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成長期に気をつけたい!「骨端線」をいたわって骨の成長を守ろう!
おはようございます!こんにちは!こんばんは!「セラピストで副院長の豆知識」へ、ようこそ!
皆さんはタイトルにある「骨端線」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?成長期の骨の成長にとても大事な部分になります。そんな“骨端線に負荷をかけすぎたら”、“骨折してしまったら”どうなるリスクがあるのか?
今回はそんな「骨端線」周辺で発生するトラブル、まとめたいと思います。
1.骨端線ってなに?
人の体が成長していく時に「骨が伸びる」というのはご存知だと思います。この時に重要な役割を担っているのが骨端線になります。上腕骨(肩から肘にかけての骨)の骨端線は図の位置にあります。その名の通り、“骨”の“端”にある“線”で骨端線です。こどもの骨のレントゲンを撮ると骨端線の場所は、はっきりと写らず隙間があるように見えますが、そこには成長軟骨板(成長板)というものが存在しています。この軟骨が成長するのに合わせて骨に置き換わっていくため骨が長くなります。そして、大人になるにつれてこの成長軟骨板が完全に骨に置き換わると、骨端線の隙間はなくなります。つまり骨端線の閉鎖により、もう骨は伸びないという指標になります。
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何かの怪我をして整形外科を受診した時にはレントゲンを撮ることがあると思います。その時のレントゲンの骨端線の部分をチラッと見ておくと、まだ背が伸びる可能性があるかというのが予測できます。服のサイズ選びなど何かと大変なこともあると思いますので。
💡豆知識💡〜骨端線は手術をするか判断するための指標にもなる〜
医師の方針や、今後の報告次第で変わってくる可能性はありますが、前十字靭帯損傷による再建術では、骨に穴を開けてそこに新しい靭帯を通して止めるため、骨端線が閉鎖する前に手術をすると、①骨端線を傷つける可能性がある。②手術後に身長が伸びすぎてしまうと靭帯が過度に引っ張られる可能性がある。ということから骨端線が閉じてから手術をすることがあります。また寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)に対して将来の変形を予防する寛骨臼回転骨切り術においても、臼蓋を切ってずらすため、骨盤の成長が終了したと確認して行われます。このように、怪我からすぐ手術ではなく、その方の成長にあわせたタイミングで手術を行うための指標にもなっています。
2.骨端に発生するトラブル
骨端線が成長に必要な場所ということは理解していただけたかと思います。では、その骨端線で発生するトラブルには何があるでしょうか。それについて解説していきます。
①骨端症
骨端線の部分への負荷が大きくなりすぎたりすることによる損傷や血流障害から骨端線の部分で痛みが発生することがあります。激しいスポーツではもちろん負荷はかかりますが、骨の成長度や、動きの中での身体の使い方、体重、筋力、柔軟性などさまざま要因はありますので、そこまで運動しているつもりはなくても発症することがあります。また骨端症の種類によっては、血流障害の可能性とはわかっていても、なぜ発症するのかのメカニズムがわからないものも存在します。骨端症は発生する骨(部位)によって名称もそれぞれあります。一部名称と部位をご紹介します。
・肩(上腕骨近位):リトルリーガーズショルダー
・股(大腿骨近位):ペルテス病
・膝(脛骨近位):オスグッド・シュラッター病
・足(踵骨後方):シーバー(セーバー)病
・足部(舟状骨):第1ケーラー病
・足部(中足骨):フライバーグ病(第2ケーラー病)
この中のリトルリーガーズショルダー、オスグッド、シーバー病、フライバーグ病は、運動中や運動後などに、患部の炎症所見がでることがあります。痛みや腫れ、熱感があり、関節の動きに合わせて痛みがでるため可動域の制限が認められることがあります。基本的には使い過ぎ(オーバーユース)を指摘されることが多いので、しっかり安静度を高めて患部に無理させないこともありますが、使い方によって負荷がかかりやすくなっている場合(マルユース)には、他の関節と合わせて使い方の見直しが必要です。
豆知識💡〜骨が伸びる時こそストレッチをしっかりと〜
1年で10cmほど背が伸びることがありますよね。それが、2、3年続いたり、、、そのような時には、骨が伸びた分、相対的に筋肉の長さが短くなってしまうわけです。筋肉の長さが身体の状態に適応する間もなく運動は続けられるので、長さが足りない筋肉がより強い力で繋がっている骨を引っ張ってしまいます。運動の前後にはしっかりと準備運動とケアを行うのはもちろんですが、運動時以外にもストレッチをしっかり行い柔軟性を維持拡大していましょう。
②骨端線損傷
骨端線損傷は、広くいえば骨端線の損傷が伴うものをすべて含む言い方にはなりますが、たとえば外傷による骨折などが該当します。転倒した時に肘をぶつけ、その際に骨端線が離れてしまったり、骨端線を跨ぐように骨折線が入ってしまうことがあります。骨端線に傷が入ってしまうと以降の骨の成長が正常に行われなくなるリスクがあります。例えば小児に多い肘周辺の骨折(上腕骨顆上骨折、通顆骨折、外顆骨折など)が発生すると、その時はしっかり整復されて時間経過で骨が治っても、成長していく中で肘の向きが正常範囲以上に、外になる外反肘や、内向きになる内反肘、(その他、細かくは捻れなど)の変形をきたすことがあります。将来的に機能や見た目などに支障をきたすようであれば、矯正骨切り術(骨を切って向きを変える手術)も選択されます。
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骨折は不意に訪れるので、予防することが難しいですが、もし環境的要因が大きい内容であれば、怪我のリスクを減らす環境づくりなどが、今後の怪我予防に繋げられるでしょう。
3.最後に
骨端線という言葉は医療者の方は聞いたことがあると思いますが、一般の方には馴染みがないかもしれないです。しかし、その部分のトラブルは自分自身が経験したり、お子さんが経験していたりなど身近に潜んでいることも多い内容です。早期に気づき対処することで、結果的に早い復帰や、将来の健康な成長につながります。
細かい病態や治療方針などについては医療機関に確認と指示に従ってくださいね。
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