眼窩骨折(目の周りの骨折)④手術の適応と時期
注:自分自身の学習と理解によるNOTEです。誤りがある可能性があるため、正書での確認をお願いします。
手術の適応と時期
手術の適応は、複視や眼球陥凹の有無といった臨床症状と画像検査所見から総合的に検討されます。
複視に対する手術時期については、特に線状骨折で眼窩内軟部組織の絞扼や強い嵌頓を伴う場合は緊急手術が必要と認識されています[18]。緊急性の程度については数時間以内[18]から数日[37, 38]までと幅広い報告があります、CTで完全なmissing rectus signを認め明らかな下直筋の絞扼がある場合は、受傷後数時間以内の手術が望ましいと考えられています[39]。そうでない場合は、数日間の経過観察の期間をおいても複視の消失迄の期間は変わらないとされています[39]。
絞扼や強い嵌頓を伴わないpunched-out typeやburst typeの場合は、外眼筋や軟部組織の腫脹によって眼球運動障害が生じていることから、腫脹が改善しない内に再建を行うと眼窩内圧を上昇させることになることになります。また、腫脹が強い間は手術操作がやりづらいため、腫脹が収まるまで数日間待ってから手術を行うのが妥当と考えられています[40]。
眼球陥凹を中心に考えた場合の手術時期については、複視が時間の経過とともに改善してくるのに対して、陥凹はより目立つようになります。これは、眼球陥凹の原因が眼窩容積の拡大にあるためです。特に受傷直後から眼球陥凹が目立つ場合は、軟部組織の浮腫の軽減とともに眼球陥凹の程度が強くなります。そのため、瘢痕が生じる前に早期手術を行うべきであるとの意見もあります[41, 42]。しかし、複視と違い眼球陥凹は整容的な問題であるため、手術の適応は患者の希望に沿う形になるのが望ましいと我々は考えています。多くの報告では2㎜程度の陥凹が手術適応とされているが、同程度の眼球陥凹があっても手術を望む患者と望まない患者がいます。一方、陳旧化した眼窩底骨折では、瘢痕によって癒着した組織の鋭的剥離が必要となるため手術の難易度は増します。しかし、眼球陥凹に対する手術は陳旧性となっても複視と比較してある程度の手術効果が得られやすい。従って、十分に観察した上で手術によるリスクと効果を患者と相談して決める必要があると考えられます[43]。
39. 東 晃, 矢野 浩, 樫山 和, 高原 英, 中野 基, 大石 正, et al. 小児眼窩底骨折に対して手術を行った13症例の検討. 日本形成外科学会会誌. 2018;38(7):347-53.
40. 矢野 浩, 芳原 聖, 前場 崇, 吉本 浩, 平野 明. 【眼窩骨折の手術適応】当科における過去10年間の眼窩底骨折手術 われわれの手術適応. 日本頭蓋顎顔面外科学会誌. 2014;30(1):9-15.
41. 高野 馨, 土屋 明, 戸塚 伸, 他. 眼窩底骨折手術200例の予後. 臨床眼科. 1995;49(13):1917-21.
42. 藤澤 邦. 【Blowout fracture診療マニュアル】眼科からみた検査・診断 手術の適応. ENTONI. 2004(38):13-21.
43. 天方 將, 平林 慎. 【眼窩骨折の手術適応】眼窩下壁骨折に伴う遅発性眼球陥凹に関する一考察. 日本頭蓋顎顔面外科学会誌. 2014;30(1):36-42.