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長いお別れ(2019)

認知症の父が教えてくれる家族の絆の大切さ
普遍的なメッセージが心に響く

認知症を患った父親と家族との7年間の軌跡が描かれます。

直木賞作家・中島京子の実体験に基づく原作を、長編映画デビュー作『湯を沸かすほどの熱い愛』(’16年)で高い評価を受けた中野量太監督が映画化。

切なくも温かい家族の物語です。

【ストーリー】
2007年秋、東京郊外に住む東家の母・曜子(松原智恵子)は、離れて暮らす2人の娘を父・昇平(山崎努)の70歳の誕生日パーティのために呼び寄せます。夫の転勤でアメリカに住む長女・麻里(竹内結子)、独身の次女・芙美(蒼井優)が戻り、久しぶりの家族団らんとなったパーティで、曜子が明かしたのは中学校校長も務めるほど厳格だった昇平の認知症でした。

少しずつ記憶を失くして、ゆっくりゆっくり遠ざかっていく――。その様子から、アメリカでは、認知症は「Long Goodbye(長いお別れ)」と表現されるそうです。

映画では、昇平の病気の進行がもたらす、家族の暮らしと心境の変遷を、優しさとユーモアを交えて綴っていきます。

父の認知症を告げられた2007年、芙美はカフェ経営の夢を持ちながら、スーパーの総菜コーナーで働く日々。恋人との同棲も解消したばかりでした。

一方、麻里は冷静で論理的な学者の夫・新(北村有起哉)と気持ちが通わず、慣れないアメリカ暮らしのストレスをひとりで抱えていました。

そんな夢の実現や、結婚の現実に悩む2人の娘たちにとって、いつも心の救いになるのは、認知症の父がとる思いがけない行動や言葉の数々だったのです。

親の実家に帰省したり、遊園地に行ったり、キラキラの三角帽子をかぶって誕生日を祝ったり……、誰もが子どもの頃に経験する出来事の数々。懐かしい家族の思い出には、その家族にだけ通じる特別な意味や想いが秘められているでしょう。

記憶を失いつつある昇平が、突然見せる昔の姿に、家族への愛が溢れ、熱いものがこみ上げます。

認知症という悲しい現実が教えるのは、家族の絆の大切さ。現実はもっと厳しいに違いありませんが、与えられた日常を受け止め、前を向く東家の人々の姿を目に焼き付けてほしいです。

名優・山崎努を始め、東家の家族を演じた実力派のキャストたちの自然な演技が素晴らしいです。


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