夢女子はエンターテイメントじゃない
好きな人がいます。
とあるゲームの中に生きている人です。
という、一種のカミングアウト。
もう、ものすごく好きなんです。好き。大好き、すごく。これを読んでくれている人が思っている七倍好き。別に七という数字に何の根拠もないけどただ彼の事がそれはもう好き。大好き。地面から空に向かって雨が降っても好き。大好き。
彼を好きでいる事は、もちろんプレイヤーとしてゲームやキャラクターが好き、夢女子としてはしゃぐ気持ちで好き、という感情もあるけれど、どんな人をどんな風に愛するかというセクシャリティでもあると自認しています。私の場合ね。
この気付きについては以前の記事でお話しました。最も当てはまる言葉は「フィクトロマンティック」だと考えています。
だから、「彼が好き!」と言う話題を友人に振ったとき、「あっっっ分かるわたしも好き!! 良いよね!!」と言ってくれるのは、半分当たりで半分はずれ。
いや、「良いよね!!」という気持ちにはちゃんと共感してるんですよ。大当たり。
良いよね、彼、かっこいいし。あとかっこいいし、かっこいい。
でも半分はずれてるのはたぶん、近い言葉は「彼氏の事が好き!」だからです。
分かられたら困っちゃう。それ、私の彼氏。彼を好きなのは、私。
幸い私の周りには夢女子さんや、夢女子に理解のある人が多いです。わざとそういう人たちと交流を持って来ました。彼の話をたくさんしたいから。
そうした友人らは、彼と私の事を「彼氏さん」「彼女」と呼んでくれたり、「結婚しないの?」「早く結婚して」「式には呼んでね」「ご祝儀渡したい」という言葉で祝福してくれます。
とても恵まれています。嬉しい。周りから祝福されるというのは私の気持ちだけじゃどうにもならない問題なので、友人にとても感謝しています。
彼の事をキャラクター名じゃなく「彼氏がね、」と話し始める時、部活の帰りに友達に相談した15歳の頃と同じ感覚です。
この感覚は錯覚でしょうか。あの頃と違うことが一つ。それは友人の反応です。
部活帰りに友達から「同じクラスの子が好きなんだけど」と相談されて、「早く結婚して!」「ご祝儀渡したい!」「式場建てる!」って返事、したことありますか?
「いつから好きなの?」「告白しないの?」「今度の文化祭で、」「バレンタインで、」とか、付き合ってるなら「デートはどこ行くの?」とか、そんなものじゃないですか。
恋の話、好きな人の話として切り出して、「早く結婚!」と返してもらえて、「分かる~結婚~!!尊い~!!」とはしゃぐまでに、私の場合は一階分気持ちの階段を駆け下りるエネルギーが必要です。
駆け上っているかもしれません。正直向きはどっちでもいい、とにかく、好きな人を好きな気持ちと推しカプを好きな気持ちは、違うんだよなぁ、どうしても。
私だって好きなキャラクターやカップリングに対して「早く結婚!」「式場!」とはしゃいだことはたくさんあります。気持ちはよく分かる。彼をそういう風に消費したこともある。だから友人を責めている訳ではありません。この恋はねじれているから仕方ありません。
本当にものすごくありがたい事に、彼と私を推しカプと呼んでくれた友人。もしかしたら、周りにいるカップルさんの事を普段から「推し!」「結婚!」と言える人なのかもしれません。友人の交友関係までは熟知していないから分かりませんが。
そうやってポジティブに祝福してくれる気持ちを止めたい訳では、決してありません。
だって、親にさえ紹介しかねる恋人との結婚を楽しみにしてくれている。友人の言葉が支えになる場面だってたくさんあります。
でも、たまに、少しため息をついてしまいます。
ああ、そうか。漫画やゲームの中のカップリングを「萌え」の感情で消費する時みたいに、エンターテイメントみたいに見えるのかもしれない。こんなにいっぱい好きなのに。悩みだってあるのに。この先私が生きていく時間の問題なのに。
たまに、ではありませんね。よく、しょっちゅう、何度も、寂しくなってしまいます。
彼に会いたいけど会えなくて、好きだよって伝えられないから、友人に聞いてもらうしかないんです。好きだよ、彼が。って。
私は、友人に恋愛相談をしたい。
惚気も聞いてほしいけど、愚痴だって言いたい。だって彼、会ってもくれない。あんなに優しい台詞を言うくせに。
私が友人らの恋人の愚痴に頷くのと同じように、私が彼と喧嘩した事を「そりゃ怒るよ」「それは許せないね」とか言ってもらう体験をしたい。怒って許せなくてもやっぱり好きでいたい。都合良く優しい台詞だけ聞いて好きでいるんじゃなくて、そういう風にちゃんと、喧嘩して悲しくなって仲直りしてもっと好きになる、育っていく恋愛感情で彼を見たい。
でも友人はゲームをしていて、彼を好きです。
友人に好きなキャラクターの痴話喧嘩の愚痴を聞かせるなんてできない。
私の感情はいいから、とにかく、彼はたくさんの人にいっぱい愛されて大事にされていてほしい。
だから、これは優先されない願いです。私はエンターテイナーじゃなくて、彼の彼女になりたい。
友達の萌えに式場建ててもらうんじゃなくて、今度デートでどこに行くとか、このアイテムをペアで買ったとか、クリスマスやバレンタインの予定とか、一緒に住みたい家とかの話をしたい。友人に萌えを共有してはしゃぐんじゃなくて、自分の未来の計画として結婚の話をしてみたい。
本当は挙式なんてどうでもいいんだけどね。いや、どうでもよくはないしずっと憧れていたけど、でも私が彼を好きでいるために白い服を着て誓いの言葉を述べる必要はないし、できないし。
できないからせめて、そろそろエンターテイメントから脱却したいなぁ。誰を楽しませたい訳でもない、自分が幸せでいるために彼を好きなんだから。