アポカリプト(2006)
野蛮人の恐怖をリアルに描いたメル・ギブソン監督
衝撃的な映像は非情な人間たちへの戒めになるか?!
イエス・キリストの壮絶な最期を克明に描いた『パッション』(’04年)に続き、メル・ギブソン監督が放った衝撃作。
驚きのビジュアルで綴られる前代未聞のアクションアドベンチャーです。
【ストーリー】
マヤ文明後期。中央アメリカのジャングルで、平和に暮らす部族がマヤ帝国の傭兵たちに襲撃されます。
村の若者ジャガー・パウ(ルディ・ヤングブラッド)は、襲撃から逃れるために、身重の妻セブン(ダリア・ヘルナンデス)と幼い息子をかれた古井戸の底に隠します。しかしが、ジャガーは傭兵に捕まり、他の村人たちとともに村から連れ去られ、妻子は深い古井戸に取り残されてしまいます。
何の迷いもなく人間狩りを行い、ときに娯楽として楽しむ傭兵たちは、人間が持つべき理性や良心を持たない、まさに未開の野蛮人。「人を殺すことは悪いこと」という基本的な認識もなく、本能のままに悪意をむき出す傭兵の姿は、観る者を底なしの恐怖に陥れます。
さらに恐ろしいのは、街のシーン。街へ着いた村人たちを待っていたのは、生け贄という運命。ピラミッドの神殿の頂上に集められた彼らは、1人ずつ首を切り落とされるのです。
神殿の下では、儀式を見守る民衆たちが転げ落ちる生首に歓声を上げています。無知で野蛮な人間のなんと愚かで残酷なこと。目を覆いたくなる惨い映像はもちろん、非情な人々の姿に激しいショックを受けます。
物語後半では、度重なる死の危険にさらされながらも妻子を助けに向かうジャガーと、傭兵との追跡劇がスリルと緊張感たっぷりに描かれます。
ジャングルの大自然を舞台にしたダイナミックなアクションや凄惨なバトルシーン、そして古井戸にいる妻子にも死の危険が忍び寄るサスペンスフルな展開により、最後まで恐怖が持続します。
全編マヤ語のセリフを使い、無名の俳優だけを起用するなど、リアリティへの徹底したこだわりは、もはやメル・ギブソン監督の持ち味のひとつです。
『パッション』同様、総じて残酷なシーンが多く、物議を醸し、賛否の分かれる作品ではあります。
しかし、今もなお、当時と同じ、無知で野蛮な人間がいないとは、正直言うことができません。本作で描かれる衝撃的な映像はそんな人間たちを戒める手立てになるでしょう。
これほどのショック療法が必要とは、悲しい時代でもあるけれど。