前立腺炎になってから治るまで
2024年4月下旬、前立腺炎にかかった。
調べてみると、男性は2人にひとりくらいの確率で、人生で一度は経験する病気らしい。それほどメジャーな病気ならよく耳にするはずであるが、なぜか認知度は低いようだ。
現に、自分は前立腺炎というものをこれまで知らなかった。尿などに血液が混じるその症状から、病気になった当時はひどく狼狽し、不安に襲われた。
情報が少ないので、これから前立腺炎になった人も同様に不安になるかもしれない。そう思い、情報を共有するために実際にあった体験を日記形式でここに残しておく。
※これは自分に起きた症状なので、ほかの方も同じ流れ・症状が起きるとは限りません。詳しい話は医師に相談しましょう。
急な高熱が出たが放置
北海道の4月にしては珍しく、ぽかぽかと日の当たる暖かい日だった。せっかくなら部屋の空気を入れ替えようと窓を開ける。心地のいい空気に包まれ、そのまま昼寝をした。
目が覚めると夕方。体が震えるほど寒く、急いで窓を閉めた。
その日は湯船につかっても寒気が取れなかったが、寝たら治るだろうと就寝。
そして翌日、38℃を超える高熱が出た。
自分は平熱が低くて、いつもは35℃台が普通だ。風邪をひいても熱はあまり出ないけど、そのぶん37℃でもクラクラする。
そんな自分が高熱を出したものだから、動けるものではなかった。症状は熱と“尿の違和感”だけだったので、
「体もだるいしとりあえず病院はいいか。寝ていればそのうち下がるだろう」
と、たかを括っていた。
“尿の違和感”とは、はじめは膀胱が詰まったような出にくさを感じ、その後は頻尿のような状態があった。色も白っぽく濁っていた。
なんだかいつもの風邪とは違うが、まさか特殊な病気ではないだろうと思っていたのだ。
4日後くらいから徐々に熱は下がっていったが、何かがおかしい。頻尿が治らず、尿を出したあとに灼熱感というか、膀胱あたりをギュッと絞ったような感覚があってつらい。
左の股関節と睾丸あたりが痛い。
そして、ときどき血尿も。
血尿なんて初めてだから、それはもうパニックだ。いきなり赤い尿が出てくるんだもの。強い不安に駆られる。
尿のなかにかけらみたいなものが混じるときがあったので結石かもしれない、それとも糖尿病かなにかだろうか? と、症例と対策をひたすらネットで検索する。
明らかに様子がおかしいので、さすがに病院へ行こうかと思った。
しかし、今はゴールデンウィーク。病院が始まるのは1週間後だ。
この苦しみと不安を、1週間ずっと耐えなくてはいけない。
ついに病院へ行く
連休明けの火曜日。ようやく病院の連休が終わった。
一体どんな検査をするのだろう。小学生以来行ったことのない泌尿器科へ、ドキドキしながら入っていった。
用紙の記入をすませ、看護師に症状の説明をする。
痛みの具合など、なかなか説明が難しい。とくに、おしっこをしたあとで膀胱がまだ出そうとするような感覚。痛いわけではないけど苦しい、ギュッとするようなジウジウするようなあの感じは、言葉ではうまく説明できなかった。
そのあと渡されたのが、検尿の紙コップだ。朝済ませてしまったので出るかどうかわからないと看護師に伝えると、
「自販機やウォーターサーバーの用意もあるし、時間はかかってもいいからできるだけがんばってみてください」
とのこと。
試しにトイレに行ってみると、意外と出てくれるものだ。量は少なくても大丈夫みたいなので助かった。
紙コップを指定の窓口へ置いて座席に座ると、すぐに医者の前に呼ばれた。
「熱があったそうですが、病院へは行かれました?
……高熱があった場合は、念のため病院で診てもらってくださいね。大きな病気だったってことになれば、大変なので」
いきなり怒られてしまった。
「これは推測ですが、熱も含めて前立腺炎の症状でしょう。これからエコー検査をして体のなかを見てみます」
となりの部屋に連れていかれる。服を少しめくり、腹部にジェルをつけて機械を当てると、画面には不鮮明な映像が出てきた。
「これが腎臓です。きれいですね。膀胱にもほとんど尿は溜まっていません」
なんだかわからないが、大丈夫らしい。
診察室に戻り、結果を聞く。
「尿にまだ濁りはありますが、だいぶ治ってきているようです。
前立腺炎は薬を使わないとなかなか治らない病気で、ひどいときは入院する場合もあるんですけど、年齢もまだ若いから治まったようです。よかったですね。
できるだけ菌を取り除きたいので、抗生物質と炎症を引かせる薬を出しておきます。
尿意は我慢せずに、コーヒーなどのカフェインは取りすぎないように。あと辛いものなんかの刺激物も控えてください。それから、前立腺を休めさせるために射精もあまりしないほうがいいです。
前立腺炎は再発しやすいので、長い目で見ておきましょう。落ち着いてもストレスや生活習慣の悪化で再発する場合もあります。」
と、病気の詳細や対策なんかを聞かせてくれる。親身になって話を聞いてくれる先生で、不安はかなり解消された。
そのまま薬を貰って帰った。
今の薬局のシステムはすごくて、電子決済ができるうえにVポイントまで溜まるようだ。薬でポイントなんて貯めていいのだろうか……と思いながら、ちゃんともらっておいた。
その後、前立腺炎の再発と寛解
その後、薬を飲んでいたら数日でずいぶんよくなった。
病院には何度か通ったが、2回目以降の薬は抗生物質がなくなり、前立腺の炎症を抑えるもの1種類のみに減った。しかもこの炎症止めは、症状が治まったら飲むのをやめてもいいらしい。
数週間がたち、尿の白っぽい濁りが取れて通常と変わらなくなったので、薬をやめてみた。
するとすぐに、頻尿と下腹部の痛みが再発。
また薬を飲みはじめると、数日で症状が消える。どうやら完全に治ってはいなかったらしい。まだ菌が膀胱の先に常駐していたのだろうか。恐ろしい。
4週間分の薬がなくなる日。またぶり返すのではと怖かったが、それからは頻尿や痛みはすっかりなくなり、落ち着いた。
これが、自分に起こった急性前立腺の全容だ。
自分の身に起きた具体的な症状
前立腺炎は男性の約2人にひとりが経験するらしい。完全な治療法は確立しておらず、一度落ち着いても慢性化しやすいとのこと。(菌が入り急に発症するものは「急性前立腺炎」、持病として頻発するものは「慢性前立腺炎」という)
急性前立腺炎で高熱が出たり、体の痛みが強かったりする場合は、数日入院することも。
自分の場合は、つぎの症状が出た。
高熱(急性前立腺炎の場合)
頻尿と灼熱感
下腹部と睾丸の痛み
血尿と尿の濁り
血精液症
1.高熱
38~39℃の熱が4日ほどつづいた。
体が冷えたという原因があったのでてっきり風邪かと思っていたが、医師から聞いた話だと前立腺炎とは関係ないらしい。
ほかに原因があって、体の抵抗力も下がったことで発症したのだろう。
調べたところ、高熱が出るのは急性前立腺炎だけとのことだった。
慢性前立腺炎は熱は出ないらしい。
2.頻尿と灼熱感
30分~1時間に1回くらいの頻度でトイレに行きたくなる。
だが、出そうとしてもちょろっと出ず、残尿感もある。
そして尿が出たあとは、陰茎の奥あたりをギュッと締めつけられるような感覚があり、灼熱感がある。
これが非常に表現しにくくて、本当に熱いかといわれたらそういうわけでもなく、痛いわけでもない。
もうおしっこが出ないのに、体が出そうとしている感覚とでも言おうか。とにかく苦しいのだ。
そんな苦しみがあるからもうトイレには行きたくないのに頻尿という、地味にイヤなループがつづいた。
3.下腹部と睾丸の痛み
熱が下がったあとも、この下腹部と睾丸への痛みがあるせいであまり動けなかった。
歩くと響き、かなり痛いのだ。
横になり、ちょうどいい角度を維持すると少し楽になるのだが、寝返りが打てないので体がこわばって困る。
さらに、その痛くない角度が体調によって変動するので、痛みをこらえて適度に探さなくてはならず、さらに困る。
4.血尿と尿の濁り
人生初の血尿は衝撃的だった。
尿が薄赤いような色になっているのだ。
トイレットペーパーで拭ってみると、さらにはっきりと赤いのがわかる。
体から血が出ているのが純粋に怖かった。
それから、尿が白っぽく濁るのも前立腺炎の特徴らしい。
はじめは糖尿病にでもなったかと思った。
白いのは、細かいカスが混じっているからなんだそう。
前立腺炎は、前立腺の壁面がただれている状態らしいので、そこからはがれた血や組織が混じり、赤くなったり白くなったりするのだろう。
5.血精液症
これも非常に怖かった。
射精時の精液が赤くなるのだ。
あと、出るときに先っぽにジワジワした痛みのような違和感があった。
赤いといっても、鮮血のような色ではない。
水で少し薄めたような赤色が、透明な液体と混じって出てくる。
1週間ほど放置したあとだと、血が古くなるのか赤黒い色に変化する。
質感もいつもと違い、サラサラしていて水っぽい。
自分は射精時の飛びが結構いいほうなので、出るときに血がブシャッと噴き出しているように見える。
血が大の苦手な自分はこれが非常に怖かった。EDになるかと思ったくらいに。
医師に相談すると、泌尿器科の患者なら血精液症はよくあることだと言われた。気にするほどのものではないらしい。
……そ、そうなの?
前立腺を休ませるために射精はほどほどにと言われたので、頻度を1週間に1回程度まで減らした。
大体1ヶ月ほどで色はもとに戻り、その何週間後かに粘度も以前と同じになった。
前立腺炎にはお気をつけください
自分の場合は、薬を飲み始めてから血精液症も含めて元に戻るまで1ヶ月ちょっとかかった。
ただ、前立腺炎は再発しやすく、治療法などの研究もそれほど進んでいないそうだ。医師の話では、「人生を共にする病気」として考えたほうがいいものだという。
特に長時間座っている状態の人や運動不足の人、生活習慣が不規則な人は発症しやすいらしいので、気をつけてほしい。
でもまあ、男性は高確率で体験する病気とのことなので、なったらなったでしょうがないと気楽に考えてもいいのではないか。だって、みんな経験するんだもの。
自力ではそう治らないので、怪しいときは病院には早めの受診をおすすめする。
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