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眼窩骨折(目の周りの骨折)③病態と症状及び診断
注:自分自身の学習と理解によるNOTEです。誤りがある可能性があるため、正書での確認をお願いします。
病態と症状及び診断
骨折の形態により違いはありますが、眼窩骨折の一般的な症状は眼球運動障害、複視、眼球陥凹、頬部知覚異常などです。
Missing rectus singがみられ下直筋の絞扼を伴う場合は、悪心や嘔吐・徐脈・失神を3徴とする三叉神経迷走反射(眼心臓反射)の出現頻度が高くなります。
線状骨折やpunched-out型の骨折では複視の出現が多く、burst typeの骨折では眼球陥凹が主訴となることが多いです。
複視は
①外眼筋内の出血や浮腫による外眼筋の収縮力の低下、
②眼窩内脂肪組織の浮腫、
③眼球の位置異常、
④外眼筋の断裂などの損傷、
⑤外眼筋の嵌頓や絞扼、
⑥眼窩内軟部組織(connective tissue septal system)の嵌頓や絞扼などの様々な原因によって起こります。
複視は正方視を含めて全方向において発生する可能性がありますが、眼窩底骨折の場合は上方>上方+下方>上方+内方の順、内側壁骨折の場合は内方>外方>上+内方の順の頻度で多いとの報告があります[35]。
通常は、眼球運動障害がある方を注視すると複視が増大する(上転障害なら、上方で複視増大)。
眼窩底骨折においては上転障害が生じる旨を記載している教科書が多いが、上転障害のみが生じるわけではありません。
上下転障害(下転障害に比較して、上転障害が強く出ることが多い)>上転障害のみ>下転障害のみ順で頻度が多いとされます[36]。
また、missing rectus signがある場合は下直筋の完全な嵌頓や絞扼があることから、強い上転障害に加えて下転障害が生じることも多いです。外眼筋の嵌頓や絞扼があった場合には、外眼筋以外の軟部組織のみの嵌頓や絞扼に比較して強い眼球運動障害が生じます[37]。
Punched-out typeやburst typeの場合は眼窩内容が脱出していなくても、下直筋や周囲の組織が出血や浮腫により緊張することで眼球運動が制限されることがあります。また、骨折線によっては眼窩内容の運動が制限されることもあり、それが原因で眼球運動障害を生じることもあります。この場合は、組織の出血の吸収や浮腫の軽減とともに眼球運動が改善してくることが多いです。
眼窩底骨折の症状は時間の経過とともに変化するため、臨床写真やHESSチャート及びヘルテル眼球突出計などを用いて客観的な記録を残しておくことが必要です。
35. 藤野 清, 徳田 安, 大田 耕, 他. 眼窩吹抜け骨折の治療成績と複視の回復経過. 耳鼻咽喉科臨床. 1992;85(3):401-9.
36. 稲富 誠. 眼窩底骨折. 日本視能訓練士協会誌. 1989;17:185-8.
37. Yoon KC, Seo MS, Park YG. Orbital trapdoor fracture in children. J Korean Med Sci. 2003;18(6):881-5.