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ごほうびクラシック ピアノ・オールスターズⅢ 開催レポート
12月15日、第一生命ホールにて「ごほうびクラシック ピアノ・オールスターズⅢ」が開催され、ピティナ特級の歴代入賞者4名が数々の名曲を披露しました。三度目を迎えた「ピアノオールスターズ」。今回も会場は大変多くのお客様でにぎわいました。
ごほうびクラシック ピアノ・オールスターズⅢ
日時:2024年12月15日(日)
会場:第一生命ホール
出演: 北村明日人/中川真耶加/古海行子/内匠 慧(ピアノ)
飯田有抄(クラシック音楽ファシリテーター)
主催:特定非営利活動法人 トリトン アーツ ネットワーク/第一生命ホール
協賛:アフラック
協力:一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)
第一部はリクエスト曲によるプログラム。 「一足早いクリスマス・プレゼント」と題し、それぞれのピアニストが2曲ずつ、皆さまからの事前投票によって選ばれた人気曲を演奏しました。
コンサートは北村明日人さんによる ショパン:ノクターン 第20番 嬰ハ短調 遺作 から始まりました。北村さんの息遣い、そして極めて繊細な音色に、場内は身動き一つも憚られるような緊張感に包まれます。会場の残響を計算し少し長めに空白をつくるペダリングも新鮮で、美しい余韻に耳を奪われます。続く ベートーヴェン:ピアノソナタ 第14番「月光」より 第1楽章 は先ほどのノクターンと同じ嬰ハ短調の響きでありながらまた印象の違う静謐さで幕を開けると、それぞれの声部が見事に絡み合いベートーヴェンらしい充実した音楽が展開されていきました。
続いて登場したのは古海行子さん。ドビュッシー:ベルガマスク組曲より「月の光」はどの音もすべてが魅惑的で美しく、ホールの隅々まで古海さんの音色で満たされていきます。静かな音楽ではありますが和音の豊かで充実した響きが印象的です。2曲目は チャイコフスキー:「四季」Op.37a より 12月「クリスマス」。今の季節にもぴったりなこの作品。3拍子の軽やかなリズムと楽し気なメロディーに心が躍ります。右手と左手を何度も行き来するモティーフが古海さんによって生き生きと表現され、様々な登場人物による楽しい物語を見ているようです。
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一部の後半では中川真耶加さんと内匠慧さんが登場しました。まずは内匠慧さんによる ラヴェル:組曲「鏡」より「道化師の朝の歌」。遊び心にあふれた表現でピアノを操るように演奏し、この作品の独特な和声やリズム感の面白さを最大限に表現します。打鍵に対するアプローチの仕方も多彩で、音色の目まぐるしい変化に一瞬も目を離せない演奏です。
中川真耶加さんは ブラームス:間奏曲 イ長調Op.118-2 を誠実で丁寧な発音によってブラームスの後期作品らしい重厚な質感で演奏しました。情熱を内に秘めながら奏でられ、時にそれをのぞかせながら展開される音楽に心をつかまれます。続いて演奏された ショパン:ワルツ 第7番 嬰ハ短調 Op.64-2 は、ワルツのリズム感と流麗で軽やかなメロディーが絡み合い、魅力的な世界を創り出します。転調した中間部では甘美なメロディーが伸びやかに歌われショパンの音楽に陶酔する時間となりました。
盛りだくさんなプログラムとなった1部の最後には再び内匠慧さんが登場し、難曲として有名な リスト:ラ・カンパネラ を演奏しました。安易に大きな音量や速すぎるテンポでごまかすことなく、一音一音に神経を行きわたらせ誠実に作品に向き合う内匠さん。そうして前半で抑圧した激情をクライマックスで爆発させ、一部の最後を華やかに飾りました。
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第二部のテーマは「ピアノの詩人ショパン 名曲の花束」。多くの人に愛されるショパンの名曲が並ぶスペシャルプログラムです。
最初の演奏は北村明日人さんによる アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22 。細かな音によるパッセージも多いこの作品ですが、それらは北村さんによって連符の一音一音まで光り輝くような美しさで奏されます。ポロネーズの部分に入ってからは左手が意思を持って音楽を前進させ、特徴的なリズム感を強く印象付けます。華麗なテクニックと確かな構成力を感じさせる演奏でした。
内匠慧さんは 幻想即興曲 嬰ハ短調 Op.66 と バラード 第1番 ト短調 Op.23 を選曲。幻想即興曲では、真珠のように独立した上質な音たちが美しく並んで音楽が作られていき、独特のタッチに耳を奪われます。身体の動きがきわめて少なく、腕と指先、そして耳に細心の注意を払っているような弾き方が大変印象的でした。またバラード1番では特に、ホールの残響とその場で相談しながら作っていく繊細なペダリングが光りました。
中川真耶加さんの演奏は ノクターン 第8番 変ニ長調 Op.27-2 から始まります。温かな温度が感じられる深みのある音、そしてどこか現実から遠ざかるような浮遊感のある音楽が心に残ります。2曲目の 舟歌 嬰ヘ長調 Op.60 では様々な感情が入り乱れる複雑な世界を豊富な音色によって見事に表現しました。中川さんの集中力と作品への愛が、会場を音楽の中にどんどんと引き込んでいきました。
最後に登場した古海行子さんはご自身にとって重要なレパートリーであると語る 幻想曲 ヘ短調 Op.49 を選曲。行進のリズム、情感あふれるメロディー、情熱的な和音の連なり、静かな歌声などのいくつもの要素を、それぞれの魅力を存分に引き出しながらも全体を通した大きなドラマとして完璧にまとめました。コンサートの締めくくりにふさわしい、古海さんの作品に対する深い理解を感じさせる名演でした。
終演後は、出演した北村さん、中川さん、古海さん、内匠さんと司会の飯田さんが再びステージへ。演奏会を振り返りながら、ピティナ特級の開催会場の一つとして恒例となっている第一生命ホールとの思い出を語りました。
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また、今回の演奏会では開演前にキッズコーナーが実施され、4名のピアニストと子供たちが、レクチャーや質問コーナー、試弾体験などで交流しました。中々ない機会に緊張したことと思いますが、参加した皆さんは積極的に質問をされるとともにそれぞれ立派な演奏を披露しました。
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コーナーの最後には中川さんによるドビュッシーのアラベスク1番の演奏が♪
素晴らしい音楽を間近で聴く特別な体験となりました。
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大盛況のうちに終了した今回の「ごほうびクラシック ピアノオールスターズ」。嬉しいことに来年の開催も決定しています!次回も特級ゆかりのピアニストたちが第一生命ホールに集うようです。皆様どうぞお楽しみに!
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撮影:越間有紀子
写真提供:認定NPO法人トリトン・アーツ・ネットワーク