炎上案件を任されたとき、私が守る3原則

最近、とある知人と会話した際、炎上案件が話題に上がりました。

「炎上案件」、こう聞くと、歴戦の覇者な皆さんはきっと、
それぞれの過去に想いをはせているかと思います笑
ケンカしたこと、仲良くなったこと、恨まれたこと、etc.

いきなり結論ですが、私が炎上案件のPMを急遽任された際は、
以下を、炎上案件打開の必要条件と位置付けています。

  1. どん底の現場士気を、チームシナジーを産むレベルに回復させる

  2. すべての問題をPMにダイレクトに集約させる

  3. 対象ビジネス・業務をパイプラインで可視化し、緊急性の高いクリティカルチェーンの改善のみを当面行うことを明言し、全員に納得させる

まず初めに行うべきは、現場士気の回復です。

そもそも、炎上とトラブルの違いは何かと言えば、影響度以外に、
「簡単に解消(鎮火)しない」だと考えます。
さらに、炎上とは水素爆発のように一瞬で発生したというより、
「兆候はあった」ものがほとんどです。

するとどうなるか。現場の士気の、どん底までの低下です。
会社・事業へのエンゲージメントを持てなくなったメンバーのままでは、
炎上を抑えるまで時間がかかりすぎます。炎上は、関係各所の頑張りなくして容易に解決しません。

そのため、炎上が起きたことこそ、対応すべきはエンゲージメントの回復です。PMは、会社の代表の代わりとして、全力で現場と向き合い、信頼と士気を取り戻さなければなりません。

具体的には、「オーバーぐらいでも感謝の気持ちを言葉で表現し続ける」「パート・アルバイトの人にも分け隔てなく直接接する」「会社の不手際は代表して謝り続ける」といった、小学校で習うことを実践することが最初です。

当たり前ですよね?しかし、これが多くのPMができていません。
「おれは本社の人間だ」「現場の正社員が伝えるべきだ」「俺の仕事じゃない」などを、口にせずとも態度に出てしまっています。

ただでさえ、現場の士気は下がっています。
これ以上、PMの自尊心で下げないでください。

次に、問題の集約です。
炎上時、大小内容ともにバラバラかつ、まとまりもない問題が同時多発します。
ここで、課題管理しないのは論外として、気を付けたいのは、
「課題管理を新人に任せない」ことです。私は、PM自身がやるべきだと思います。

「すべて私に直接連絡してください。常にここにいるから、いつでも、どこでも捕まえていいよ。」そう、PMが現場全体に直接伝えます。
もちろん、そこから数日~数週間は文字通り、『地獄』です。
しかしそれを過ごせば、把握すべき問題のすべてを把握でき、気付けば課題の発生確率や影響度まで頭の中に整理できています。

これは、上述のエンゲージメント回復にかなり効果が出ます。
「PMが一番つらい仕事をして、一番この問題に真剣に向き合っている」と現場が知ると、「PMを助けたい。PMのために何かできないか」と能動的に助けてくれるようになります。
つまり、『PMエンゲージメント』にまず上昇させ、それを『会社エンゲージメント』に変換させていくことができます。

もちろん、システムの不具合の報告・指示もPMが直接、
開発ベンダーさんに行います。つまり、PMはシステムの理解も同時にしなければなりません。そうでなければ、修正状況の共有を現場にできませんので。要は、炎上中のPJのハブとなるのです。

最後は、パイプラインの可視化と取捨選択です。

炎上時は、特段の有利な事情がない限り、人もお金も期間も足りません。
つまり、『トリアージ』が必要です。

炎上時のトリアージは、納得感が必要です。『会社が言っているから、キーパーソンが言っているから』と言ったもので取捨選択しては、せっかく立て直しているエンゲージメントを崩壊させます。炎上時は、「黙って言うこと聞け」は禁句です。「じゃあ、こんな炎上を起こしたのは誰だ?」と文句言われるのが関の山です。

そのため、できるだけ速やかに渦中の業務をパイプラインで可視化し、ビジネスの大動脈を他人にもわかるようにしなければなりません。

このとき、問題をPMが集約していると、問題に関連する業務実態も吸収でき、現場の実情にフィットしたパイプラインが描けます。
(よく、管理職が作ったパイプラインで考えているPMがいますが、裏付けしましょう。古かったり、現場の創意工夫で変わっている可能性が大いにあります)

そして、パイプラインができたら、関係者の主要役への交渉、そして、
現場のキーパーソンの理解の取り付けです。
理解の取り付けまでのフェーズで、しっかりPMが現場の気持ちをつかんでいれば、話に乗ってくれます。

もちろん、関係者が頑固だったり、一部の人が自分の業務しか見ていないケースはありますが、真摯に信頼を重ねていれば、一定数は必ず理解をしてくれます。その人たちとも連携して、説得を同時にすればよいのです。
ここにも、見方を作るエンゲージメントの向上が活きます。

テクニカルな方法もありますが、土台はこれらですね。
きっとこれからも、私は炎上案件を助けることはあります。
そうなっても、上記のことを守って、現場と取引先を救いたいなと思います。

尚、直近とある炎上案件の火消しをしていましたが、
朝6時~夜12時の18時間労働を、文字通り1か月行いました…。

けど、取引先の社長さんやITベンダーさんからは、「きょーすけさんでなければ、3か月経っても収まっていなかった」と言ってくれました。
また、現場責任者には、課題収束後、黙って握手を求められました…!

炎上案件中は、喧々諤々の言葉通り、シビアな決断や、上層部への盾突きなど、人とぶつかることもたくさんあります。
しかし、炎上を無事収めた先には、確固たる人脈・絆が、できています。

今、そのような火中の栗を手に持つ方へ。
あなたの頑張りを見ている方はきっといます。あなたが真摯であれば、必ず。心から、同業者として応援しております。
そして、どうぞお体に気を付けて。炎上後は、『ぜったい』連休を取りましょう。仕事を忘れて、友達や家族とバカンスに行きましょう笑

※※余談※※

一点、忘れていました。終わらせ方です。

まず、炎上の終了は、「クリティカルチェーンだけは安定して動く」ことです。ほかにも問題は残ることがほとんどですが、ITベンダーの疲弊も蓄積しているため、少なくとも一週間程度だけでも解散させ、保守・改善フェーズに分けるべきです。

次に、保守・改善計画の策定です。PMがいなくなった後に現場が不安にならない様、現場が安心して業務遂行できるお膳立てまでしてあげましょう。
可能ならば、半年は連絡手段を残してあげましょう。

最後に、セレモニーです。
経営層クラスの偉い人で、人望も比較的ある人にお願いを取り、
PMが現場張り付きを解除する最後の日には、かならず現場責任者とメンバーに向けた感謝を伝え、御礼の品を渡すセレモニーを開催します。
かならず、「皆さんのおかげでわが社のビジネスが成り立っています。今後もご支援ください」と、『敬語』で話してもらうことで、PMが培ったエンゲージメントを、会社に移動できます。

エンゲージメントは、賃金などの外的要因に加え、「承認・信頼・感謝・尊敬」あって初めて増加します。
たとえ社内の一部署または子会社でも、このような区切りでは丁重に接することが、エンゲージメント増加のカギです。

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