飯田有抄のショパコン日記9〜小さなマイクたちが伝える世界
ショパンコンクールの日々のオンライン配信の画質や音はすばらしいですよね。こちらに到着して体感したホールの生の響きがいかに「別物」であるかは書きましたが、出発前に見ていた動画からもかなり奏者の演奏の特性が掴めるなぁと思っていたので、どんな風に収録されているのか気になっていました。
実際に会場に来て見ますと、なんと、ピンマイクかな?と思うほどの小さなマイクたちが空中を飛んでいるように見えました。いえ、実際には飛んでないし動いてないですが、思ったよりもたくさんのマイクが吊ってありましたので、「おお!」となりました。
写真におさめ、ビデオクラシックスの林浩史さんにお送りしました。林さんは、いつもピティナの特級ファイナル@サントリーホールの映像をはじめ、オンライン番組などの収録もされている方です。写真から検証できたことをお伝えいただきました。
以下、林さんからのコメントです。
「このホールが普段オーケストラなどを収録するために常設しているマイクだと思われますが、ショパンコンクールにおいても
(1)会場内の響きや拍手の音を録るため
(2)サラウンド用の音の収録のため
に一部が使用されていると思われます。
今回のショパンコンクールのメインのマイクはピアノ前のステージ下から伸びている2本のマイクです。それに、まずは(1)でホールの響き、大きさやお客さんの拍手を録って、メインマイクに足しています。ここまでは通常のステレオ、2CHですね。
さらに、今回のショパンコンクールは、もしもSACDやBD等で販売する場合には、サラウンド音声付きのフォーマットで出すことが可能になるように企画されているかもしれません。チャンネル数がどれぐらいになるか?分かりませんが、少なくとも「5.0サラウンド」で出る可能性が感じられます。リアスピーカーなど、サラウンド再生のシステムをちゃんと構築して聴けば、あたかもワルシャワ国立フィルハーモニーホールの最良の席で聴いているような感覚が得られるSACDやBDが作られる可能性もあり得なくはないでしょう。
今回のショパンコンクールは、映像も現在の最高水準のもので収録&配信されていますね。 YouTubeはなんと4K(2160p)で生配信されています。
その撮影には少なくとも6台の高性能4Kカメラが使用され、ステージ裏の1名と合わせて計4名のカメラマンが付いているようです。(ステージ上カメラは遠隔操作、2階席奥は遠景用無人固定)
また高画質なだけでなく、ズームなどカメラの動きに品の良さを感じさせるのも、さすが世界最高峰のピアノコンクールだと思います。素晴らしいですね」
今後、もしかするとホールの臨場感がたっぷり味わえる音源がリリースされるのかも?と妄想するとワクワクします。
実際には会場にこられなくても、それに近い体験を世界中と共有したい。そんなコンクール運営サイドの取り組みにも注目ですね。テクノロジー技術も積極的に取り組むのが、歴史あるコンクールの迫力でしょうか。
林さん、コメントありがとうございました!
(写真:飯田有抄/ピティナ)