不愉快な君に縋りたい
死神が大鎌を携えてやって来た。殺すつもりはないらしい。ただ隣にいるだけだ、とそう言った。
死神は本当に、側にいるだけだった。というよりむしろ、私を励ましてくれたり、話し相手になってくれたりした。心地よい声で、欲しい言葉をかけてくれる。ただ、鎌を引き摺る音だけが不愉快だった。
或る日、死神があまり喋らなくなった。すると、鎌を引き摺る音が余計に不愉快になった。もっと言えば、恐ろしくなった。しかし、私には何が恐ろしいか判断出来なかった。
殺されることが恐ろしいのか、死神を嫌いになってしまうことが恐ろしいのか。私には判断出来なかった。