飯田有抄のショパコン日記18〜すごい人たちが出てきちゃった!!
ちょっと感情反射的なタイトルですいません。私の脳内言語がダダ漏れです。3日目夜の部は、濃厚でした。それはそれはもう、濃厚でした。強烈な奏者たちが次から次へと登場しまして。
「すごい人」の登場となるたびに、とんでもなく素晴らしい音楽に出会えた感激と喜びと、「ああ、私の”推し”はどうなってしまうのか・・・」などという不穏な(?)心のざわめきとが、もうごっちゃになって、味わったことのない感覚になって、もう大変です。この大変さはやはりコンクールならではですね。みなさんメンタル鍛えて、乗り切りましょう。
さて、昨日、異次元に連れて行かれましたのは、なんといってもこの人。アレクサンダー・ガジェヴさん!!
KAWAIのピアノをお弾きになりました。
配信でも伝わったのだろうか・・・冒頭の前奏曲 嬰ハ短調 Op.45から異次元のあの響き。
曲の終盤、下行しては上昇する、ゆったりした重音トレモロのパッセージによる推移部。聴いたことのないような、「え?ピアノですか?」っていう響きがしたんですよ、本当に。どうやってあの音だしてるんだろう。
思わず、(現地にきてから初めて)YouTubeの配信を確認してしまいました。
1:00:23あたりからのとこです。↓↓ 頭出ししてあります。
ホテルで開いてるノートパソコンの小さなスピーカーだと・・・だめだ、ぜんぜんあの時の音ではない(あたりまえ)。
ぞくぞくぞわぞわするような(もちろんいい意味)、不思議な音だったんです。完全にどこか異世界に連れ去られてしまうような。鳥肌。動画でも、少なくとも客席が水を打ったように静まり返っているのがわかりますか。みんな連れ去られていますよ、この瞬間。
とにかく、あらゆる音楽の機微を「わたし、わかってます、やってます!」じゃなくて、「はい、こんなかんじです、どうぞぉ」と言わんばかりに、とーっても余裕のある態度で示す、あまりにも大人な音楽!!
バラード第2番も、冒頭ユニゾンのドドード ドード・・・だけでクラッとくるのはどういうわけなんでしょうか。もうあっちに連れ去られてるからですね。
思わず身を乗り出してみていたら、他のコンテスタントはどうだっかちょっとわかりませんが、とにかく彼は、果敢にソフトペダルを使用しているようです。完全に左足は外しっぱなしの奏者がいるのはわかっていますが、こんなに踏んでる人、いたかな? 今後の興味ポイントになりました。
おもに音量ではなくて、音質のコントロールですね、ガジェヴがすごくソフトペダルを多用している目的は。これはすごい。「踏んでる?」というところでも、ボリューム的な総量はけっこう出ていたりしました。帰国したら真似したい(趣味人だってトライするのは自由・笑)。
ともかく、彼の演奏後は、正直魂を抜かれた人みたいに、しばらく呆然としてしまいました。あちらの世界からこっちの現実になかなか帰ってこれなかった。
あちらへの祈りなのか?(否、たぶんストレッチ)
もうお一人。とにかくキャラが立ちすぎて、強烈なお方登場!!
ラテンの風をまとって、かわいいチョッキ、もとい、おしゃれベスト姿で登場したのは、スペインのマーティン・ガルシア・ガルシア Martin Garcia Garciaさん! ガルシア・ガルシア?2回? はい、ガルシア・ガルシアです。
この公式写真だとかっこいいですけれど、肉眼で見た感じでは、かなり頬が紅潮していて、印象ぜんぜん違う・・・ もっと黒髪がポワポワしていたし、どちらかといえば、かっこいいより、可愛らしい印象。
初めて見るこういったお衣装もさることながら(白ベストの光沢すごかった)、最初のワルツ第2番から、底抜けに明るい、遊園地のメリーゴーラウンドみたいなキラッキラ感で始まって、「え?!」とびっくり。あれ?これは・・・ショパンですか? あ、そうだそうだショパンの曲だ、うんうん、みたいな。驚いた。
「ぼく、太陽の国からやってきたよ! ショパン、君の冷えた身体をあたためてあげるよ! 一緒に踊ろう。ニコッ」
と、彼が思っていたかどうかはまるでわかりませんが、首をクイクイ動かしながら、歌いながら、それはもう楽しそうに、ラテン系なノリノリで、ハッピーオーラ全開のショパン・ガルシア・ガルシア。もう私は、マスクの下で顔が笑ってしまって止まらない。思わず審査員の先生方はどんな表情で聴いておられるのか、見てしまいました。(どんなだったかは・・・あえていいません)
スケルツォ第2番には、「どうしてそうなる?!」という私の走り書きのメモがあるけれど、どうしてああなるのかは、それは彼がガルシア・ガルシアだから。突き抜けた存在感。もうこちらはほっこりさせてもらえて、楽しくなってしまった。
スタッフのお姉さんのこの表情。私もこんな表情で聴いてたと思う。
演奏が終わると、観客は一斉に沸きましたよ!!それはもうすごかった。拍手もずっと止まなくて(そのことにも私は驚いた。その聴衆のあたたかさに私はブラボーを送りたい)。
クリーヴランド国際コンクールの優勝者かぁ・・・。いろいろすごい。一流国際コンクールの凄まじさをみました。ふぅ。
写真:©Wojciech Grzedzinski/ Darek Golik (NIFC)