ENIGMA(エニグマ)棗いつき 10th Album 感想文 【前編】
こんにちは。
トレミーと申します。
今回は先日の2024年秋M3にて頒布された
棗いつき 10th Album 「ENIGMA」
こちらの収録曲についての感想を
徒然なるままに書き散らしていきます。
正味、棗いつきさんのオリジナルアルバムは
1年ぶりということで、気が狂いそうな筆者ですが
正気を失わないよう舌噛んで耐えてます。
いやまあ、オリならライブのテーマ楽曲とかありましたよ。
一応振り返っておきましょうか。
1月:「ストラゴヴィコス」(2nd LIVEテーマ)
5月:「約束のリンカネーション」
5月:「Make sense」
6月:「百花繚乱」
8月:「天気雨の旅」(TOUR LIVEテーマ)
はい、正直に。供給不足です。
砂漠みたいにカラッカラです。
いやもうオリ曲にどっぷり浸かりたいオタクからすれば
飢餓寸前みたいな状態でした。
だからこそ。
この秋M3の新譜は情報公開当時から過去一の
期待を寄せざるを得ませんでした。
それこそ身体が震えるほどに。
だって本人が物語を軸に一気に楽曲を組み上げるんですよ。
「CodeQ」~「HYPNOSONIC」を知ってるオタクなら
期待できない人は誰一人として居ないでしょう。
随分前語りが長くなってしまいました。
さあ、10th Album。
キリ番の節目は、果たして。
1.「虚構性プロローグ」
Vocal:棗いつき
Lyrics & Compose:Feryquitous
文字通り、アルバムのプロローグとなる一曲。
アニメのオープニングにでもなるんじゃないかと
錯覚してしまうほどにキャッチーな前奏から
繰り出されるのは、目まぐるしさすらある
小気味良いビートと洒落たリリックの数々。
「魔法」「ウツロ」「エニグマ」と
物語の軸になりそうな歌詞は聴けば聴くほど
聴く人の想像力を沸き立てて止みません。
恐らくは前回の「イノリゴト」同様、
物語の展開した一場面を切り抜いた曲というよりは
この物語の世界観をグッと凝縮した
言うなればアルバムの自己紹介みたいな
立ち位置を持たされてるのでしょうか。
主人公の細やかな雰囲気や葛藤が文章抜きでも
スッと入ってくるのは流石の表現力ですね。
ComposerがFeryquitousさんということもあり
初見はアニソンのopとボカロみたいな要素を
受信したのか、どこか懐かしさを感じました。
理由はわからん。気のせいかも。
でも曲調の割に実家感がすごいんすよね。
言語化出来ないけど、誰か理解ってくれ。
2.「はじまりはDestiny」
Vocal & Lyrics:棗いつき
Compose:如月結愛
最近のいつきさんの曲からは中々珍しい
恋を叫び続ける、全力全開のラブソング。
これの作詞担当がいつきさん本人なんですから
「デフラグ」しかり、流石の解像度です。
フォークな雰囲気のエッセンスが特徴の本曲。
しかし繰り出されるのは恋する乙女の全力投球。
恋は盲目とはよく言いますが実に歌詞の8割は
恋焦がれる乙女のクソデカ感情のフルコースです。
歌詞だけなら実にあっっっっまい恋の歌ですが
曲の雰囲気がそこにスパイスを効かせます。
歌詞は甘さに全力投球とはいえど、
細やかな感情表現は流石の一言。
歌詞の節々から現れるのは、ちょっと背伸びをした
ビターさだったり、思わずちょっとした
寂しさが漏れるような甘酸っぱさだったりと
単調にならない歌いっぷりは最高です。
…一応歌詞の話を掘っていくと中々不穏ですよね。
基本的に揺らがない主観優位っていうか。
目線が全体的に「捕食者」から変わらないんです。
それが「乙女の美学」なんて言いますが、
案外小説ではエグい立ち位置貰ってるんじゃ…
とか考察してると楽しんですね、これが!
これがただのオタクの妄言になるかどうかは
小説を読んでのお楽しみ、ということで。
3.「愛のテロメア」
Vocal & Lyrics:棗いつき
Compose:鈴谷皆人(Vivid Lila)
「ENIGMA」の楽曲で唯一、先行公開された一曲。
またMVからバックストーリーがすんごいことに
なってることが判明してる曲でもあります。
ちなみに「愛のテロメア」の小説も
MV化してるコミック版もまだ未読の状態。
なので極力はストーリー面は触れずに進めます。
不敵な笑い声と共に開幕するこの曲。
前2曲よりもダークな雰囲気を纏いながら
バックのドラムやギターがこれでもかと
容赦なく聞く人の耳を駆り立ててきます。
それもそのはず。
言うなればこの曲は「葛藤」「苦悩」を
前面に押し出した愛の曲。
光あるところに必ず影ができるように
ドス黒い感情が増幅しながら襲ってきます。
そのため歌声の方もかなり特徴的に変化してて
「綺麗に響かせる歌い方」というよりかは
「感情を吐き出すための訴え」「叫び」みたいな
強烈さがあるように思います。
その特徴はAメロ→Bメロ→サビ繰り返すほどに
どんどんと強まっていくのが面白いですね。
1番のサビとラスサビだけ聴き比べてみて下さい。
歌詞の苛烈さも歌声の熱感もダンチです。
タイトルにもある「テロメア」。
これは生物学の用語で遺伝子の端部にある
構造のことを指す言葉として知られています。
で、この部分ってどういう部分かって言うと
端的に言えば細胞の寿命を示しています。
どんどん擦り減っていくんすよ、細胞分裂の度に。
そしてここが足りなくなると老化が起こると。
厳密には少し違うでしょうがまあご愛嬌。
繰り返す度に過激さを増して増して、
最後には破滅する曲。
そういうことかなぁと解釈を転がしてみたり。
いいよね、苦しんで苦しんでなんとか足掻いて
その先でプツンと呆気なく破滅するの。趣味が悪い_???失礼な…
あと最初の笑い声って誰なんでしょうか。
破滅した自嘲の嘲笑か。
それともあのキュゥ○えみたいな小動物か。
これも小説を楽しみに待つことにします。
4.「うずまき」
vocal:棗いつき
Lyric & Compose:n.k
歌詞カードがすんごいことになってるやつ。
とにかく初見時に耳を惹くのが和楽器ですね。
古い信仰に祈りを重ねるが如く、
不思議で独特の世界観を構築している曲です。
本当に珍しいベクトルの曲だと思います。
これも言語化が難しいんですけどね…
曲風は前の曲達に比べたら落ち着いた印象。
別に静かな曲って訳じゃないんですけどね。
全体的に淡々とした感じと言いますか、
逆にそれに不気味さを感じたりするんですが。
不意に響く尺八の音がその雰囲気を盛り立てます。
まさに世界の一部を抜き取ったような楽曲ですが
故にか、歌声も染み渡るような響きを感じます。
先に淡々とした、とは書きましたが反面
どこか芯は強いような印象があるんですよね。
いつきさん得意の高音もよく際立ってます。
この芯の強さみたいなとはどこから来てるのか。
頑張って歌詞カードを読み漁ってみたんですが、
なるほど。
開幕と終盤に気になるフレーズがありました。
開幕「驕る悪意に、揺れる祈りを」
終盤「驕る正義に、揺れる祈りを」
どうしてまるで相反するフレーズが
最初と最後に登場するのか。
他にも「祈り」「教義」という言葉が繰り返し
登場するなど不穏さは輪をかけて加速します。
盲目って怖いですね。
うずまきの輪の中に近づくほどに
正気が失われていっているように感じます。
もっとも、答え合わせはこれからです。
ただ間違いなく、淡々とした狂気を歌うのは
非常に難しいということでしょうか。
その点、流石私の推し!としておきますね。
5.「Chaotic Birth」
vocal & Lyric:棗いつき
Compose:HONWAKA88
異常。異質。カオス。
聴くメンタル次第では平気で発狂できます。
情緒とネジと理性の天井を吹き飛ばしても
なお理解には及ばぬ領域。
要するに本アルバムのラスボス枠という訳です。
実に目まぐるしく転調、静と動が繰り返され、
まるで理解をさせる気のない曲調からは
「俺を理解りたいなら狂ってから出直せよ」と
嘲笑われているかのよう。
歌詞も異常に短く、その内容もかなりシンプル。
ひたすらに狂気賛美を繰り返し、
絶えゆく理性に喝采を浴びせる異様さは
今までのラスボス曲とは一線を画します。
マジで何食ったらこんなもんできるんだ。
こういう記事書くときは曲をバックで流しながら
歌詞カード脇目にあれやこれやと綴るんですが
ちょっとこの曲は例外です。
だって歌詞も旋律もイカれてるんだもの。
狂気賛美と言いましたがまさにこれは讃美歌です。
それ以上でもなくそれ以下でもない、
まさしく純粋な狂気の塊。
悪意とか正義を超越した、理性では推し量れない
「狂気の産物」と呼ぶに相応しい一曲です。
にもかかわらず、耳に残るんですよねーーー!
聴くのをやめてからもずっとその残響が
耳の奥で鼓膜を震わせ続けます。
多分このアルバムで一番お気に入りかもしれない。
と思わせてくれるほどには好きですね。
めちゃくちゃ身体に悪そうな曲ですが
お行儀のいい曲ばっかってのも、なんだ。
そろそろ趣向の替え時ってことじゃないか?
って奥底から声がしてきます。
悪い曲だ…
6.「幸せの魔法」
vocal:棗いつき
Lyric & Compose:RD-Sounds
ごめんなさい。お行儀のいい曲も好きです。
「棗いつき」×「RD-Sounds」の
約束された勝利の組み合わせ。
クライマックスを飾るのにこれほど相応しい
組み合わせもそうそう見つかりません。
最初の息を吸い込む一音から
最後の残響が消え行くまで。
思わず唸らずにはいられませんでした。
細胞単位で震えますね。
もちろん供給を心待ちにしていたのもありますが
やっぱ心に響く音楽ってコレなんだなぁって
心底、安心して心震わされる曲なんです。
歌詞のメッセージ性、というか小説ありきだと
若干ネタバレ感すら漂うこの歌詞ですが。
ありふれた日常の中に、いるはずだった人の影を
そっと重ねて寂しさと隣り合わせの何気ない幸せを
祈り、紡いでいく。
そんな吹けば埋もれてしまいそうな淡い情景が
丁寧に歌い紡がれています。
そして、やっぱこの曲のサビ好きですね~~~!
ぐっと、すり抜ける風が通って行くような
爽やかさ、清涼感はどこか切なさを感じさせます。
情景が浮かぶ様、ってよく表現で使われますけど
まさにこういうことを言うのでしょう。
だからこそ、いつきさんの声のノリも、良い!
Aメロから丁寧に積み上げるような歌い方から
サビでは感情を前面に押し出した歌声に変わり
でも全く乱暴さはなく、寧ろ安定感すらあります。
目立たないですが本当にすんごいことしてます。
もしライブで歌われたら、死人が出ます。
少なくとも私は生きて帰れないでしょう。その時は介抱してくださいお願いします。
今までのよりもずっと「王道」って感じで
下手な小細工がない分、培ってきた技量が
フルパワーで感じられる一曲。
いや、マジでヤバイのが来たなって…
というわけで以上で「ENIGMA」の感想
その「前編」でございました。
「後編」はずっっっっっっっっっと我慢してた
特典小説を解放して、しっかり読み込んだ後に
改めて曲それぞれについての感情を
ぶつけていきたいと思ってます!!!
マジで楽しみすぎて、今日寝れるんだろうか。
とはいえ。
この「前編」っていうのは曲に対して
色眼鏡なく見れる時しか書くことができないので。
こういうフェーズも毎度の楽しみの一つですね。
ちなみに、こうやって曲だけで自己解釈した後に
特典小説でボコボコにされるの、楽しいですよ。
ではここまでお付き合いくださり
ありがとうございました!
次回後編でお会いしましょう。
トレミーでした。