凸凹な階調
一日の終わり、駅を出てスーパーへと向かう
すれ違う人に身構える
すれ違いざま慌てないようにあらかじめ避けておく
人混みから逃れるようにできるだけ速く歩を進める
いつも同じ場所にいるビラ配りに会釈で断る
道端で花を撮る人に見惚れる
よそ見をするなと斜め後ろから怒られる
ショックで数秒間思考停止する
おもむろに振り返ると目が合ってしまう
これ以上の関わりを断つように少し回り道をする
どうしてこんなことしているんだろうと我に返る
イヤホンの音量を上げる
今日、明らかに季節が変わったことに気づいた
先週なんて蝉が鳴いていた
その次の日の夕暮れには百舌鳥が鳴いていた
先週が季節の変わり目だったのだろうか
これから蝉の声はしばらく耳にすることはないのだろうし、百舌鳥の鳴き声はますます色々なところから聴こえてくるのだろうな
季節の変わり方って、なんとなくデジタルのグラデーションのようなイメージを持っていた
なめらかなグラデーションだから、うつろい続ける変化に気づかず、すっかり次の季節に染まってから、もうこんな季節かとぼんやり思うものかなと
でもそんなことはなく、季節の変化を動植物や気温の移り変わりで見るとしたら、きっと凸凹な階調なんだろう
1年を通しての気温の変遷なんかは特に有機的だな
じわじわ段階的に変化していくのではなくて、前日よりも上がったり下がったりを繰り返しながら最終的に移り変わっていく
その変化がたった4つの季節に収められているのはなんだか不釣り合いな気もするが
そのグラデーションの軌跡をできる限り追いかけたいと思う
そういえばまだ衣更をしていない
そろそろ寒くなってきたので暖房をつけようと思う
外の変化に気を取られ、自分がそこに適応しなければならないことをよく忘れる