ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!(2005)
見るからに笑える顔をした人形たちが
気負わず伝えるクレイアニメの面白さ
奇抜な発明品で騒動を巻き起こす発明家ウォレスと、ドジな飼い主をしっかりガードするニヒルな忠犬グルミット。
イギリスのアードマンスタジオが生み出した短編クレイアニメ『ウォレスとグルミット』シリーズが、2005年、ハリウッドのメジャースタジオ、ドリームワークスのバックアップを受けて、初めて長編映画化されました。
コンピュータを駆使した技術革新の嵐が吹き荒れる映画界で、発展の荒波にかき消されるのが伝統の運命なら、クレイアニメの前途も多難だったでしょう。そんななかで本作が登場したことは喜ぶべきことです。クレイアニメの面白さを見直すきっかけを与える良質な娯楽作なのだから。
ハリウッド版になっても、数々の賞に輝き、多くのファンを生み出したオリジナルの短編の良さはまったく損なわれていません。
粘土で作られた人形たちの見るからに笑える風貌が人気の源には違いありませんが、見た目だけではお話になりません。
粘土の人形たちは、飛び出た真ん丸な目玉と顔からはみ出た大きな口を基本に、髪型や顔のパーツの誇張で違いを出しているに過ぎません。よくよく見れば人間も動物も男女もみな同じ顔という不気味な代物なのですが、それを愛嬌に変えてしまうのは、ふんだんにちりばめられたユーモアのセンスが抜群だからです!
本作では、キャラクターの喜劇役者ぶりに磨きがかかりました。追っても追っても捕まえられない巨大ウサギをめぐる捕物帳は、軽いミステリー風味を加えて、スリリングなアクション活劇に発展します。
ディズニーやピクサーアニメのように、最後にハートフルなメッセージを込めて良いお話にしようという気はなく、ただただ観る者を楽しませることに徹した気負いのなさが、アードマン作品が人々に親しまれる理由でもあると思います。
それにしてもやりたいことを自由にやり、しかも結果がついてきているとは。製作の苦労は計り知れませんが、アードマンのスタッフは幸せだと思います。
そんな幸福感が素晴らしい作品を生み出すのに違いありません!
『ウォレスとグルミット』に登場した、羊のショーンも人気者となり、スピンオフ映画が製作されました。***************************************************************************
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