上肢の骨折特徴と合併症
鎖骨骨折:
特徴:多くの場合非外科的に治療(保存療法)可能だが、重症例では外科的介入が必要。上肢伸展位や、肩峰から落下することによる介達外力で受傷
骨折部位:中央の三分の一が最も一般的。
転移方向:鎖骨内側片は胸鎖乳突筋の引きにより上方へ移動する。
好発年齢:若年層でスポーツ関連、高齢者で転倒により発生することが多い。
合併症:非癒合、異常癒合、腕神経叢麻痺。
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解剖頸骨折:
特徴:血流障害のリスクのためにより重篤。Neer分類が使われる
骨折部位:上腕骨の解剖学的頸部。
転移方向:受傷時の力に依存する。
好発年齢:いわゆる高齢者骨折ではないが、骨粗鬆症による高齢者に多いとされる。
合併症:関節包内骨折のため血流障害が起こり骨壊死。
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外科頸骨折:
特徴:直接外力や手をついた転倒により発生する最も一般的な上腕骨骨折。Neer分類が使われる
骨折部位:上腕骨の外科頸部で発生。
転移方向:前方または後方に傾くことがある。
好発年齢:低エネルギーの転倒による高齢者に好発。
合併症:腋窩神経麻痺、回旋筋群損傷、腋窩動静脈損傷、肩甲上神経麻痺、筋皮神経麻痺、橈骨神経麻痺
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上腕骨骨幹部骨折:
特徴:直達外力による骨折の他に、腕相撲や投球による回旋力でらせん骨折を呈する。
骨折部位:三角筋の付着部より上または下で発生。
転移方向:三角筋付着部より上か下かで変わる。
好発年齢:特に言及なし。
合併症:橈骨神経麻痺→下垂手、小児だと過成長を起こすことがある。
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上腕骨顆上骨折:
特徴:子供に多い外傷性骨折。
骨折部位:上腕骨の遠位部分の顆上部で発生。
転移方向:受傷時の力の方向による。
好発年齢:男児に好発(男女比:2:1)。
合併症:神経および血管損傷、特に尺骨、正中神経麻痺がおこりやすい。橈骨も稀に起こる。コンパートメント症候群。内反肘、フォルクマン拘縮
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上腕骨外側顆骨折:
特徴:成長線のある弱い部位で起こる骨折で、肘外反方向への外力で起こりやすい。
骨折部位:上腕骨の遠位端付近外側の外顆部に生じます。
転移方向:転移方向は言及されていないが、転移はしやすい。
好発年齢:幼少年期。
合併症:外反肘、遅発性尺骨神経麻痺、偽関節
固定肢位:肘屈曲位で固定
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ガレアッツィ骨折(Galeazzi Fracture)
特徴: 橈骨遠位1/3の骨折と、尺骨の脱臼を伴う。
骨折部位: 橈骨の遠位1/3。
転移方向
好発年齢: 任意の年齢で発生するが、特に活動的な成人に多い。
合併症: 神経損傷や血管損傷が起こる可能性がある。
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モンテジア骨折(Monteggia Fracture)
特徴: 尺骨の遠位1/3の骨折と、橈骨頭の前方脱臼を伴う。
骨折部位: 尺骨の遠位1/3。
転移方向:
好発年齢:
合併症: 橈骨神経の後骨間神経麻痺、機能的アウトカムの悪さ、再手術の高率に関連している。
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橈骨遠位端骨折
橈骨遠位端骨折はほとんどがコーレス骨折ですが、他も名前だけは国試に出題されるので、覚えておきましょう。実地問題(3点問題)といて出題されることもあり、受傷機転だけを見て3点獲得できるチャンス問題です。
コーレス骨折(Colles' Fracture)
特徴: 高齢者に多い骨折で転倒時に掌側をつき剪断力が加わって発生
骨折部位: 橈骨遠位端
転移方向:橈骨遠位骨片の背側偏位 フォーク状変形
好発年齢: 高齢者によく見られる
合併症:正中神経損傷、手根管症候群、尺骨突き上げ症候群、長母指伸筋腱断裂
固定肢位:掌屈尺屈位(コットンローダー肢位)
スミス骨折(Smith's Fracture)
特徴:高齢者に多い骨折で転倒時に手の背側をつき剪断力が加わって発生
骨折部位: 橈骨遠位端。
転移方向:橈骨遠位端の掌側変位を特徴とする
好発年齢: 特定の年齢層に関するデータは見つかりませんでしたが、一般にコールズ骨折よりもまれです。
合併症: 不安定な骨折であり、しばしば手術的介入を必要とする。
固定肢位:手関節背屈位
バートン骨折(Barton's Fracture)
特徴: 橈骨遠位端の関節内骨折で、橈骨遠位端の関節面の一部が削り取られる。
骨折部位: 橈骨遠位端。
好発年齢: 若い男性労働者やオートバイ乗りに多い。
合併症:掌側転移により正中神経が圧迫されてしびれなどを生じるケースもある
リバースバートン骨折(Reverse Barton's Fracture)
特徴: 橈骨遠位端の関節内骨折で、掌側変位を伴う。
骨折部位: 橈骨遠位端。
好発年齢: 成人で頻繁に発生。
合併症:
ショーファー骨折(Chauffeur's Fracture)
特徴: 橈骨の遠位端の内側隆起部に発生する関節内斜骨折。交通事故などの高エネルギー外傷時
ハッチンソン骨折、バックファイア骨折ともいわれる
骨折部位: 橈骨遠位端の内側隆起部(radial styloid process)。
好発年齢: 年齢層に関するデータは見つかりませんでした。
合併症: TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷
手部・手指の骨折
舟状骨骨折
特徴・部位: 手首の舟状骨に発生し、手の使い過ぎや転倒(手掌面の接地時に過度の背屈、橈屈強制)によって生じることが多い。発見が遅れると治療が困難になることがある。二方向の画像診断では見逃されることが多く、5方向撮影や、手関節の肢位を変更した撮影が必要。手根骨の中で最も発生する(70-80%)
転移方向: 特に転移方向の記述は見つかりませんでしたが、非変位性の場合と変位性の場合がある。
好発年齢: 男性の若年層に多いとされる。
合併症: 表面が80%を関節軟骨に覆われており、結構不良になりやすい。そのため舟状骨非連合(骨折が治らない状態)や偽関節の形成がされやすい。母指CM関節の外転制限
臨床症状:解剖学的嗅ぎタバコ窩(アナトミカルスナフボックス)での圧痛、舟状骨シフトテストや母指軸圧負荷で痛みが惹起する
Bennett骨折
特徴: 母指CM関節の脱臼骨折で、バイクや自転車の転倒、スキーでの転倒時に発生することが多い。
部位: 第1中手骨の基底部に発生する。
転移方向: 中手骨基底部関節内の脱臼骨折で、尺側基底部に骨片を残し、長母指外転筋の牽引で遠位骨片が橈側近位へ向けて転位する。
好発年齢: あらゆる年齢層に発生し、男性に多いが女性にも発生する。
合併症: 手術が必要な場合が多く、不安定なため保存療法では十分な治療にならないことがある
末節骨背側骨折
特徴: 指先または手の甲の側からの外力により、指の伸筋機構が損傷し、指の第一関節が急に強く折れ曲がってしまう。バレーボール、バスケットボール、野球などの球技で発生しやすい。マレットフィンガーになる。
部位: 指の末節骨(DIP関節)に発生。
転移方向: 特に転移方向の記述は見つかりませんでしたが、腱の損傷や伸筋腱の骨折、掌側亜脱臼を伴うことがある。
好発年齢: 球技をする人に多発し、特に中指と薬指に多い。
合併症: 早期治療を行わないと「スワンネック変形」をきたすことがあり、回復が困難になる
有鈎骨鈎骨折
特徴:バットなど繰り返すストレスにより受傷するスポーツ障害である
合併症:陳旧性では尺骨神経麻痺を合併することがある
肘頭骨折
投球による疲労骨折(野球肘)
その他
肘関節脱臼でもフォルクマン拘縮が生じる
肩関節脱臼では腋窩神経麻痺