ロールシャッハテスト(概要・片口法)/性格検査・投影法 (診療報酬450点)
1.概要
言わずと知れた有名検査です。
ロールシャッハ(Rorschach, H.)によって開発された検査で、インクを落として作った左右対称の10枚の図版を提示し、それが何に見えるか、どのように見えるかを受検者に自由に反応してもらいます。
一般的なイメージは無彩色の図版だと思いますが、10枚の図版には2色のものと多彩色のものも含まれます。
ロールシャッハ最大の弱点なのですが、実は著作権が切れていて誰でも自由にインターネット上で見られてしまうのです。
ロールシャッハ・テストは、多くの心理学者によって様々な実施法へと発展していきました。
それらの知見を統合したのがエクスナー(Exner)による方式で、「包括システム」として広く活用されています。
(学会名にもなっていますね:包括システムによる日本ロールシャッハ学会)
日本では、Klopfer法をベースにした片口安史による片口法と包括システムが普及しています。
この2つの概要は把握しておきましょう。
2.各図版の特徴
1枚目:最初の図版であるため、不安と当惑を示しやすいです。
2枚目:初めて色が出現するため、色彩ショックを起こしやすいです。
3枚目:動いている人間という反応が出やすいです。
4枚目:父親、権威、威圧感、重苦しさを感じさせ、父親カードと言われています。
5枚目:最も「何か」に見えやすく反応がしやすいカードです。
6枚目:形状的な理由で性ショックが見られやすいです。
7枚目:抱きかかえるようなイメージが浮かび、女性を想起させることが多く、母親カードと言われています。
8枚目:最初の多彩色であるため、色彩ショックを起こしやすいです。
9枚目:漠然としているため、全体を捉えた反応が示されにくく、拒否されることも多いです。
10枚目:全体を捉えた反応が示されにくいが、部分部分への反応は多くみられます。
3.片口法-実施法
実施は、受検者に図版が何に見えるかを自由に話してもらう自由反応段階と、その後に検査者が反応について(誘導的にならないように)質問していく質問段階の順に行います。
検査者の熟練度が向上したうえでどうしても必要と判断される場合は、質問段階の後に、誘導的、強制的な質問を行い詳細な情報を得る限界吟味段階を行うこともあります。
(つまり普通の検査者はやるなよ!という京言葉ですね。)
検査者は、自由反応段階と質問段階における受検者の発言を逐語的に記録します。
また反応拒否と反応時間についても記録します。
反応拒否とは「ある図版に対して何も解答しないこと」です。反応時間とは「図版への反応がでるまでの時間」です。
4.片口法-スコアリング法
記録した反応をスコアリングし、分類表に記載して定量化します。
スコアリングする要素は次の5つです。
・反応領域
図版のどこを見て反応したのかをスコアリングします。
W(全体反応)、D(普通部分反応)、Dd(特殊部分反応)、S(空白反応)のスコアリングを行います。
・反応決定因
図版のどんな特徴を見て反応したのかをスコアリングします。
F(形態因子)、M/FM/m(運動因子)、C/C'(色彩因子)、c/K(陰影因子)などのスコアリングを行います。
・反応内容
図版に何を見たのかをスコアリングします。一般の方のロールシャッハのイメージはこれですね。
H/Hd(人間反応)、A(動物反応)、Bl(血液)、Fd(食物)、Art(芸術)などのスコアリングを行います。
・形態水準
実際の図版の形態をどれほど適切に捉えているかをスコアリングします。
「+」「±」「∓」「-」の4段階で評価します。
・平凡反応(P反応)
一般的によく見られやすい反応かどうかのスコアリングです。
マニュアルに記載された平凡反応と一致する場合はPを記録します。P-FスタディのGCRと似た考え方です。
解釈は、主に形式分析(サイン・アプローチ)と内容分析(象徴解釈)によって行います。
また、1枚目から順に反応のつながり方を力動的に解釈する継起分析という方法も行われます。
さらなる片口法の詳細については、マニュアル等を紐解いてください。
同じく重要な包括システムについては別ページを設けて紹介します。
5.製品
包括システムのページにまとめて掲載します。
そして結構絶版が多かったりします。
感想
性格検査ではMMPI-3と並び、投影法ならロールシャッハと信頼している検査です。
ただ心理検査の中でも最も侵襲性が高く、最悪の場合は統合失調症の引き金を引く作用をしてしまう(ロールシャッハ・シュープ)こともあります。
この点と幅広い評価が一気にできる点から、最近は🥇MMPI-3が1位、🥈ロールシャッハが2位です。
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