実家 宝くじ

 宝くじが当たったので、実家を買い戻した。かつて、不況のせいで父の会社が倒産し手放す羽目になった、僕の生家だ。
「ただいま」
 玄関を開けると、ツンとしたカビの匂いが鼻を刺した。ずっと手入れをされなかったんだろう。
 靴を脱いで、一歩踏み入れる。ギシッ、と床が悲鳴を上げる。
「残りの金でリフォーム出来るかな……」
 だが、急な階段も、幼い日の僕の身長を記した柱も、全てそのままだ。
 二階の僕の部屋に入った。
 勉強机も、タンスも、地球儀も。全て埃を被ったままだが、そのままあった。
「ただいま」
 僕は部屋の中心であぐらをかき、シミだらけの天井を見上げた。

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