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手探りで駆けた 夢幻鉄道

昨年末に撮った作品が先日公開されました🎊

▼こちら

映像作品って作ったものに対して制作者として名前が出せないものがあったり、情報を表に出せなかったりするやつも存在するのですが、今回はそういった制限が無いものなので、拙い作品ではあるけれどもせっかくなのでこの作品の完成までの出来事と過程を記しておこうと思います。

今回の記事は、こんな話です。

・ほぼ初対面の人たちとチームを組んで低予算で作品を作る

・作品が出来るまでの流れと制作時の考え方

・映像を作るっていいね

MVをつくりました。(案件ではありません)

西野亮廣さん作詞作曲の『夢幻鉄道』という曲です。制作中の絵本『夢幻鉄道』のもととなっている楽曲。

こんな楽曲

『夢幻鉄道』作詞作曲 西野亮廣
 
夜が眠りにつく頃
とつぜん渡されたこの時間は
あの日、願いをかけた
流れ星の出来心か

赤い赤い月を浸した
海の向こうから鳴り響く
終わりの汽笛に背を向けて
僕ら手を繋いだ

叶わない願いと知りながら
手探りで駆けた 夢幻の夜は
キミとの時間が 幸せだったと
今頃になって教えてくれた

時計を忘れたキミが
この先ずっとそのままで
ボクだけ変ってくなんて
ほんと悪い冗談だ

いつも遅刻してくるキミに
怒ってたあの頃のように
待ち合わせなんて できないんだから
今は横にいてほしい

この世界が長くないことも
もうすぐこの手が解けることも
どうか どうか まだ言わないで
わかってる わかってるよ
わかってるから

「サヨナラ」を言いそびれた
こんなにノロマなボクでも
今度も見つけられるように
キミはあの日のままなんだろう?
光の 汽車に揺られながら
また 会いにくるよ

叶わない願いと知りながら
手探りで駆けた 夢幻の夜は
キミとの時間が幸せだったと
今頃になって教えてくれた

この世界が長くないことも
もうすぐこの手が解けることも
どうか どうか まだ言わないで
わかってる わかってるよ
わかってるから

LALALA…

切ない。ちなみに、物語の設計を考えている間もカット割を考えている間も、何度も架空の主人公に感情移入してしまって心苦しい日々を過ごした😢

きっかけと制作チーム

今回のチームはオンラインサロンがきっかけで出会った人達で構成。比較的ライトなノリでこの曲で映像を作りたいのだけど、と声をかけてもらったのですが、なんかコミュニティの力ってすごくて、謎の信頼感のもと、歌える人がいて、弾ける人がいて、出役のひとがいて、で撮影・編集の自分がいて、4人とミニマムチームですがメンバーが揃って走り始めることになりました。ちなみに、ほぼほぼ初対面。

スケジュールの都合で撮影までの日取りが短く、おかげで?密なコミュニケーションが取れて期間の割に超濃い関係性が築けた+コミュニティのおかげで価値観のすり合わせに余計なコストがかからず距離を縮めることができた。また別の作品作りたいと思えるくらい良いチームとなったと思います。

まあ、引き受けたけども・・・

そんで「やってみましょう😊」なんて言ったもののMV作った経験ない(笑)専門外!ミニマムチームだから制作部も撮影部もいない。自分でカメラ持って撮影しながら演出か。いや、自分でカメラ持って撮影なんて普段しないし・・・

どうする?どうする?どうするよ自分?
って不安だらけ。

それで、出演してくれるって人が海外で活動してるプロのバレエダンサーだっていうじゃない。ちょうど日本に一時帰国しておられて今時期しか居ないって、なにも内容決まってないけど出演を快諾してくれたっていう。

ちなみにとても素敵な方だったので
先にこのダンサーの方を紹介しておきます。

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岩崎 安里さん

ウクライナの首都キエフにある国立劇場(キエフバレエ団)のバレエダンサー。
バレエという枠を超え、
見ている人に癒しや感動を与えるべく
踊りを通して幅広いジャンルで活動中。

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▼Instagram

https://instagram.com/anri_iwasaki?igshid=1mq6dputzl48g

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今回、初めましてだったのですがコミュニケーション能力が高くて話を進めやすいし、
微細な演出意図までもきちんと汲み取った表現をしてくれて、制作としては大変やりやすくありがたい方でした。

スチールやムービーの作品撮りに積極的な方なので、クリエイターや写真や映像に関わる人は是非一度声をかけてみてほしいくらいです。


話を戻すとともかく、ここに来てのプロダンサーの登場に…この人に泥を塗るわけにはいかん。とちょっと心に圧が加わった瞬間でした。


◼ストーリーと構成

今回はみんなで議論して、
ざっくり以下のような感じに決まりました。

▼ 映像 × ストーリー でのアプローチ
「夢幻鉄道」の物語の方向性に寄り添ってストーリーを制作し、そのストーリーに基づいたダンス×映像作品を制作。

▼ ストーリー概要
主人公の婚約者が突然に亡くなり、
絶望の淵に立っている。
夢幻鉄道に乗って降り立ったのは、
記憶に懐かしい海だった。

果たしてそこでは
婚約者に会うことができるのか――


心がけていること

いつも映像を作るにあたって
こんなことを大事にしているのですが

頭いっぱいになるくらい
対象(物/者)に惚れ込む。

今回でいうと、原作の物語や原曲、そして被写体となる人のことで、クライアントワークでいえばその会社や紹介したい商品などにあたります。

対象について知らなければどこを好きになったらいいのかわからないので、
徹底的に調べます。徹底的に。

ネットリサーチで拾える情報は当たり前に全回収。会話ができる場合には時間をもらって「知る」ということに力を注ぎます。
知ることが出来てからやっと向き合って寄り添える気がして。そういったことを大事にして作るようにしています。

✍ とにかく知る。

今回はストーリーを考えるにあたって、出演してくれた彼女がダンサーであることと、彼女の持ち味を生かす見え方にすることに気をつけて、可能な限り等身に近く気持ちの入りやすそうな役柄の設定にできるような設計を今回は心がけました。

✍ 対象から物語や設定の
  イメージをもらうのも1つの手。


さらにストーリーに沿って今回はこんな2つのシチュエーションと設定を決めました。

◼公園(現実世界設定)

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亡くした婚約者との2人の思い出の公園。
一緒に過ごした時間を忘れないように、
この思い出だけは絶対に忘れないように、
何度も何度も引きつけられるように
この公園にやってくる。

◼海(夢の中設定)

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夢幻鉄道から降り立った場所。
この場所はどこか懐かしい感じがする…
なんだか愛を誓い合った思い出深い場所に似ている。(記憶の中から再現された世界)
まだ日が出ていて夜になる少し手前の
夕日が綺麗な時間帯。

✍ 全員がイメージできるように
  事細かく設定を決めて言語化。

映像担当として専門外すぎるところは

◼楽曲アレンジ

この曲は正式には現状未完成の楽曲ということで、元々音楽業界で仕事をしていたという演奏を担当してくれた頼もしいメンバーに楽曲まわりをお任せしました。

✍ 適材適所大事。

ただ作品の全体イメージに関わる部分なので、ストーリーイメージを固める前にデモ音源を共有してもらいました。

全体尺も大体確定させてから撮影に臨んでいます。

撮影後に、ピアノと歌のレコーディング。

今回は、物語に入り込み演者に見惚れるような作品にしたかったという意図もあって、音楽と歌が主張しすぎないように心がけて制作してもらいました。

◼振り

私自身、まったくダンス知識がないので、表現したい主人公の感情を抽出して、ダンサーの彼女に振りはお任せすることにしました。

✍ 適材適所大事。

▼こんな感じで演出面で表現したい感情の言語化をして共有。

  ↓歌詞    ↓海     ↓公園   

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振りを考えて頂いたら、ムービーなどで共有してもらって制作チーム内のイメージのすり合わせをして進めていきました。

✍ 事前のイメージのすり合わせは超大事。


◼ロケハン

いつもならば絶対にカメラマンを引き連れて一緒に現場をみてあーだこーだ相談したいところでしたが今回は自分がカメラマンなので自己完結。

制作チーム全員で現場をみて来ました。

実際に撮影候補となる場所を見て、今回のように被写体となる人に立ってもらえたら理想ですが演者がロケハンにいないことの方がケースとして多いはずなので同行者なのかどなたか協力してもらえる方に立ってもらうとイメージがしやすいです。

✍ 撮影場所の全体感と
  撮影場所のイメージを掴む
✍ カメラで写真や動画を撮り記録をする
(スマホでもいいと思います)


▼こんな感じ

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今回は、ロケハンの時点で本番の衣装の準備も大体整っていたので着てきてもらっています。おかげで随分と撮影のイメージができました。可能であれば動きつけてもらえるとなお良し。

ここで撮影した素材はコンテにも使えるので、画角のパターンを探りながらたくさん撮りました。

公園にちょっと立ってるだけで映像映えするこの方の佇まいに気づいてしまって、作品作りがより楽しみになった反面、自分の撮影技量で台無しにしてしまう強い不安を覚えカメラの練習をすることを静かに心の中で誓ったのでした。

◼撮影準備

事前準備として構成とロケハンの写真をベースにイメージをコンテに落とし込み。

映像って本当に怖いよ

✍ 結局、撮影素材って命

素材を生かすも殺すも撮影者次第ってところがあって、撮影が悪いと、どんなに綺麗なロケーションでもどんなに素敵な表現をしてもらっても殺してしまうんですね。撮影素材が良くないと、編集でどんなに頑張っても限界があるんです。

いかに良い素材を撮らなければいけないのか知っているわたしは、撮影に不安しかなかったので、コンテンポラリー系やバレエ系のリファレンス動画を見て画角の勉強、もちろん撮影前は入念に練習。すぐに上達するもんじゃないってわかっているけれど、悪あがきってことで、仕事と仕事の空き時間は公園に連日通い撮影の練習に時間を費やしました。

✍ 練習あるのみ

YouTubeでもめっちゃ学習しました。
ありがとう、大川優介さん。

フォーカスをとるのが
難しいのなんのってよ(笑)
カメラマンさんってほんとにすごい。
これまでもリスペクトしてましたが、
さらにリスペクトの思いが強くなりました。

◼今回のメイン機材

SONY α7S II ×1
(動きの少なめなカットに使った)

設定:1920×1080/60fps/pp7

SONY α7Ⅲ ×1
(激しい動きのあるカットに使った)

設定:1920×1080/60fps/pp10

DJI RONIN-SC ×1

▼身長158cm、割と小柄なんですが
ジンバルを持つとこんな感じ。

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軽量カメラ+軽量ジンバルの装備なのに重〜!と感じてしまって、私は筋肉痛になりましたよ。女性や小柄なカメラマンさんはどうなんですか?平気ですか?慣れるんですか?
私が筋力・体力なさすぎなだけですか?

#ぜひ教えてください

◼撮影DAY1 − 公園

この日は途中からひょうが降ってくるくらい寒い日でした。晴れ予報だって言ってたのにほとんど曇り空で…でも、主人公の心情を当てはめたような天気だったのでそれはそれで良いかという判断にしました。

▼ α7S II素材(LUTなし)

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▼ α7Ⅲ 素材(LUTなし)

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ラストカットだけは、どうしても晴れているカットがほしくて一瞬だけ出てきた太陽のタイミングを逃さず撮影することができたのは奇跡でした。

✍ 天候は画に影響するので
  外撮影では本当に大事。

◼撮影DAY2 − 海

12月の海で裸足にこの衣装はさすがに申し訳ないことをしました。寒い!!普通に服着てても寒いってのに、頑張ってもらいました。

極寒状況での撮影に見えないのが
プロの根性をみせてもらったなと。
お天気にも恵まれ、良いロケーションでした。

✍ 晴れの日ステキ

▼ α7Ⅲ 素材(LUTなし)

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撮影の技量はもちろん数日の練習ではたいした成長はなかったけど、

お天気×絶景ロケーション×プロダンサー

という最高な状況に助けて頂いて
良い素材がとれたのではと思っています。

撮影中も何度も見惚れるくらい素敵な表現をしてもらいました。

✍ 撮れ高が大事

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日が暮れてきた頃、ジンバルのバッテリーが切れるというハプニングがありましたが、ちょうど撮影するこのカットが主人公の心の葛藤を表す振りだったこともあり、即座に手持ちに持ち替え、撮影の手ブレ感を心の機微表現として活かすことにしました。MVみてもらうとわかると思うのですが終盤のここらへんのカット結構ブレブレだったりします。

✍ ハプニングは付き物

夕日ギリギリまで撮影は続き、なんとか撮り終えたって感じでした。寒い中、頑張ってくれた制作チームの皆さんには心から感謝です。本当に綺麗な撮影だった。

◼編集

▼ PC

MacBook Pro 15 inch

Core i9

メモリ 16 GB

▼ EDITソフト

Adobe Premiere Pro 2020

1920×1080 / 23.976 fps

作成していたコンテに合わせて良い素材のOKカットをどんどん繋げていくイメージで編集していきます。予定していなかったけど良いものが現場で撮れていたら入れ替えをしたり足し算引き算で全体のバランスを見ながら調整。

編集中は独りよがりになりがちで、曲とストーリーの影響もあって今回は感情的になりました。片想いしてるみたいな感覚になります。
好きなんだけど本当に大嫌いになる時もあったり。(わかりますか?)

元々すごく制作中は作品に引っ張られるタイプのディレクターなのですが、今回は結構、、、
情緒不安定にさせれて心がすり減る作品だった気がします(笑)

▼ 消し

撮影時に映り込んでしまったものや人物が、思いがけず目を引き、作品の妨げになってしまう場合があります。今回もありました。

作品的には大事なこのシーン、みてください。

 ▽ 消す前

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撮影時に人が映り込んでしまったのです・・・

右上。

やってしまった。
カメラマンの完全なるミスです。

Premiere Proのマスクを適用させ、
居なかったことにしました。

 ▽ 消した後

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ちょっと無理したところもあって
実は超綺麗には消せなかったので、
よーーく見ないでほしいです(笑)

✍ 撮影時に映り込みには気をつけて
✍ マスクでカモフラージュできる場合もある


▼ カラー

時間がかかったのがカラー調整でした。

◼公園のカラーイメージ

落ち着いていて少し暗い印象を持たせ、
現実世界の生っぽい雰囲気に

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◼海のカラーイメージ

夢と現実の間にいるような現実感の薄い
幻想的な空気感で温かい雰囲気に

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色味のイメージを言語化してみましたが、
難しいですね(笑)
伝わってないかもしれません。

この数十秒くらいのカットに果たして何日、何時間かけたのだろうかというカットがたくさんあります。時間がかかりました。曇りの日の素材に色を載せる難しさ。エモいの具現化の難しさ。どれも良い感じなんだけど、コレだっていう決定的な色味でもないっていう沼にハマりました…

最終的にはチームメンバーと相談して
納得いくカラーに仕上げて完成。

✍ 他者から意見を聞いてみると冷静な色味に

作品を作ってみて

仕事外で映像を作る機会が少なかったので非常に刺激的でした。

新しい経験をしたり、うまくいかないことが多くて、なんだか久しぶりに必死になって、ムキになるくらい向き合えた時間をもらえた感じです。

今回はほぼ初めましてのチームメンバーだったのですが、巡り合わせで出会った人と、それぞれが生きてきた経験や時間の掛け合わせで作品がつくれるのってこれも映像の良さなのかなと。

よい体験と思い出がまたひとつ増えました。

おわり😊


こうして完成した
『夢幻鉄道』作詞作曲:西野亮廣 (covered by Fruits Sand)
もしよろしければ感想聞かせてください🙇‍♀️