閉塞性換気障害の各論【PTOT国試対策】
閉塞性換気障害の種類
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
びまん性汎細気管支炎
気管支喘息
1.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease, COPD)は、主に肺の気道に影響を与える進行性の呼吸器系疾患です。COPDの主な特徴は、呼吸に必要な空気の流れを妨げる気道の狭窄や閉塞です。
COPDの2つの主要な形態
慢性気管支炎:気管支の慢性的な炎症と粘液の過剰産生が特徴。
肺気腫:肺胞の壁の破壊による肺の損傷が特徴。
原因とリスクファクター
喫煙:COPDの最も一般的な原因。喫煙者は非喫煙者に比べてCOPDを発症するリスクが明らかに高い("Chronic obstructive pulmonary disease in over 16s: diagnosis and management", NICE Guideline, 2018)。
職業的曝露と環境因子:長期間の化学物質や粉塵への曝露はCOPDのリスクを高める("Occupational exposures are associated with worse morbidity in patients with chronic obstructive pulmonary disease", American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, 2015)。
遺伝的要因:アルファ1-アンチトリプシン欠乏症は若年者のCOPDリスクを高める("Alpha-1 antitrypsin deficiency", Lancet, 2017)。
COPDの症状
基本的に両肺に発症
呼気困難:息が吐きにくい
喀痰
咳嗽
動悸や労作性呼吸困難
呼吸運動のエネルギー効率低下による体重減少
重症になるとチアノーゼやばち指が出現する
中枢気道の狭窄を示すぐーぐーといういびき様音。乾性ラ音、連続性ラ音
Global strategy for the diagnosis, management, and prevention of chronic obstructive pulmonary disease", GOLD, 2020
COPD検査所見
1. 肺機能テスト
FEV1/FVC比:
COPDの診断において最も重要な検査。FEV1(一秒量:1秒間に吐き出せる最大の空気量)とFVC(肺活量:最大の呼吸努力で吐き出せる空気の総量)の比率を測定。
COPDでは、FEV1/FVC比が0.7未満であることが多い("Global strategy for the diagnosis, management, and prevention of chronic obstructive pulmonary disease", GOLD, 2020)。
1秒率:70%未満
残気量増大
ピークフローの低下
気道抵抗の上昇
クロージングボリュームの増加
2. 胸部X線とCTスキャン
胸部X線:
肺の過膨張、気管支壁の肥厚、肺野の減少、肺野透過性亢進、たる状胸郭、滴状心、横隔膜の平坦化が特徴です
CTスキャン:
肺気腫や気管支拡張症の診断に有用であり、より詳細な肺の構造異常を評価するのに役立ちます("Computed tomographic imaging of the airways: relationship to structure and function", European Respiratory Journal, 2005)。
肺気腫では破れた蜘蛛の巣状になります
3. 動脈血ガス分析
血中酸素飽和度と二酸化炭素レベル:
動脈血ガス分析は、COPD患者における酸素飽和度と二酸化炭素レベルを評価します。
進行したCOPDでは、低酸素血症や高炭酸ガス血症が見られることがあります("Respiratory failure", Merck Manual Professional Version, 2020)。
4. 呼吸機能測定
ピークフローメーター:
日常的なモニタリングに使用され、ピークフロー(最大呼気流速)の変動を評価します。
COPD患者では、ピークフローが低下する傾向があり、日々の変動が大きいことが特徴です("Peak expiratory flow rate monitoring in the management of chronic obstructive pulmonary disease", American Family Physician, 2007)
治療と管理
禁煙:COPDの進行を遅らせる最も効果的な方法("Smoking cessation and chronic obstructive pulmonary disease", American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, 2015)。
薬物療法:長期気管支拡張剤やステロイド吸入薬が症状の管理に効果的("Global strategy for the diagnosis, management, and prevention of chronic obstructive pulmonary disease", GOLD, 2020)。
肺リハビリテーション:運動耐性の向上と症状の軽減に貢献("Pulmonary rehabilitation for chronic obstructive pulmonary disease", Cochrane Database of Systematic Reviews, 2015)。
口すぼめ呼吸やゆっくりとした呼気の練習
酸素療法:重度のCOPDにおいて生存率の向上に寄与("Long-term oxygen therapy for patients with chronic obstructive pulmonary disease (COPD): An evidence-based analysis", Ontario Health Technology Assessment Series, 2012)。
びまん性汎細気管支炎
細気管支領域にびまん性(広範囲)に炎症をきたす
原因は不明で、慢性的な咳、多量の膿性、粘性の痰が症状としてでる
慢性副鼻腔炎を含む上気道炎を合併することが多い
治療
マクロライド抗生物質:エリスロマイシンやクラリスロマイシンなどのマクロライド抗生物質が有効とされています。これらは抗炎症効果を有し、症状の改善と肺機能の安定化に寄与します("Efficacy of long-term administration of clarithromycin on diffuse panbronchiolitis", Respiration, 1994)。
気管支喘息
喘息の特徴
症状:周期的な呼吸困難、胸の圧迫感、咳、ヒューヒューという呼吸音。これらの症状は夜間や早朝に悪化することがあります("Asthma", Lancet, 2020)。日本だと秋に増悪する傾向があります。
気道の炎症:気道の過敏性と炎症が、気道の狭窄と閉塞を引き起こします("Global Strategy for Asthma Management and Prevention", Global Initiative for Asthma, 2020)。
悪化すると肺気腫に移行することがあります。
原因とトリガー
遺伝的要因:家族歴がある場合、喘息のリスクが高まります。
環境因子:アレルゲン(花粉、ダニ、カビ、動物のフケ)、タバコの煙、大気汚染、冷たい空気、運動などが喘息発作を引き起こすトリガーとなります("Global Strategy for Asthma Management and Prevention", Global Initiative for Asthma, 2020)。
診断
肺機能テスト:肺活量(FVC)や一秒量(FEV1)を測定し、気道の可逆性を評価します。
アレルゲンテスト:特定のアレルゲンに対する反応を調べるスキンテストや血液検査が行われることがあります("Diagnosis and management of asthma in adults: A review", JAMA, 2017)。
気道所見:粘液分泌・粘膜の浮腫・平滑筋収縮
IgE上昇・好酸球上昇
気道過敏
末梢気道狭窄を示すヒューヒューという笛様音、乾性ラ音、連続性ラ音
治療
短期作用型気管支拡張剤(SABA):喘息発作の即時の緩和に使用されます。
長期管理薬:吸入ステロイドや長期作用型気管支拡張剤(LABA)が、慢性的な炎症の管理と発作の予防に使用されます("Global Strategy for Asthma Management and Prevention", Global Initiative for Asthma, 2020)。
管理
環境管理:トリガーとなる要因を避けることが重要です。
教育と自己管理:喘息の症状や薬物療法の適切な使用についての教育が、症状管理に不可欠です("Self-management education and regular practitioner review for adults with asthma", Cochrane Database of Systematic Reviews, 2020)。
喘息は治療可能な疾患であり、適切な治療計画と環境管理によって多くの患者が正常な生活を送ることができます。定期的な医療フォローアップと自己管理の実践が重要です