「Son joyeux」がとんでもないっていう話。【棗いつきBirthday LIVE『Winter Gift』】

こんにちは。
トレミーと申します。

そして早速ですがこの記事はネタバレを含みます。

・「HYPNOSONIC」特典小説を読んでない人。

・「Winter Gift」をディレイで見るから
 演出の情報とかを頭に入れたくない人

以上の方はご注意ください。

では参ります。








1.何があったか。

「Winte Gift」に来てない人向け、
と言いたいところですが半ば事実確認を含みます。
私自身、未だ、現実を疑ってるので。

時は昼公演。
ライブのセトリも終盤にかかったくらいの頃です。
恐ろしいことにこれの一曲前が

「オラシオン Band ver.」

ということで、直前のMCから
相当涙腺がぶっ壊れていたんですが…

どうにも空気が変わったのがオラシオン直後。
演奏が終わり温かな拍手で会場が包まれる中。

舞台袖からステージに何やらゴロゴロと運ばれて行きます。
それなりに前で見ていたもんですから
その正体はすぐにわかりました。

キーボードです。マイク付きの。

そう、キーボードです。
異変を察した会場のオタクからは息のを呑む声や
驚愕を隠しきれない呻きが漏れます。
私はサプライズでゲスト参戦が来るのかとばかり
一瞬身構えましたが否。
そのまま真っすぐピアノに向かう
いつきさんを見れば解は唯一でした。

一瞬、後ろを向いてマニピュレーターの純平さんと
頷きを交わす、いつきさん。

永く永く。
時間にすれば数秒の出来事だったでしょう。
しかし、その音が響くまでには悠久に等しいほどに
張りつめた、期待と、緊張が会場を支配します。

息を吸った、その数瞬後。

「聞こえるかな 皆に」

「届けたい 歌なんだ。」


紡がれる歌の名は「Son joyeux」


私たち、オタクが2023年のリリース当時から
1年以上待ち焦がれた、待望の一曲だったのです。

そして真に驚くべきなのが

まさかの
「ピアノの本人演奏」

前代未聞です。
少なくとも今までのライブでは
一度もなかったことですし
ましてや棗いつきさんが弾けるなんて
思っても、考えてもいなかったことです。

弾き語りは冒頭だけでしたが
もうその衝撃たるや否や。

その拙いながらも奏でられる音に
膝から崩れ落ち、涙を流し。

心から
「ああ、これが棗いつきのSon joyeuxなんだ」
と、心を打たれた5分4秒でした。




2.何がヤバいか

さあ、今日の本題です。
まず私がいの一番に言いたいのは

「棗いつきがピアノでSon joyeuxを弾いてライブで演奏した」

これがどれほど大きな意味を持つかということです。

皆さま、アルバム「HYPNOSONIC」の特典小説は
お読みになったでしょうか。
「Son joyeux」はアルバムのトリを飾る一曲でありながら
物語において唯一、同じ曲であることが示唆されている
シナリオでも非常に重要な立ち位置を持つ曲でもあります。

この曲、物語では「春樹 麗生」という
高校生によって紡がれていく曲なのですが
彼女は早くして亡くなった「ハルキ・キョウゴ」という
天才ピアニストの娘、という境遇でして。

「HYPNOSONIC」での物語においては
聴いた人々を死に至らしめる「死の舞踏」こと

「Son macabre」

に対抗するために麗生の作った曲がこの

「Son joyeux」

ということになります。
なんとくタイトルからも察せる通り
意図して対になっている曲なんですよね。

そして先にも言ったとおり天才ピアニストの娘、
ということで彼女はこの曲を大衆の面々の前で
「ピアノ演奏」で歌い、奏でたのです。

父を亡くし、嘆きの中で自らの行く末を見失って尚
前を向いて自らの過去と向き合い
ここにいる自分を、魂を刻む、「よころこびのうた」

いいですか。
「Son joyeux」はだからこそ
明確にピアノ伴奏に意味が出てくる楽曲なんです。

私たちは一年、いやそれ以上を待ちました。
9th albumで聴いて心から感動して
そして他の「HYPNOSONIC」楽曲が続々と
ライブでお披露目されていく中。

「Son joyeux」はまだか…!

と心の奥底では悶々とした気持ちを抱えていました。
対になる「Son macabre」は各所で披露される中、
こちらの「Son joyeux」は不遇とさえ思っていました。

正直、ライブがバンド編成になったこともあって
生で聴くことを諦めていた節すらありました。

でも、いつきさんは諦めてなかったですね。
いや、誰よりも強い想いがあるからこそ
生半可に披露するのは本人が許さなかったのでしょう。


これは、「棗いつき」から「春樹麗生」への
最大級のリスペクトです。


心と魂に向き合った「春樹麗生」に対して
その表現に最大限の敬意を払った、まさに執念の表現。

冒頭だけ、とはいえ、そのためにピアノに向かい合った
行為は、それだけの行為に見えるかもしれませんが
あまりに大きく、強い意味がありました。

本当にこの一曲のためだけに用意されたキーボードと
練習に費やした時間というだけで
音楽に対する並々ならぬ想いが感じられますよね。

我々オタクが「早くSon joyeuxを聞かせてくれ!」
叫んでいるその最中、

誰よりもそれを臨んでいたのは
「棗いつき」さん、その本人に他ならなかったのです。

そのどこまでも実直なその輝きを見せてくれた
「棗いつき」さん。
そして「春樹麗生」さんに
最大限の謝辞と感謝を贈ります。

歌ってくれて、ありがとう。
あなたの「よころびのうた」はその場に居た
全ての人にとって大切な宝物になりました。
もちろん、私もその例に漏れません。

これからもこの曲が、もっと多くの人に届いて
心震わせ、誰かにとっての救いになれますように。

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