Twitter での6年間 #5
(Twitter での6年間 4 からの続き)
2013年の春ごろだっただろうか。上のほうの人が、A/B テストをプロダクト開発に活用することを推奨し始めた。A/B テストでプロダクトの方向性を決めていくというのだ。これにつられ、この頃の社内では A/B テスト万能論のような空気さえただよっていた。普通に考えて、A/B テストを数週間走らせてデータをとっても、それが長期的な成功につながるか判断できるはずがない。短期的に数字が上がるからといってユーザーの嫌がることを続けていれば、いつかユーザーの忍耐の限界に達してしまうかも知れない。そのユーザーの堪忍袋の状態をどうやって計測できるというのか、など疑問は尽きなかった。
そのころ Growth という大きな部署ができて、従来国際化を担当していた i18n エンジニアリングチームもその下に組み込まれることになった。Growth チームの強い権限のもと、さまざまな A/B テストが行われ、アクティブユーザー数を上向きに持っていくという目的に人的リソースが集中投入されていった。それに合わせ、Growth の人たちからいろいろな相談や手助けの依頼があったときには、iOS フレームワークチームとしてもできる限り対応していくことになった。
8月には2週間の夏休みを取り、今度はグランドキャニオンのノースリム、アーチーズ、グレートサンドデューンズ、イエローストーン、グレーシャーといった前回の旅行で行けなかった国立公園をぐるっと巡り、シアトル、ポートランドを経由してカリフォルニアに戻るという US 西部を一周するドライブ旅行を満喫した。
11月7日、Twitter 株式がニューヨーク証券取引所に上場された。いわゆる IPO だ。ニューヨークとの時差は3時間なので、東部時間9時半、つまり太平洋時間6時半の取引開始に合わせて、早朝からオフィスに人が集まっていたようだ。その日は木曜日だったので、毎週木曜日は在宅で仕事することにしていたぼくはそれには参加せず、普段と変わらず家から仕事をしていた。社員の持ち株は、IPO から半年間のロック期間中に売ることはできないとルールで決まっている。この時点ではどのみち何もできないのだ。
(Twitter での6年間 6 へ続く)