飯田有抄のショパコン日記13〜角野さん・牛田さんを全力エール耳で聴く
2次予選2日目です。プレスとして受け取る私のチケットは、だいたいどの時間もステージ右手のバルコニー席の1列目中程。奏者の表情がよく見え、楽器が遠くなく、そしてホール全体の反響と相まって、センターではない割にいいバランスで聴こえます。前に人がいないので、とても落ち着くゾーンです。だんだんと、奏者が選ぶピアノの特性も掴めてきたので、今日のレポはそのあたりもふまえながら書いてみます。昼の部には角野隼斗さん、牛田智大さんが登場いたしました。
角野さんはこの日の2番手。朝の客席もしだいに集中度が高まってくる頃なので、なかなかよい登場順だと思いました。日本全国の、“にわか親戚”(妄想)のみなさん、きっと画面を前にドキドキされていたことでしょう。私もです。
さて、いよいよ登場です。角野さんが選んだピアノはスタインウェイの300。会場で聴く分には、末尾が479のスタインウェイよりも、響きにやや節度があるというか、華やかさ全開!というよりも奏者のやりたいことを堅実に伝えるピアノ、という印象を持ちました。
マズルカ風ロンドはエレガントな音色とともに、舞曲的な推進力をもたせて。客席では配信ほど表情は見えませんが、ピアノとよく対話している角野さんの様子がわかります。
バラード第2番でも楽器の良さを引き出しながら、寂寥感と勇壮さを激しく往復する表現。力強い場面では、ホールが共鳴してバルコニー席の足元まで振動がきました。耳にガツンと強く打ち込まれるような力まかせの強打ではない、激した上でもエネルギーの調整されたフォルテが実にエレガント。「英雄」ポロネーズでは、ひとつひとつのバスの方向性を丁寧に伝えながら、中間部の場面転換も鮮やかに伝わりました!
牛田さんの出番は、30分の休憩後の最初です。少し客席がバタバタしたあとではありますが、2次のステージでもジェントルマンな身のこなしと笑顔で登場した牛田さんのオーラに、すぐにホールは落ち着いて、集中モードに切り替わりました。
牛田さんの選んだピアノはヤマハ。低音がとにかくズーンとよく響き、その芳醇なキャラクターは高音域まで保たれます。その特性を活かし、冒頭のワルツ第5番でブリリアントながら品のある幕開けです。印象深かったのは、ポリフォニックな立体感をつけてゴージャスに聴かせたバラード第4番から、次の舟歌へと、すぐに入ったこと! 一曲ごとに、演奏までかなり時間をかけるコンテスタントが多いなか、「あ、これはあきらかに表現としてつなげた!」というのが感じられました。
バラードからのつながりで浮き彫りにされたのは、舟歌のもつ新たな表現の可能性。伸びやかで優しい雰囲気の演奏が多い中、牛田さんは堅牢さを際立たせたダイナミックな舟歌。
そして「英雄」ポロネーズでは、とにかくよく鳴るヤマハの特性をMAXまで活かし、パワフルに音楽を届けきりました!
写真:©Wojciech Grzedzinski/ Darek Golik (NIFC)