「輪転の劇場」を32公演で休演する理由
ようやく話題になりつつある作品を、これからというタイミングで休演させてしまうSWAN DIVEのpsykaです。こんにちわ。
まあ、当たり前ですが店舗公演用の作品で、32公演で休演はあきらかに早いです。一般的に他の作品と比べてもこんなタイミングで告知して幕を下げる作品も珍しいかと思います。
なんかもったいぶってるとか言われたり、貸切公演は受け付ければいいじゃないですかと言われたりするのですが、この256人ルール(1つの作品は256人体験したら一区切りをつける)には、一応自分なりのルールがあります。別に説明する必要もないと言われればそれまでですが、割りと聞かれるのでここにまとめておきます。
あくまでも「休演」である
まず、誤解がないように申し伝えなければいけないのは、終了ではなく休演であるということです。期間は未定ですが再演の計画があります。
マーダーミステリーはコロナ渦による影響もあり、制作者が増えたことやプレイヤーの次の作品を求める熱などもあり、多くの作品が輩出されるようになったということでどんどん新しいものや新しい試みを持った作品がでてきました。この先も様々な人が面白いギミックやプロット、システムを生み出していくと思っています。
それらの潮流により、1年以上前に作られた作品は風化したり劣化していくのかという視点で考えると、良作は時を経っても変わらない評価を得られると考えています。実際に、過去の名作を紐解くと、作風やシステムには一定の時代の流れを感じますが、それが作品そのものの評価が下がる要因にはならないという感想を持っています。「輪転の劇場」は、その内容やゲーム全体にしかけられた様々な「体感するエンターテイメント」としてのギミックが1年経った今でも通用「してしまう」という現在の作品群を勘案してもおそらく半年、1年後にプレイしていただいても充分に通用する作品に仕上がってると自負していますので、充分な準備をもって再演したいと考えています。
全員に"可能な限り"同じ【体験】を
これは他の作者やレーベルに対して思っていることや否定していることではない事をご理解いただいた上で読んでいただきたいのですが、私は1回目にプレイした人と100回目にプレイした人には同じ体験をしてもらいたいと考えています。
時々、プレイヤーの方と作品の話をしているときに「この作品はあそこがどうこう」「え?私のときはそこはこうだったよ」という事を普通にお伺いします。私は、この会話があまり好きじゃありません。
全てのプレイヤーには、可能な範囲で同じ体験を有してもらい、その体験をどこかのテーブルで共有してもらいたいと考えています。もちろんシステム上の不備は直さざるを得ませんが、大きなギミックなどは何も直したくないと考えています。
SWAN DIVEはテストプレイをほとんどしないのですが、これはテストプレイでプレイした人が多ければ、それは完成した作品を体験してもらう機会を奪ってしまっているとも考えられるからです。可能であれば自分の作品をプレイする人すべてに完成版をプレイしてもらいたいと考えてしまうので、テストプレイは限界まで減らしますし、減らすためにテスト前のシミュレーションは他の方と比べようもないですが、かなり綿密に実施しています。
また、作品を書いて1年もたつと、自分自身の能力もあがっており、この部分をこうしたほうがより面白くなる。ここをこうするとスムーズになるなどの修正したい部分もでてくるのは道理です。
その観点から作品の提供はどこかに区切りをつけるべきであると考えています。それが256人という体験人数になっています。数字には根拠がありませんが、もともとは1作品(8名)を週2公演(16名)でおよそ4ヶ月(16週)で達成するペースでした。他のイベントも予定していたこともあるのと、4ヶ月はSWAN DIVEが提供する作品ペースを4ヶ月に1作品を想定していたので、締切を意味する上でこの数値になっていました。
結果として、駒込ガレージはマーダーミステリーで埋まり、SWAN DIVEは12ヶ月で5作品(輪転の劇場、見栄と欺瞞、嘘と友情、Call of Diamond、セカイハオワリデデキテイル)とかなりのハイペースで提供することができました。今後も、全作品で256人ルールは採用し、修正箇所や補修作業を1回挟み、以降は公演回数上限を開放する方式を取る予定です。もちろん例外も登場すると思っています。
商業的な観点から
回数を制限することは商業的な観点からももともと想定していました。基本的にプロモーションの観点からも「輪転の劇場」は駒込ガレージの認知度向上や、業界に対しての新規参入者として、どうやってSWAN DIVEやpsykaを知ってもらうかという事を視点に作られています。体験していただいた方はご存知ですが、この作品は駒込ガレージである必要があり、psykaがゲームマスターでなければ成立しないように作られています。
実際に、この作品のマスタリングは従来の「進行役」としてのゲームマスターの立ち位置をこなしているようにみえて、実際にはまったく違うことを行っています。そのため体験したプレイヤーには実際に行っていることの軸足を提示していないため、進行役という視点で見ているプレイヤーはその誤差を「演出がすごい」という評価をしています。(実際に、その評価は間違っていません。psykaやSWAN DIVEの提示している演出は、一般的な装飾的演出ではなく、違う立脚点で演出を構成しているので、その差分を端的に表すとするなら「すごい」は適した表現のひとつだと思います)
同時期に店舗が増えたことも、またこれからも店舗が増えていくことを考えた時に、早い段階で店舗の違い、優位性、特色などをアピールしておくことが以降の自分の動きには必要であったと考えていたなかで、「輪転の劇場」が生まれたのは当然の結果でした。
一方、すでに当時の他店舗の状況やビジネススキームを考えた時に、「シナリオに対するプレイヤーは公演を行うごとに減る」という構造的に抱えている課題と向き合う必要性があると思っていました。これは新規プレイヤーが増えていくことで分母が増え改善するように見えますが、減っていることは事実です。マーケットの拡大速度と、自社コンテンツの認知度のバランスが取れなければ、いづれ公演は埋まらなくなります。
募集している公演が埋まらないのは、見かたにもよりますが「あんまりおもしろくない作品なんだな」「もうみんなプレイしちゃったんだな」というネガティブな印象を与えるのではないかと考えています。そこで、意図的に公演回数をコントロールし、募集に対して可能な限り埋まりやすく、かつプレイできていない人の「やりたい」という声がSNS上にあがるような仕掛けをできないかと考えた結果「公演回数を制限する」という手法を選択しました。
そして物語は動き出す
様々な理由が折り重なり、輪転の劇場は1月25日のテストプレイから12月21日の第33回公演で千秋楽を迎え、休演となりました。
瀬戸内海に浮かぶ酒匂島(さこうとう)にオープンするSAKO MAGIC & RESORTで起きた殺人事件を題材にした輪転の劇場は、その同じ舞台で再び事件が起きます。その状況は、あの悲劇とまったく同じ状況で…
※キービジュアルは空想プランニング版なので変更の可能性あり
輪転の劇場2-魔法使いの目撃者-は、輪転の劇場の続編です。時間設定がまだ調整中ですが十数年後の酒匂島で再び事件が起きます。第一作目で登場したキャラクターも数名登場する予定です。
もともと同設定で時間経過ものは書きたかったのですが、マーダーミステリーというシステムの都合上、これが地味に難しいのがやっかいでして、前作をプレイしたことがある人じゃないと出来ないようにするか、どちらからでもプレイできるようにするのかを未だに悩んでいます。どちらでもプレイできるようにすると前作登場者が前作で犯人じゃないことバレちゃうんですよね。
輪転の劇場2は今夏に登場する予定です。輪転の劇場はこのときに再演いたします。時間をおくことで、新規のプレイヤーさんも増えますし、過去に経験したプレイヤーさんからの推しコメントで新規の方にも広がってくれれば、再びプレイヤーへ知ってもらい、埋まりやすい公演の流れができると考えております。再演の際は猛プッシュをお願いしたいと思っております
「輪転の劇場」未経験の皆様、そういう流れを考えておりますので2021年夏公開予定の「輪転の劇場2」と共に、再演がかかった際にはぜひ体験していただければと思います。極々普通のマーダーミステリーですが、おそらく皆さんの中にある小さな小骨がほんの少しだけ軽くなるような、そんな不思議な作品を楽しんでいただけるのではないかと思っています。
サポート心よりお待ちしています。頂いたサポートは駒込ガレージの維持や新しいコンポーネントの研究費用になります。