千葉県で味わう北朝鮮の味
脱北者の料理人がいる朝鮮料理店が千葉にあるらしい、と聞いたのは今から半年ほど前のこと。それ以来ずっと気になっていたが、この度伺うことができたので、簡単にリポートしたい。
千葉市稲毛区にある朝鮮料理屋の「ソルヌン」さんが今回のお目当てだ。3月下旬にオープンしたそうである。東京都心から1時間はかかる場所にあるにもかかわらず、特に開業初期は行列ができていたらしい。
日本人の男性と平壌出身で韓国人の女性の夫婦で経営している店で、韓国のソウルに1号店がある。なので千葉のこの店は2号店だが、日本の1号店ということで話題になった。本当に本場の平壌冷麺をリーズナブルな価格で食べられる貴重な店である。女性の母が北朝鮮の高麗ホテルの料理人だったそうで、味は確かなのは間違いない。なお、こちらの記事では店の紹介に加え北朝鮮での経歴や脱北についても書かれており、短いながら読み応えがある。
立地は最寄り駅からおおよそ10~15分。ほかにも、JR総武線の稲毛駅から約15分と徒歩圏内である。アクセスは悪くはなく、色んなルートがあるのはありがたい。
店内はカウンターが5,6席、4人掛けテーブルが3つほどある。入店時はちょうど満席だったので、名前を書いて外で15分ほど待った。
メニューは平壌水冷麺やビビン麺などメインが4つ、その他おかずやドリンクといったところ。夜は焼肉も食べられるらしい。冷麺、チヂミ、ポッサムを注文。北朝鮮の大同江ビールはさすがに置いてなかった(と思う。制裁の関係で輸入できないはずだし)。
平壌水冷麺は日本の普通の焼き肉屋で出される冷麺と異なり、そば粉が原料だからか麺が黒くて細い。コシはそこまで強くはなく、噛み切れないということはないだろう。
スープは牛骨で取ったダシと大根の水キムチの汁を合わせるのが一般的らしく、透き通った色をしている。朝鮮半島の料理というと辛いイメージがあるが、少し甘みを感じるくらいで上品な味わいとなっている。ただちょっと単調にも感じた。
具は錦糸卵、きゅうり、キムチ、肉、ゆで卵、梨。ゆで卵以外の具は重なるようにトッピングされており、盛り付けも非常に丁寧。キムチの辛味がパンチになって食べ進めやすい。梨はお口直し的な立ち位置なのかな?
美味しくてあっという間に完食。醤油か追いキムチがあればスープも完飲できたかもしれない。
チヂミの具は豆苗のような野菜であった。ファミチキのような香ばしい匂いでサクサクである。甘辛のタレに付けると絶品。4人で行ったので1枚の半分しか食べられなったのは惜しかった。もう1皿注文してもよかったかもしれない。
ポッサムは茹でた肉を指す料理であり、キムチやサンチュと一緒に食べる場合もあるらしい。今回は牛肉のポッサム。茹でて薄切りされた牛肉を、その下にあるネギと一緒にタレに付けて食べる。シンプルながら牛肉の旨味をダイレクトに感じられる料理で良い。今思えば冷麺に入れてもよかったかもしれない。
入店から30分くらいで食べ終わり、会計。本場の北朝鮮料理をこれだけ食べて一人当たりだいたい2000円は安いほうだろう。ごちそうさまでした。
北朝鮮は、国交がなかったり制裁の関係で、外務省から全土に渡航自粛要請が出されている(それでもネットを探すと旅行記がいくつか出てくるが)。そんな中でソルヌンは、外務省に怒られたり自分の命を危険にさらすことなく、高麗ホテルの料理人から受け継いだ本場の味を体験できる貴重な店であるが、ひょっとするとこの店の料理がおいしい最大の秘訣は、本国にはない「自由」かもしれない。
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