性格を見たいなら性格検査を使おう
前回の最後で知能検査で性格がわかるというのはナンセンスだと述べました。今回はそこから掘り下げます(毎週水曜日とか言って一日早くなっている)。
知能検査は知能(頭で考える能力)を測定するもの
めちゃくちゃ当たり前のことですが、知能検査は知能を測るものです。知能とは思考力、発想力、創造力といったさまざまな知的活動を含む能力の総称であり、そのベースは考える力です。代表的な知能検査であるウェクスラーが測定するものはすべて頭で考える力であり、例えばWAIS-IVの15の検査の中に(当たり前ですが)感情や行動を問うような検査は含まれていません。
知能検査や内田クレペリン検査で性格はわかるのか?
ウェクスラーで性格がわかるという人はさすがにほとんどいないわけですが、内田クレペリン検査で性格がわかるという人はいます。というか性格を測定するための検査として公式サイトにも明記されています。ところがどう見たって内田クレペリン検査が測定しているものは知能検査に含まれる考える力に基づく能力(とその減衰)であり、内田クレペリン検査で性格がわかるならウェクスラーでも性格がわかるはずです。
私に言わせれば、内田クレペリン検査は知能と性格傾向に無理やり相関を見出して、性格検査のように宣伝しているに過ぎません。ウェクスラーでも同じことをすれば、すなわち知能と性格傾向の相関を見れば性格も測定できるように見えるでしょう。けれど誰もウェクスラーでそれをしません。それはウェクスラーには確固たる知能検査としての役割があるからです。
私はよく性格測定を「象の性別判定」に置き換えて例えます。ウェクスラーは多くの検査で入念にチェックを行います。象で例えると血液検査を行い、体長を測定し、牙の有無を確認するようなものです。そのうえでオスかメスかを判定すると正しい結果が出る確率も十分高いですが、時には矛盾した結果が出ます。なぜならオスの方が体長は大きいですが子どもだったら小さいわけですし、アジアゾウなら牙はオスだけですがアフリカゾウならメスにも牙はあるからです。何より象の性別判定だけのためにコストも手間もかかりすぎです。
一方内田クレペリン検査を象で例えると、体長測定あるいは牙の有無の一項目だけでオスかメスかを判定するようなものです。そりゃ合うときもあるでしょうが、間違えることも多分にあるわけです。一面的で不正確なもの言わざるを得ません。
改めて、性格を見たいなら性格検査を使おう
当たり前すぎるタイトルですが、性格を測定したいなら性格検査を使いましょう。性格検査は象で例えると、象の言葉で直接話しかけて尋ねるようなものです。一番シンプルで一番手間がかかりません。
質問紙法を用いたら「あなたはオスですか?メスですか?」と尋ねるようなものです。投影法を用いたら「群れから出て行動したこと、またはその予定はありますか?」と尋ねるようなものです。
もちろん質問紙法にも弱点があります。それは次回以降に述べますが、その弱点を最も克服したスキのない心理検査がMMPI-3であることは一言添えておきます。
今回のまとめ
知能検査も内田クレペリン検査も知能を測定するもの
ウェクスラーで性格を見るのは非効率的、内田クレペリン検査で性格を見るのは不正確
性格検査で性格を見るのが(当たり前だが)効率的で正確
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