「腱板断裂と肩関節挙上について」
1.英文紹介
2.研究目的
✓症候性腱板断裂 vs 無症候性腱板断裂 vs 健常者の3群における肩甲骨の動きと肩甲骨周囲筋の筋活動の違いならびに筋弾性率を比較することを目的としている。
3.対象と方法
✓腱板断裂患者23人と健常者9人が参加し、痛みの程度によって症候性群(13人)と無症候性群(10人)に分けた。肩甲骨上方回旋は、デジタル傾斜計で測定し、肩甲骨周囲筋(僧帽筋上部、肩甲挙筋、菱形筋)の弾性は、超音波を用いて組織弾性を評価した。それぞれの評価項目は、肩甲骨面で自動挙上を0°、60°、90°、120°で測定を行った。
4.結果
✓肩甲骨上方回旋は、有症候性群が無症候性群よりも90°挙上で有意に小さかった(9.4° ± 5.6° vs 15.7° ± 6.0°、P = .022)。肩甲挙筋の活動は、有症候性群が無症候性群や健常者よりも90°挙上で有意に高かった(P = .013 と P = .005)。上部僧帽筋の活動は、有症候性群が健常者よりも120°挙上で有意に高かった(P = .015)。
✓有症候性の腱板断裂患者は、無症候性の腱板断裂患者と比べて、90°挙上で肩甲骨上方回旋が小さく、肩甲挙筋の活動が高かった。これらの変化は、腱板断裂患者の痛みの発生に関係している可能性がある。
5.興味深い点
✓今回の結果からは、特に挙上90°で無症候性よりも有症候性の患者の方が肩甲挙筋の筋活動が高く、肩甲骨上方回旋が少ないということであるが、この結果は、「結果」なのか「原因」なのかは定かではない。つまり、それが原因であれば、そこを治療のターゲット(肩甲挙筋の筋活動↑にて肩甲骨上方回旋を阻害)になるのかもしれないが、結果であれば、肩甲上腕関節(以下:GH)の求心位(関節窩と骨頭の関係:骨頭の上方化)が破綻し、担保されていないため、肩甲骨上方回旋ではなく、肩甲帯を挙上し、肩甲挙筋の弾性率が高くなってしまっているのかもしれない。いずれにしてもどうの介入が、患者の反応が良いのか治療前後で探りながら治療介入していくことが大切であると考えられる