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沈黙が怖かった

僕は”沈黙”が怖かった
離婚直前の状態で子供とは普通に会話はするけど
夫婦間の会話は皆無

自分が仕事から帰ってきても
「ただいま」
とは言わない

だけど子供がいる時は別で
「ただいま」と言えば『ただいま』と返事をする

せめて子供の前では普通に

別に何か打ち合わせたわけじゃないけど
当時の妻とは自然にそうなっていた
3人では会話もあったり笑いもなんかあったりして
多分見た目は”普通”の家族に映ったと思う

当時僕は店舗勤務だったので平日休みもあって
子供が保育園の時は妻と自宅で二人っきりになった時間がとにかく怖かった

何も話さず目も合わせない
妻は黙ってスマホを
僕は黙ってパソコンを

お昼になっても
「ご飯どうする?」
なんて聞かれない

自分の分は自分で準備。
何故かわからないけどそっと妻の分も準備することもあったっけ

モグモグ…
と食事する咀嚼音すら聞こえてくるような空間
なおも黙ってスマホをポチポチと触っている妻

”何もない時間”
が居心地を悪くする

何もしゃべらないのは
何もしゃべる必要がないから
なのか
何もしゃべりたくないから
なのかはわからなかったけど

理由なしにお互い黙っているのが普通で
子供の前だけ会話するあの状態こそ
”仮面夫婦”だったと思う

今の妻と再婚してからもたまにお互いに無言の時間になることがあって

何も話さず目も合わせない
妻は黙ってスマホを
僕は黙ってパソコン

当時と同じような状況で
なんだか居心地が悪い

「今日のご飯どうしようか」
とか
「今週の天気は〇〇らしいよー」
みたいな脈絡のない会話を突然し始める僕

とにかく話さないとみたいな僕の気持ちを察したのか妻が
『私はお互いに何かにもくもくと集中している時間も好きだよ。だから、無理して気を使って会話しなくても大丈夫。会話しないのは”会話したくない”わけじゃなくって”今は会話する必要がないだけ”ってことだよ』
と優しくなだめるようにして伝えてきた瞬間視界が一瞬ボヤけた

なんかわからないけど
急に涙が出そうになった

”婚約”っていう書面上だけの契りじゃなくって
きちんと”心”でも繋がっていると会話なんて必要ない時もある
なんなら沈黙の時間も二人にとっての大切な時間

そう教えてくれた妻からの言葉

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