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小さな命が呼ぶとき(2010)

難病の我が子を持つ父親が起こした奇跡
どんな困難でも克服できると信じさせてくれる希望の物語

治療薬がなく、いずれ死に至る難病の子ども2人を持つ父親が治療薬開発の先頭に立つ――。我が子を思う父親の凄まじい執念が不可能を可能にした奇跡の実話の映画化です。

【ストーリー】
ジョン・クラウリー(ブレンダン・フレイザー)は妻アイリーンや3人の子どもたちと仲睦まじく暮らしていますが、8歳の長女メーガンと6歳の次男パトリックは生まれつきポンぺ病を患っていました。
ポンぺ病とは、徐々に全身の筋肉が動かなくなる不治の病で、2人の子どもたちはすでに自力歩行が出来ない状態でした。平均寿命は9年で、メーガンは何度も呼吸停止の危機に見舞われます。
有効な治療薬が無いなか、ジョンはインターネットで見つけたポンぺ病研究の第一人者、ストーンヒル博士(ハリソン・フォード)に会いに行きます。博士は「残された時間を子どもと過ごすよう」助言しますが、そこにはポンぺ病研究が医療界で冷遇視されている事情がありました。
ポンぺ病は希少性のために治療薬には利益が見込めず、開発に投資する企業が無かったのです。ジョンは実験費50万ドルを用意すると約束し、孤高の博士に最後の希望を託します。
もちろん、一介のビジネスマンのジョンに50万ドルを用意する力はありませんでしたが、知人たちと共にポンぺ病財団を設立し、なんとか9万ドルの寄付を集めます。すると博士はバイオ・テクノロジーのベンチャー企業を共同で設立しようと提案します。

我が子のために一心不乱に突き進むジョン、難病にもめげず強く逞しく生きるメーガンなど、クラウリー家の面々は実に人間的で魅力的です。

物語の中心になるのは、難病と闘う子供のいたいけな姿ではなく、彼らを救おうとする大人たちの前向きな姿。死ぬまでの過程を描く難病ものの定番とは一線を画し、生きるための挑戦を描く本作には勢いと明るさがあり、物語は弾むように進んでいきます。

個人が大企業を動かし、偉業を成し遂げる過程が実にリアルに描かれ、見応えたっぷり。さまざまな困難を乗り越えて行くジョンの行動力には驚くばかりですが、この物語が素晴らしいのは、ジョンの熱意を科学者や事業家が利害を超えて支えたことにあります。

不可能なことなど何もない、と信じさせてくれる希望に満ちた物語です。

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【ブレンダン・フレイザーについて一言】

本作で主演の1人を務めたブレンダン・フレイザーは、最新主演作『ザ・ホエール』(’22年)で、今年(2023年)の米アカデミー賞主演男優賞を受賞しました。

ブレンダン・フレイザーといえば、エジプトを舞台にしたアクションアドベンチャー大作『ハムナプトラ』(‘99~08年)シリーズで勇敢なヒーローを好演し、一躍主演級のスターとなりましたが、『ハムナプトラ』のイメージが強いためか、アクションやコメディ、ファンタジー映画への出演が多くなりました。本作のようなヒューマンドラマは珍しく、公開時、私は彼の出演に意外な印象を受けました。もちろん、とても良い演技をしていました。

しかし、本作以降は、それまでの路線に戻り、本国であまりヒットしなかったからなのか、彼の映画を日本で観る機会がなくなりました。だから、私は「ブレンダンは消えてしまったのかな?」なんて思っていたのですが、『ザ・ホエール』で見事に復活を果たしました。そして、ブレンダンが過去にセクハラ被害を受け、心身の不調をきたしたため、映画製作から遠ざかっていたことが明かされました。

『ザ・ホエール』は、過去の辛い経験から過食に走り、体重272kgの巨漢になり、死を覚悟した男性の最後の5日間を描いたヒューマンドラマです。死を望むかのように、自らの身体を痛めつける男性の姿は衝撃的ですが、そうせざるを得ないほどの男性の苦悩と葛藤が次第に明らかになり、胸に迫ります。ブレンダン・フレイザーは特殊メイクやファットスーツで275kgの男性になり、アカデミー賞受賞も納得の渾身の演技を見せています。

辛い経験を味わった人が立ち直り、活躍する姿は本当に励まされます。ブレンダンにはこれからも頑張ってほしいです!

『ザ・ホエール』2023年4月7日より公開

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