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詩空間とくしま(Poetry Space Tokushima)vol.4


恋泣きすずめ (ただとういち)

HADESのママが
ひとり寂しく
泣いているのでは
ないかと思い
駆けつけました

”男はつらいよ”は
よく見ましたが
女もつらいと
言うことを
今日初めて
気づきました

みんな
つらいのですね
頑張って
歌いましょう!


空中花(抄) (山本泰生)

切って 束ね飾って 投げ上げられて
ああ奪い合いされて うれしいか
   *
一行の花だって すずしく咲けれれば
   *
空が棲み処
風のなかで休まず戦いでいる
青い花瓶のなかで伸びあがる
   *
ひとをくすぐるまじない
その時間をていねいに耕して種をまいて
   *
だれか空にいるよ そっと網を打つ
   *
名のない花でいよう
するとどうあれ だれも振り向かない
ふふ 黙って灯る
   *
花はふかく眠っているのに 開きうたう
あなたの夜に届くよう
   *
いやだな あんまりさみしいとき 空を噛む
   *
ひとはそれぞれ
まぼろしの自分を生きている
どんなにあやしかろうが
   *
詩でね 淵に潜むこころをすくいあげよう
なんて馬鹿げている
でも やめない
   *
根も無く空気に咲く花 ゆらりゆら
迷子だと知ってから ひとはずっと

 (「空中花1~8」より抜粋)


冬の思い出  (高原紫夕)

いつも真っ赤な愛だけで
ぬめる床を歩いていた
怖がりな僕の手を引きながら
からから笑ってくれたひと

ぬくもりを知っても引き離されて
返せない情をもてあます
冷夏の中をひとりで駆けて
叫びたくても叫べない

何も終わることができずに
ずっと続くよ消えないで

真っ白な部屋のバランスは
崩れて僕が残っている
暖冬の日々に思い出す
ひかりだけ追いかけていたひと


「奇跡の子」 (横須賀しおん(あわや詩朋))

私は奇跡 奇跡は私
母なる奇跡は 子宮の中に
私の生命 奇跡の生命
定めを宿して 地球の中に
生まれた奇跡 未来の奇跡
明日への願いは 銀河を超えて
私はあなた あなたは私
全ての奇跡は めぐり逢い
時間(とき)の止まった 海岸で
黄昏時に 目を閉じる
海鳥の声 波の音
ふいに涙が 溢れだす
天に向かって 私は祈る
想い通りに ならずとも
夢は捨てない 素直になって
自分を信じ 未来(あした)に生きる
計り知れない 漆黒の闇
月に叢雲(むらくも) 花に風 
それでも奇跡の ともし火は
迷う事なく たどり着く
宇宙(そら)で見つめる 優しい貴方
いつも私を 見守っている
宇宙(そら)へ向かって ありがとう
ありがとうしか 出てこない
天が全てを 与えてくれる
試練を乗り越え 進む時
目には見えない 力が宿り
奇跡の力が 試される
すがる心を 捨てなさい
自分の足で 立ちなさい
すべては私の 中にある
生まれた時から 奇跡の子
====================
※……2024.11.27 せんがわ劇場にて初出。
「奇跡への誘い」公演 朗読  斉藤ゆき子


一ツ目ダンス  (浪市すいか)

ジョハリの窓の新たなガラス
シャッターフラッシュに毒されて
今日も画面で誰かが踊る
ワンタッチの拍手が欲しくって
回る、まわる、各自の拡散
架空のハイタッチに乗せられて
オーディエンス焚いて、抱いて
承認求める心は食べられ
インパクトだけが主役になる
四角い箱の中
エール全てを飲み干して
眩むバッカスの宴
ダンスホールが燃えている


やさしい  (鈴木日出家)

やさしいなんていやだぜ
やさしいなんて一語で
おなじ名札をかけられて
さんかん日のうしろの黒板に
ならべられるのはいやだぜ

ちがうよ
わたしのエクリチュール
あなただけのシニフィエ
わたしのやさしいは
あなたがねたあとにともすろうそく
あなたのみみもとにはさんだしおり
ほかのだれにもいえないことば

わかってないねってぎゅっとした
わかってないよってしたをだした


《企画「徳島現代詩協会の新人」》

 2025年最初の「PoST」をお届けするにあたり、徳島現代詩協会が誇る若手詩人をお2人、紹介したいと思います。いずれも県内の詩賞を受賞したり、全国詩誌への投稿や文学フリマに参加したりなど、活発に活動されています。(聞き手:鈴木日出家)

高原紫夕さん

鈴木(以下、S):
 まず最初は、高原紫夕(たかはら しゆ)さんです。こんにちは。
高原さん:
 こんにちは。
S:
 高原さんは30歳代ですよね。協会員では若手グループですが、詩歴は20年と長くていらっしゃいます。
 詩に興味を持ったきっかけはどういったところからですか。
高原さん:
 好きで読んでいた漫画のモノローグが、詩みたいだなと思ったところからです。
 詩なら自分の思いを昇華できるかもと思い、興味を持ちました。
S:
 漫画から詩に興味を持つって、おもしろいですね。
 ちなみに、どんな漫画ですか。
高原さん:
 「フルーツバスケット」という少女漫画です。著者は高屋奈月先生で、白泉社から出ています。
S:
 本当に詩の入口って、いろいろなところに広がっているということですね。
高原さん:
 そう思います。
S:
 ずっと詩を書いてこられて、今、詩で表現したいことってどんなことですか。
高原さん:
 自分の中や世の中にある、感動や、なにか美しいものを詩に表せたらいいなと思います。
S:
 「感動」や「何か美しいもの」、まさに高原さんの詩風を象徴していると思います。
 最後に、今後の目標があったら、聞かせてください。
高原さん:
 詩に具体性を入れるように努力したいです。
 そして叶うなら、詩集を出してみたいです。
S:
 瑞々しい感性の結晶のような高原さんの詩に、具体性も込めて読者に届けられれば、より立体的に詩が立ち上がってくるのかもしれません。
 そんな高原さんの素敵な詩が並んだ、詩集が発行される日を楽しみにしています!
 これからもがんばってください! 

浪市すいかさん

S:
 続いて、浪市すいか(なみいち すいか)さんです。こんにちは。今年は文学フリマ香川に参加されたり、PoSTのカバー写真を作成いただいたり、幅広いご活躍でしたね。
浪市さん:
 こんにちは。その節はありがとうございました。
S:
 こちらこそ。浪市さんは32歳でいらっしゃいますが、詩歴は16年と、こちらも高原さんと同様長くていらっしゃいます。
 詩に興味を持つきっかけはどういったことだったのでしょうか。
浪市さん:
 小学生の国語の授業であった詩の創作がきっかけです。
S:
 小学校とは早熟ですね。詩の創作は定番の授業内容かもしれませんが、私は全く記憶にないです(笑)
 ちなみに、どんな詩をつくったか、覚えていらっしゃいますか。
浪市さん:
 青空についての詩だったかと思います。
S:
 教室の窓から見える青空、あるいは休み時間に校庭で見た青空。きっとその頃から浪市さんらしさの溢れる詩だったのでしょうね。
 では今、浪市さんが詩で表現したいと考えていることはありますか。
浪市さん:
 物事の捉え方を新たな表現で言葉にすること、です。
 作品を読んでわくわくしたりときめいたりするような詩を作っていきたいです。
S:
 「新たな表現」、すべての詩人にとって、目標にしたいことでもありますよね。
 最後に、今後の目標があったら、聞かせてください。
浪市さん:
 いくつかあります。
 『ユリイカ』に掲載されること。好きな出版社で本を出すこと。
 それから、いろんな人と研鑽したいと思っています。
S:
 たくさんの目標を持っている浪市さん。その目標がひとつひとつ実現されていくことを一緒に喜びながら応援していきたいと思っています。これからもわくわくするような、ときめくような、いい詩を期待しています!


編集後記vol.4

2025年の幕開けとともにお届けするPoST vol.4、いかがだったでしょうか。今回は初めての企画として、「徳島現代詩協会の新人」として、協会の若手詩人をご紹介しました。2人とも若くして豊富な詩歴でいらっしゃいますが、水の恵み豊かな徳島からこれからも若い詩人が登場し、尊い文化の営みが脈々と引き継がれていくことを祈念しつつ、今年もよろしくご愛顧くださいませ。もちろん、徳島現代詩協会は、年齢・詩歴を問わず、参会いただける方をお待ちしています。

1つご案内です。当協会会員の、青木心さんの第一詩集『詩ま詩ま―水色の変遷―』が2025年1月11日に発刊されました! 徳島県内の小山助学館、平惣全店、紀伊國屋書店徳島店(アミコ東館)でお買い求めいただけます。とくしま文学賞現代詩部門、徳島詩壇賞を受賞なさっている、、当協会きっての実力者である青木さんがいよいよ発刊する詩集です。ご本人がデザインされたという表紙にも注目! 帯はわれらが清水恵子先生が担当されています。ぜひお手に取ってみてください。

 vol.4編集担当 鈴木日出家

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