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浜松国際ピアノコンクール優勝、鈴木愛美さんインタビュー

12月10日、先の第12回浜松国際ピアノコンクールで第1位を受賞した鈴木愛美さんがピティナ本部事務局を訪れてくださり、インタビューをさせていただきました。コンクールの各ラウンドで感じていたこと、これからの抱負など、たっぷりとお楽しみください。

-浜松国際ピアノコンクール優勝おめでとうございます。受賞したときのお気持ちはどうでした?

鈴木愛美(以下「S」):ありがとうございます。いろいろな取材で言ってしまいましたが、とにかくびっくりしました。もちろん、とても嬉しかったです。

-表彰式では、まず特別賞の発表があり、室内楽賞や聴衆賞を受賞して二度登壇されました。その後、第6位から順番に呼ばれていきました。あの時の気持ちはどうでしたか?

S:特別賞も驚きで、まったく予想していませんでした。順位のときも、第6位で呼ばれなくて、4位あたりで「いつ呼ばれるんだろう、さすがにそろそろかな~」と座り直して準備していました(笑)。最後、(ヨナス・アウミラーさんと自分の)2人になって、「次こそ」と思って、もうこういう感じで(腰を浮かせながら)準備したんですが、ヨナス(・アウミラーさん)が呼ばれて、「これは、優勝だ・・」と気づきました。もちろん、嬉しい気持ちが来て、でもそれは一瞬でしたね。そのあとすぐ、自分が呼ばれる前には、嬉しさと同時に不安も感じてきていました。もう不安のほうが大きかったくらいです。

-演奏を振り返っていただきます。各ラウンドの手ごたえはいかがでしたか?

S:「手ごたえ」というのはあまりなくて。1次予選では、何か指がうまく動かないような感じがありましたし、2次予選はあまり上手く弾けなかった気がして。3次予選も、最後のほうはちょっと大変でした。でも、終わった後に、聴いてくださった方々から「良かったよ」「大丈夫だよ」と言っていただいて、「そうか」と思っているうちに毎回結果が発表されていました。私はもともと、良い時も「会心の手ごたえがあった!」というタイプではなくて、むしろ本番の中で「今日は新しい発見をしたな」と思うことがある、という感覚です。

-今回のコンクールでは、何か「発見」はありましたか?

S:ありました!モーツァルト(室内楽)が特に本番でもたくさんの発見があって、めっちゃ楽しかったです!弦楽器の先生方は、リハーサルからとても優しく接してくださいました。本番の日のゲネプロで「リハから何か考えてきたことある?」と聞かれて「もうちょっと楽しい感じで弾こうかなと思います!」と答えたら「オッケー。じゃあ私たちもそういう感じで行くね!」と言ってくださって。本番で、何かちょっと違うことを働きかけてみたら、こちらを向いて笑って、音で反応を返してくださったので、私もますます楽しくなってきて、弦の先生方に室内楽の面白さを引き出していただきました。終わった後も「本番が一番良かったね」と温かいお言葉をいただきました。

3次予選、「楽しかった!」という室内楽

-その楽しさが伝わっての室内楽賞だったんですね。他にはいかがでしたか?

S:1次予選のハイドンなどでも、「響きが良いホールで弾くとこんなふうになるのか」と新しい感覚がありました。ハイドンは、表彰の後の懇親会で、審査員のダン・タイ・ソン先生が「今回のコンクールの中での一番のギフトだった。ディテールまでどこを切り取ってもとても美しくて、本当に素晴らしかった」と言ってくださって、嬉しくて、ポカンとしてしまって、「セ、センキュー」としかお返しできませんでした(笑)。とても嬉しかったです。

-それは素敵ですね。アクトシティ浜松の中ホールは、素晴らしく響く会場です。ホールの響きにはすぐに慣れましたか?

S:アクトシティでは、前回の浜松のコンクールにもエントリーしていたので(コロナ禍で開催中止)、出場予定だったコンテスタントのために開いてくださったコンサートで一度弾いたことがありました。あとは、今回、事前の楽器のセレクションのときにも響きを感じることができました。とてもよく響くホールで気持ちが良かったです。

-楽器のセレクションはスムーズに決められたのですか?

S:今回のために用意していただいた3つの楽器(カワイ、スタインウェイ、ヤマハ)は、どれも本当に素晴らしくて、セレクションはとても迷いました。カワイは冒頭から引き付けられるような音が出ましたし、ヤマハはどの曲でもバランスが取れた響きがしました。最後は、今回の自分のプログラムに一番合うかなという感覚と、普段から弾き慣れている楽器にしようと思い、スタインウェイに決めました。
スタインウェイからは調律の方が2人来てくださっていたのですが、毎回本当に素晴らしく調整してくださり、ラウンドを追うごとにさらに良くなっていきました。3次予選では私一人だけがスタインウェイを選んでいたのですが、「弾いてほしい方に弾いてもらえることになって、私たちも嬉しいです」と調律師さんたちにも励ましていただいて、ありがたかったです。

カワイ、スタインウェイ、ヤマハの名器がコンテスタントたちのために用意された

-そしていよいよ本選に残りましたね。本選では、2023年夏のピティナ特級ファイナル以来の梅田俊明先生との共演でした。オケは東京交響楽団のみなさん。本選はいかがでしたか?

S:「ピティナの皆さんに、今回も梅田先生にしっかり教えてもらってきなと言われました」とお伝えしたら、先生は笑ってらっしゃいましたが(笑)、今回も素晴らしくサポートしていただきました。リハーサルから、東京交響楽団の皆さんの素晴らしさにびっくりしつつ、「ありがたいな」と思いながら弾いていました。春に共演させていただいた「ほのカルテット」の岸本(萌乃加、ヴァイオリン)さんや蟹江(慶行、チェロ)さんもオケのメンバーとして乗ってくださっていて、心強かったです。結果発表のときにはもういらっしゃらなかったのですが、お祝いのDMをいただきました。

ラ・フォル・ジュルネ丸の内エリアコンサートで共演した「ほのカルテット」のお二人とも再共演


本番は、もう弱気になったらそれで負けじゃないですか。だから、ただとにかく集中して、この作品のためにできるだけ良い音楽をしようと、それだけを思って頑張りました。そうしたら舞台袖に帰ってきたときに梅田先生が「うん、素晴らしかったよ」と言ってくださって、とても嬉しかったです。最後のカーテンコールで、舞台上で帰るタイミングを逸したときには、先生に「早く行って!早く!」と言われちゃいましたけど(笑)。

梅田俊明さん&東京交響楽団との本選

-ひとつ、余談になってしまいますが、結果発表などのシーンで着ていたアルパカのセーターが話題でした。鈴木さんにも反響はありました?

S:昨日もリサイタルに来てくださった方に言われました!ネットでも売り切れたとか。売上に貢献できましたかね(笑)。アルパカは、原宿にお気に入りのハンバーガー屋さんがあって、その帰りに雨宿りにたまたま立ち寄ったお店で「かわいい!」と思って買いました。本番の衣装の上からでもすっぽり着られて暖かいので、お気に入りなんです。あんなに話題になるなんて思わなかったです(笑)。

アルパカも大喜び(本選進出者発表)

-入賞者の褒賞ツアーでも、各地の演奏会が続々と決まっていますね。多くの会場で、たくさんの方に聞いていただく機会がありそうです。楽しみにしているコンサートはありますか?

S:演奏会のスケジュールや曲目も、だいたい決まってきたところです。色々な場所に行くことができるので、とても楽しみです。コンチェルトは、コンクールでも弾いたベートーヴェンの3番も演奏しますし、モーツァルト、ベートーヴェン、シューマン、ショパンなど他の作品も予定しています(※2024年12月現在。詳細は各地の発表をご覧ください)。ひとつ、とても楽しみにしているのは、来年7月のオーケストラ・アンサンブル金沢さんとの共演です。東京音楽大学の同期で指揮科の友人のプロオケのデビューコンサートで、もともと浜松の優勝者を迎えるということが決まっていたそうなのですが、そこへ私が受賞したのでご一緒できることになって、とても嬉しいです。「打上げで美味しい海鮮を食べよう」などと、今から話しています(笑)。

-それはとても楽しみな本番になりそうですね。では、最後に今後の抱負などお聞かせください。

S:これは、コンクールの前から何も変わっていないのですが、良い音楽を日々追求して、学んで、その時々のステージで表現していけたらいいなと思います。発表直後には不安もありましたが、今は入賞者ツアーの日程や曲目などもだいたい決まってきて、「さあ、がんばろー!! (^^♪」という感じです。良い音楽をお届けできるように、これからも頑張っていきます。

-このたびは本当におめでとうございました!

表彰式にて
鈴木さん、おめでとうございます!

コンクール写真提供:浜松国際ピアノコンクール
取材:ピティナ広報部(2024年12月10日)

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