カレー

カレーは懐の深い食べ物だと思います。

先日、三軒茶屋にある「とんがらし」というカレー屋さんに行ってきました。店に置いてあった雑誌の記事によると、その店は1997年から営業しているようでした。僕が生まれた年です。ご高齢のマダムがひとりで切り盛りされていて、店に入ると「豚バラ軟骨カレーしか出ないけどいいですか」と聞かれました。それからマダムはゆーっくりと時間をかけて輪切りのネギに醤油を和え始めたので、これは永遠にカレーを食べることができないぞと思ったのですが、実際にはさほど待つこともなく、綺麗な山型に盛られたサフランライスとグラタン皿によそわれたカレーが出てきました。

「退位礼正殿の儀、見てこられたんですか?」

マダムはとても穏やかな口調で話しました。どうやらその日はランチ時の営業が忙しかったようで、「私も見られてないんですよ」とマダムは言いました。

「みなさんいつまでお休みですか。休みすぎると働きたくなくなっちゃうでしょ。そうならないようにしないとね」

とんがらしのカレーは不思議な味がしました。スープっぽいシャバシャバしたカレーは、スパイスの尖りが一切なく、ベースのトマトが強く感じられながらも、奥に何か緑茶のまろやかさにも似たような深みを持っていました。

これはカレーなのだろうか。

たくさんカレー屋を訪れていると、たまにそんな疑問を抱くカレーと出会います。しかし、そんなカレーもやっぱりカレーなのです。

カレーという枠組みは信じられないくらい広く深いなと思います。


さて、今日は「とんがらし」のカレーに触発されて、仕事終わりに目黒にあるインド食材の店「マヤバザール」へ行きました。間違えて中目黒駅で降りたので、目黒川沿いを20-30分歩きました。クミン、コリアンダー、フェヌグリークなどのスパイスを買って、夕飯はオリジナルのカレーにしようと息巻いていたのです。僕なりのカレー。カレーの懐の深さを全面的に利用したカレーです。



休みすぎると働きたくなくなっちゃいますよ。



僕が書く日記は今日で終わりです。ありがとうございました。



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