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運動器慢性疼痛に対するリハビリテーション

運動器慢性疼痛に対するリハビリテーション
加藤諄一、岩崎円、木村慎二
JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION 第30巻・第12号(通巻361号)・2021年11月号 P1208-1213

Key  Words:慢性頭痛、運動療法、認知行動療法、いきいきリハビリノート

【アブストラクト】

Ⅰ.運動器慢性疼痛の病態及び特徴
Ⅱ.運動器慢性疼痛に対するリハビリテーションエビデンス
Ⅲ. 運動器慢性疼痛に対するリハビリテーショントピック
Ⅳ. 運動器慢性疼痛に対するリハビリテーション実際

【内容要約】

はじめに疼痛の定義は国際疼痛学会より「実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こり得る状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験」とされている。

また慢性疼痛とは一般的に3ヶ月以上持続する、治療期間を超過し継続する痛みとされている。これには中枢性及び末梢性感作が関わっており、長期的な組織損傷等による刺激変化で神経の可逆性が生じていることが考えられる。

次に慢性疼痛患者の臨床的特徴を挙げる。

①抑うつ、不安、欲求不満、怒り、破局的思考、恐怖の認知・感情的要因

②睡眠障害、ADL低下(不動、廃用)の身体的要因

③社会活動性の低下、家族関係の変化、経済的ストレスの社会的要因

④自己価値観の低下、自己効力感低下のスピリチュアルな要因

⑤訴訟、医療機関への過度な期待、治療への依存のその他要因がある。


慢性化によりこれらが相まって難治化することも考えられる。難治症例では治療期間が長期化することで治療に対する満足感は低くなる。

そのため病態及び臨床的特徴を理解し、心理社会的問題に対するアプローチや運動療法を組み合わせて治療介入を行う必要がある。

運動器慢性疼痛のリハビリテーションエビデンスはガイドラインや心理的アプローチ等の有用性が示されている。国内での有病率の高い慢性腰痛、肩関節周囲炎、変形性膝関節症の運動療法エビデンスを挙げる。

まずは慢性腰痛だが、慢性疼痛診療ガイドラインや日本整形外科学会の腰痛診療ガイドライン2019において運動療法が強く推奨されている。

有酸素運動や筋力増強訓練、ストレッチ等により疼痛軽減、身体機能面やQOL改善の効果が認められている。しかしながら現在では運動療法の種類及び長期的な効果は統一した見解は示されていないことが課題である。

次に肩関節周囲炎は日本理学療法士協会が2011年に作成した理学療法診療ガイドラインにおいて運動療法は「行うように勧められる科学的根拠がある」とされている。

しかし肩関節周囲炎に関するシステマティックレビューは現状少なく、運動療法エビデンスの不十分さが課題である。

最後に変形性膝関節症では、慢性疼痛診療ガイドラインにおいて運動療法が第一選択とするべき治療であることが示され、一般的な運動療法が疼痛軽減、機能改善に有効であり、集団運動プログラムに比べ、個別に立案された運動療法プログラムでは長期的な疼痛軽減効果が示されている。

近年では慢性疼痛診療ガイドライン及び、腰痛診療ガイドラインで慢性疼痛に対する認知行動療法(CBT)が弱いながらも推奨される治療法として示されている。

CBTは患者、治療者間の良好なラポール形成が基盤であり、それに加えて適切な医療、傾聴と共感、患者主体の治療、変化への動機づけ等が重要であり、心理教育、マインドフルネス等の認知面、ストレスマネジメント、ペーシング調整、リハビリテーション等の行動面へ働きかけを行う。

慢性疼痛に対するCBTの効果は、腰痛患者の休職日数減少、復職率向上や、腰痛の程度、期間、うつ、ADL、健康関連QOLの改善が報告され、運動療法とCBTの併用の有効性も示されている。

CBT、運動療法、患者教育を含めた運動促進法(リハノート運動促進法)を「いきいきリハビリノート」を用いて実践されおり、良好な治療効果も報告されている。

リハノート運動促進法では心理教育や自己効力感の向上を目指し、行動活性化、ペーシングの調整やリハビリテーション(1日歩数のモニタリングによる有酸素運動、筋力訓練やストレッチの方法等)に対する絵や図を用いて工夫することで実践を図っている。

目標設定を行い、日々の行動や体調、思考、感情を記録し、自信に対する励ましを記載し、自己効力感を高めるように医療者は支援的フィードバックの記載や声かけを行う。また初めて使用する医療者が、目的や適応、内容を十分に理解するために医療者用のマニュアルも作成されている。

本稿の最後には運動器慢性疼痛に対するリハビリテーションでリハノート運動促進法を施行した一例が掲載されているため、ぜひ拝読して頂きたい。

【拝読させて頂き感じる点】

運動器慢性疼痛に関しては運動器疾患の患者のみではなくとも、日頃の臨床の中で出会うことが多いのではないかと思います。私自身も慢性疼痛が長期化して難治症例を担当することがあり、本稿で挙げられている認知行動療法の一つとして「いきいきリハビリノート」を活用できるのではないかと考えさせられる内容でした。

症例の満足度や自己効力感に対するアプローチとして運動療法と併用し活用し慢性疼痛によるADL、QOLの低下を減らしたい。

【最後に一言】

本稿にはいきいきリハビリノートが掲載されており、リハノート運動促進法を用いた症例紹介があるため、運動器慢性疼痛で悩まされる症例を担当する際は一度目を通して頂きたい。

記事:本多竜也

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