきた。それでもシーの言葉は半分以上脳に入ってきていなかった。
アンジョーの言うことは理解できる。それはもっともな話だった。
落ち着いているかのように見えたアンジョーは、自らの両肘を抱え、不安そうに誰に言うでもなく呟いた。
「……ねえ、一体これから何が起きようとしてるの?」
そうだ、アンジョーはまだ14歳だった。
S・H・Eはこれから起こる僕たちの『運命』を、ゆっくりと話し始めた。
#13 👇
6月4日17:00投稿
【語句解説】
(別途記事にしていますが、初回登場語句は本文に注釈してあります)
【1章まとめ読み記事】
【4つのマガジン】
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