【プレサスインタビュー Vol.9】鹿嶋市・三輪大さん・綸子さん
茨城県鹿嶋市でcoyadoを営む三輪大(みわ まさる)さん・綸子(りんこ)さん。2024年9月6日、鹿嶋市内に古民家をDIYして造った民宿、coyadoをオープンしました。
大さんは東京都足立区出身で綸子さんは茨城県常陸大宮市出身。東京都内の大学で出会い、交際を開始。一度は民間企業に就職するものの大さんの「世界一周がしたい」という夢を叶えるために退職。お二人で世界一周に行った後、鹿嶋に移り住み、購入した古民家をDIYして民宿をオープンしました。
大学時代とカシマの地
大さんと綸子さんの出会いは東京都内で通っていた大学。学年もキャンパスも違ったものの、寮が同じだったことをきっかけに仲良くなり、交際に発展したお二人。大学時代、大さんは水上スキー、綸子さんはライフセービングの活動に明け暮れる日々を送っていたようです。
「実際に学生時代活動していたときは知らなかったけど、週末や長期休暇とか同じタイミングで神栖の活動拠点に通っていました。」と大さん。出身地でも進学地でもない神栖にもお互いの共通点はあったようです。
「でも、神栖には通っていたけど、神栖に詳しいかと言われると全然そういうわけではなくて、練習場にしか行っていないから…笑」と大さん。綸子さんも「スーパーのタイヨーと海だけは同じものを知っているけど…笑」と笑いながら話します。
会社員時代に感じたこと
やがて、大さんは大学を卒業し、特別なにか将来の夢や就きたい職があったわけではなかったものの、建築関係の学部に通っていたことから東京都内の建築会社に就職。現場監督として勤務しました。
「現場監督時代は上司にすごく恵まれていて、その時に『結局、何事も人が大事だな』と感じました。現場監督って工事が順調に進んでいるかとか、ちゃんと工事が行われているかというところを確認するんですけど、よくありがちなのが図面をすごく見ちゃうんですよね、図面が正しいかどうか。でも、それ以上に現場がどうなっているかを見なくてはいけなくて。現場がどうなっているかが一番大事で、それをどうやってより良いものにしていくかが大切。『机上の空論だけではなくて現場に出ろ』ということをよく上司に言われながら仕事をしていましたが、現場に出て実際に見えるものがあったり、人と接して感じたこともあり、『人が大事』と感じるようになりました。それは今も通づる話だなと印象に残っています。」と当時を振り返りながら語る大さん。
綸子さんも大学を卒業すると、スポーツメーカーに就職し、都内で勤務していました。
漠然と思い描いていた世界一周
子供の頃から漠然と世界一周が夢だった大さん。ある日、ある人になにげなく世界一周について相談したところ、背中を押されます。「行きたいと思っているなら絶対に行ったほうがいい、と言われてそこで背中を押してもらえて、死ぬまでに後悔したくなかったのですぐに行くと決めました。」と大さん。その後、翌勤務日には会社に辞めることを伝え、綸子さんにも決定事項として伝えたそうです。
「大さんから業務連絡みたいな感じで世界一周行ってくるから、って言われて…。最初は驚きましたが、らしいなとは思いました。笑」と綸子さん。元々、世界一周には大さんひとりでも行くつもりだったようで、綸子さんにはついてきてとも来ないでとも伝えなかったようです。
「それで、どうする?って聞かれて…。考えて考えて、私も翌営業日に会社に辞めますって伝えました。勤めていた会社では本当に人に恵まれていて、仕事内容も楽しかったからどうしようかなって考えた時に、ここで辞めるのももったいないとも思いました。でも、どちらが今後できなくなるかとか決めたことを他人のせいにしないかとかいくつか天秤にかけて、初めて自分で自分の人生の大きな選択をした気がします。」と振り返る綸子さん。
これを機に、2人は仕事を辞め、入籍し、世界一周することを決めました。
約10ヶ月間に及ぶ世界一周では44カ国を訪れ、世界中の人たちにアポイントメントを取ってはお話を聞きに移動し、現地のリアルを体験し、原体験を共有する貴重な期間となりました。
移り住む先は鹿嶋へ
帰国後、紆余曲折あり、1〜2年色々なことをして過ごしていた大さんは、自分の拠点をつくりたいと思うようになったそうです。「今後、自分で何か仕事をしていく上でオンラインだけではなく、オフラインで、目に見えるものをつくったほうがいいと感じて。それで拠点をつくりたいと思うようになりました。ちょうどその時、空き家問題がフューチャーされていたこともあり、空き家を使って自分の拠点をつくれたらおもしろいし、一石二鳥だなと思って。」と大さん。その後、大さんと綸子さんは拠点探しの旅に出ます。
都内の賃貸を引き払い、気軽に多拠点生活ができる住まいのサブスクリプションサービス「ADDress」を使い、主に群馬、神奈川、山梨、千葉などの関東圏を中心に約100日間、25拠点を転々としたお二人。大洗に滞在した際に茨城は良いかもと思い、鹿嶋市内も候補地のひとつに入れることにしました。
「最終的な決め手は良い物件があったから。結局どっちが先かって話なんですけど、その町が良いと思ってから物件を探してもなかなか物件が見つからないんですよね。一度、群馬のとある限界集落の町で本気で物件を探してみたけど見つからなくて。それで、東京が近くてある程度土地勘がある場所、と考えた時に鹿行地域の特に鹿嶋、神栖が候補にあがって鹿嶋に決めました。」と語る大さん。鹿嶋市内ではビジネスホテルに宿泊したり、車中泊をしながら拠点を探し回りました。
そして、自ら自転車で見つけた海の目の前にある一等地。元々、民宿として使われていた古民家をDIYして民宿を行なっています。
海目の前の古民家宿 coyado
元々は民宿をやろうと思っていたわけではありませんでしたが、世界一周や多拠点生活を振り返ってみると、記憶に残っているのは暮らすように泊まった滞在先での人との何気ない交流や出来事だと感じたお二人。今度は自分たちがそのような場をつくり繋げたいと思い、民宿という形で拠点をつくることにしました。
まずは購入した古民家をリノベーションしようと業者に依頼したところ、予算以上に見積もりが高く断念。なるべくコストを抑えられるよう、DIYすることを決意したお二人はどうせなら、自分たちの記録に、あわよくば誰かの役に立てばと思い、インスタグラムでの発信もし始めました。
…とはいえ、DIY経験は全くなかったお二人。「さあ、何をしよう…」というところから始まり、 残置物にあった一本のバールで解体するところから始めることに。最初はお二人だけでDIYを頑張っていましたが、次第に協力してくれる人が増え、県内外問わず100人以上の助っ人さんがお手伝いに来てくれるようになりました。民宿のオープンまでは半年の予定でしたが、気づけば約2年間もの月日が流れていました。
そんなcoyadoはみんなで共につくりあげた宿であり、お二人だけでなく、みんなのアイデアやパワーが詰まっていることから、co(共に)〜するyado(宿)という意味を込め、『coyado』と名付けられました。
鹿嶋に来てからの約2年間で緩やかに繋がった人たちとの暮らしのおかげで日々が楽しいと感じるようになってきたお二人は「鹿嶋の魅力は人だと思っている。」と語ります。
「個人的には鹿嶋の魅力は人だと思っていて、泊まった人と地域の人と一緒にご飯を食べるとか飲むとかそういったことを通して鹿嶋と他の人たちを繋げる拠点にできたらと思っています。」と大さん。
人と人との交流を生み出す拠点となりうる場所、滞在できる場所にしようと考えたのは世界一周の経験があったからこそだとお二人は話します。
「結局、思い出に残っているのは宿での滞在した時の一コマだったり、旅先で出会った人たちと食事に行ったり、その時でないとできない人々との交流をしたことがきっかけですね。」と大さん。
きっかけは何であれ、ここにたどり着いてくれた人たちが、この地に泊まり、地域の日常に触れ、人とつながることで、また「ただいま」と帰って来れるような場所になったらいいなと考えているようです。
そんな三輪家の拠点・coyadoがついに2024年9月6日にオープンしました。まだオープンして間もないcoyadoですが、二人組や家族連れのお客様が多く、目の前の海にサーフィンをしに来る方や市内の友達に会うついでに宿泊地として利用される方、サッカー観戦やイベントの後に宿泊される方など様々なお客様がcoyadoを訪れています。最近では海外のお客様も見つけて宿泊されるようになり、お客様が有意義な時間を過ごせるよう少しずつ工夫をしているようです。
「今は一番朝活をちゃんとやりたいと思っています。目の前の海は朝日が綺麗に見える場所なので朝の時間を大切にしたくて。もちろん、お客様とゆっくり話すことのできる夜の時間は大切にしていますが、ここは日本で一番早く日の出が見られる場所であり、鹿嶋は「はじまりの地」なので朝の時間も大切にしたいですね。例えば、一緒に海岸でランニングとかサーフィンとか、釣りとか、そういった朝活ができたらもっと有意義な滞在をしてもらえるかなって思っています。」と大さんは今後のcoyadoでの活動について語ります。
プレイフルな瞬間とは?
会社員を経て世界一周を経験し、現在フリーランスでお仕事をされながら宿を営んでいる経験豊富なお二人にもプレイフルな瞬間を聞いてみました。
「自分が好きなことで他人と違うことをしている時が一番プレイフルな瞬間かもしれないですね。今までやってきたことも今やっていることも恐らくマジョリティではないと思っていて。他人と違うことをやっている時が一番、自分にしか歩めない人生をしっかり歩めているかなと思いますし、その時が一番自分にとってプレイフルな瞬間かなと思います。自分にしかできないことを作り出せている感じが好きだし、大事にしていますね。」と大さん。
そんな大さんに対して「純粋にやりたい、面白いと思ったことをすぐ行動に移せるのはすごいなと思う。私は前に出るタイプでもないから大さんの苦手な部分で私のできることとか裏方でサポートできたらWINWINかなと思っています。」と語る綸子さん。必要な時にはしっかり手を繋いで夫婦二人で協力し世界を渡り歩き、鹿嶋の地にたどり着いたことが伺える微笑ましいやりとりをするお二人。
「私は新しい世界が見えた時かな。自分の知らないことを知れた時、見れた時が私にとって一番プレイフルな瞬間かなと思います。宿を始めるのも、拠点を移動するのも、世界一周をするのも、どこかの情報ではなく、実際に体験したり、お話ししたりすることで、自分の知らなかった世界が見えると生き生きします。昔も今も心配性な性格だけど好奇心旺盛なので…。(笑) その好奇心が勝った瞬間に自分も行動を起こせるなと思っています。」と綸子さん。
世界一周からの帰国後、様々な選択肢がある中で『鹿嶋に移り住んで拠点を構えて古民家をDIYして宿を営む』という鹿嶋ライフをお二人は選択しました。
そんな三輪ご夫妻が営む『海目の前の古民家宿 coyado』は1日1組限定の家主滞在型一棟貸宿。下記リンクからご予約が可能です。
ぜひ、みなさん楽しい三輪家の拠点・coyadoに遊びに行ってみてください!
★ プレサスインタビューとは
私たちが大切にしている「Playful Sustainable」という言葉。
この言葉には「Playful」答えのない好きの追求、「Sustainable」自然や文化など長く続くものの力を借り、守り続けるという意味が込められています。
私たちがこの地域で活動していく中でカシマにも本業・趣味関係なく、好きなことをとことん追求し、継続的に活動をされている方々にお会いする機会が多く、そんな好きを追求するプレイフルな方々のプレイフルな瞬間にフォーカスし、深堀りしてみることにしました。
どんな活動をどんな想いでされているのか、今後どうなっていきたいのかを実際にインタビューをしてお話しをお伺いし、掲載をしています!
下記、まとめ記事より是非ご覧ください!!