PJ【起B】→ちあきさん【承】→ちあきさん【転】→PJ【結】『白い貝殻(仮)』
PJ【起B】
ちあきさん【承】
ちあきさん【転】
PJ【結】
あの日、僕は君を助けようと思ったんだ。
仲間と行ったあのバーベキューの日。
みんなで、たくさんにお肉を食べて、たくさんビールを飲んだよね。
酔った勢いで、ユウヤが出してくれた親父さんのボートに君と3人で乗った。
浜辺でタカシとユナが手を振っているのが見えた。
楽しかった、最高の夏だと思った。
風を切るように走るボートの上、隣に君の笑顔。
僕たちは、ユウヤにばれないように二人でキスをしたよね。
あの時あたりまえだけど、ユウヤには悪気はなかった。いや、酔っ払ったまま一緒に乗った僕たちも同罪だった。
転覆して放り出された僕は、君を一生懸命探した。
ちなつ!ちなつ!
大声で叫んだ。やみくもに泳ぎ続けた。体力の限り君を探し続けた。それでも僕は君を見つけることできなかった。
結局、僕だけがボートにつかまって生き延びた。
海上保安局の救命ボートで助けられた時には、ユウヤはもう冷たい体で見つかっていたようだ。
その後は誰も君を見つけることができなかった。
夜の海、月明りに浮かぶ君を見つけた。
大声で叫んだけど、君は振り向かなかった。
靴をぬぐのも忘れて、海の中を走った。
君の肩に触れたとき、君は振り返って確かに笑ったんだ。
そして僕に短いキスをすると「見つけくれて、ありがとう」と言った。
気が付いた時には、僕はベットの上にいた。
その手には『白い貝殻』あった。
僕は泣いた。泣いて泣いて泣き続けた。
君とのキスがこれで最後だなんて信じたくなかった。
どれだけそうしていただろう。
ふとスマホを見ると、たくさんの着信と、たくさんのLine通知があった。
Lineを開くと全部タカシからの通知だった。
『テツジ、バカヤロー。こんな時にお前はいったいどこにいるんだ? ちなつちゃんが見つかった。まだ意識はないし、俺も状況は飲み込めていない。でも、生きている。ちなつちゃんは間違いなく生きている! 場所は……』
気が付いたころには、僕は走っていた。
右手にスマホ。そして左手には『白い貝殻』を握りしめていた。
《了》
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