緋田 美琴 STEP 感想
いつもならば感想はふせったーにするのですが、メンテ中とのこと。
字詰めしかないnoteに抵抗も感じつつ、ふせったーと同じノリで書きましょう
まずは要点
・あるはずだと思っていた決定的な決裂
・見え隠れしていた最初の傲慢、未熟さ
・にちかへ、あるいは283プロの誰かへの類似性
などとだらだら書いていきます
緋田美琴というアイドルの過去は、非常に謎が多いものになっています。ことSHHis、ないしはルカという283プロの内情を絡めた展開が多いコミュの中にあって、確かに情報自体は細々出てはいても、彼女の過ごした長い時間を埋めるには至っていませんでした。
例をとって言えば、彼女がもとはアイドル志望ではなく、歌手志望だったこと、幼少期にピアノを嗜んでいたこと、14歳で上京したことなどはわかっていても、ではピアノから歌に方針を変えたのはいつごろ?なぜそこで上京を選んだ?14歳で上京した時、学業しながらレッスンもしてたらしいが、どこで生活していたのか?そのころから住居を貸してくれる事務所にいたのか?あるいは親戚か?4歳差のルカとはいつであった?など、ところどころに突っ込める。
アイドルの過去を描くSTEPでは、かつてその近辺が非常によく描写されたことのある一部のアイドルを除いては「プロデューサーに出会う近辺」が軸として描写されています。ということで、上京事情の話はないのだろうというのは感じていたところ。しかし、こっちはこっちで謎だらけなのが美琴でした。
まずもって美琴は283プロに来る前からアイドルであり、前の事務所をやめて移籍のような形でプロデューサーと出会うアイドルです。まずこの点。WINGコミュなど、初期の美琴の姿を見ると感じることに、まず頑なな姿勢があるでしょう。同様に初期のコミュでは「自分にもガタがくる」のような諦観に近いものの覗かせてはいるのですが、「死ぬほど」の言葉に代表されるような、理想への強い想いと執拗にレッスンを繰り返す姿勢は何とも固く見えるものです。
そんな美琴がWINGで過去を語るシーンでは、このようなことを語っています。「ルカと共にデビューし、CDも出したが、結局なりたいアイドルにはなれなかった」と。少し引っかかる発言ではあります。事実としてCDは出たものの売れるのはルカだけ、という上京はあり、彼女は移籍して「その時」とは切り離されているので、間違いを言っているわけではありません。ですが、彼女は自分の理想のため、あるいは焦りや不安と戦うためにひたすらにレッスンに打ち込んでいました。それは自分より技量で劣りながらも「推せる」アイドルの存在を知っていながらも、です。
では、なぜ彼女はわざわざ移籍したのか。「仕事がないなら、なりたいアイドルになりたいなら、ひたすらレッスンする」そんな姿勢が保てるのであれば、事務所が変わることに大きな意味はないでしょう。彼女がWING内で表向きルカに冷たい態度を取ったように見えた時点では「何かしらルカとトラブルがあったのではないか」とも疑え、しかし当時のことや今の美琴の気持ちが感謝祭などで段々とわかるにつれ、ルカは「移籍のきっかけになるくらいのトラブルを抱えた相手」のようには見えてこなくなります。では、相対的に美琴とルカを引き裂いてしまったといえる元事務所の方か?というと、この時の美琴やノーカラットでにちかが売れていく光景を「見たことがある」といい、その後も取り立てて表に出すほど気に病んでいる様子もなかった彼女が、単にルカを優遇されているだけで移籍まで決意するとは思えません。現ににちかが売れて仕事にかかりきりになった時は、一人で黙々と感謝祭の準備と練習の完成度を上げていましたし、喜ばしくはなくとも強い感情を呼び起こしてはいなさそうでした。
と、いったところで、そんな美琴をして単に状況や環境の原因以上に「ここではなれない」と思うレベルの話が前の事務所ではあった、というようなことを考えていました。わかりやすいのは「方向性の変更(キャラ売りなど)を強いられる」「引退を進められる」など、直接的に彼女の理想を阻むことでしょう。理想に対して頑なだった彼女は、逆にいうと理想を目指せる場があるならそのまま進んでいた可能性もあるのですから。
さて、そんな答え合わせがある意味で今回のコミュでした。移籍を決意するだけということもあって「事実上の解散」「仕事の見込みなし」「トレーナーへの転向の勧め」と見事なまでに揃っていましたね。辞意を伝えられたマネージャーは大変驚いていましたが、客観的に見てしまえばやむなしというところでしょう。しかし一方でマネージャー目線で言うなら「それでもルカを放って辞めはしないだろう」と思うほど、ルカと美琴が想い合うように見えたのかもしれません、あるいはソロとして担ぎ上げられながら「やがてつかめるはずの再始動の機会」を待っていただろうルカの存在があれば、マネージャーは当然それも知っているはずなので、美琴が抜けるという結末をすぐに受け入れがたかったというのも考えられるでしょう。
ともあれ見ている側としては納得のいく理由で事務所を出た美琴は、たびたび描写される人脈の広さを使って283プロに触れることになります。もちろんこの先はご存じの通り、と言いたいところですが、ここも結構今まで謎だらけであったところです。283プロに所属する際、ただ一人だけ社長に直接直談判していたり、ルカに「そこまでして」とまで言われており、ルカから283プロについて何か聞いているのかもしれない可能性があったり。そうした描写から「何かの意図を持って283プロというより天井努のプロデュースを受けようとしてる?」なんて邪推もはたらかせられたものですが、ジムシャニの描写や今回のSTEPでは結構あっさりと283プロを知り(前から知ってそうではなかったように思います)、天井社長に直談判しにきました。283プロに「前職アイドルの方歓迎、社長面接のみで決まるキャリア採用コース!」なんてものがない限り、書類や要項やらをもらうために事務所に直接突撃したら社長だけがいた、なんてところなのかもしれません。
美琴が283プロに来た理由、それは「やりたいようにやらせてもらっている」というイメージを受けて「ここならば自分のなりたいアイドルになれる」と感じたことでした。実際どの程度彼女が他事務所と比較を行ったのか、283プロ以上にパフォーマンスや練習施設などにお金をかける事務所もあるだろう中、更にそもそも(おそらく)上京後にずっと面倒を見てもらった事務所をやめ、社会人として初の転職活動をしている美琴が、(アイドルとして、はともかく)どの程度の想いをもって「この283プロという事務所なら」と思ったのかは定かではありません(現に来てから「変わってる」と感じ続けています)が、そんな少しばかり無鉄砲ともいえる節操の無さに、今の彼女との違いを想います。
「やりたいようにやらせてもらっている」という事務所に「なりたい自分のために何でもします」と入ってくること。若干かみ合ってない気もしますし、現に練習を見ただけのプロデューサーは不満も感じていそうです。それでありながら、やはり練習を突き詰めていたWINGも待っているわけです。こうして問題を抱えたまま所属が決まるアイドルは何も美琴に限らず、他のアイドル達もまた、WINGで明確な気持ちの問題にぶつかり精神的に成長するアイドル達ばかりで、中には問題ともいえるくらいの要素を持ったアイドルもいました。例えば仕事にしっかり遅れてしまう摩美々だったり、「プロデューサーは口を出さなくていい」と言わんばかりの夏葉だったり。それらは殆ど初期のコミュであるWINGでの成長と共に変化していきましたが、そんな初期こそを描くSTEPコミュの中で、必ずしも「成長する前の彼女たち」を悪いものにはしていません。無鉄砲だったり、ぞんざいだったり、投げやりだったり、そんな経緯から出会ったアイドル達も、そんなその時の彼女たちだったからこそプロデューサーと出会えたのだと言えるからです。
夢を阻まれ、初の移籍、迫るアイドルとしての限界、「私にはこれしかない」という自己評価。死ぬほどと言葉に出してしまうほどの想いあればこそ、些細なつながりからでも283プロへ手を伸ばしてくれたのかもしれません。そして、それを受け入れるプロデューサーもまた、「彼女が素晴らしく歌やダンスが上手いから」合格させたわけではありません。実力をしっかり知りながらもどこかにある不足。むしろそんな不足こそが彼を動かした原因のように思います。「欠けていると感じたから」というと、なんとも憐れみじみたものにも聞こえますが、彼女と組むことになる相方へプロデューサーが出した「アイドルにしたいという理由」を想えば、それを美琴にも当てはめられるのかもしれません。
美琴が移籍後おそらく初の大仕事になるだろうWINGに「敗退したらアイドルをやめる8歳下の女子高生」と二人で挑まされた美琴の心境いかばかりか。しかし、それもプロデューサーからすれば至極当然の理屈として、「幸せになるべき二人だから」と選んでいたのかもしれません。
最後に、今回多様された「壁」の表現。卵の殻だとわかるそれは、今までのコミュを想うと思い当たるものがちらほらと。美琴がどうしてそこまで「誰かを感動させるような」というある種他人を必ず必要とする夢を持つのか、それはシンプルに「外の世界へ自分も行きたい」という思いでした。この点をもってさえ、彼女が特別で普通な人間であることを感じられるようです。アイドルという場に繋がりや誰かとの関わりを求めることは、ファンはもちろん、アイドル当人でさえ思うことであるというのは、様々なアイドルがシャニマスで見せてくれたことでしょう。
そして、壁を壊そうと、このままではいられないというその姿は、やはり彼女の相方の初期の姿を想わざるを得ません。年齢にも経験にも大きな差がある二人でしたが、美琴がそれを自覚した時期、にちかが憧れ続けた時期を想えば、彼女達は同じスタートラインから走り出したのかもしれません。
また、黒という色や外へ出るために壁を壊そうとする姿は、ドアについての話が出るルカのことをも思い出します。あるいは、暗闇の中でドアもなく、窓もなく壁を壁と認識することしかできなかった美琴は、ピアノがわからない宇宙人のようなものだったのかもしれませんが、これはまた余談の話。暗闇を脱するものと描いてもなお、この事務所には黒い彼女とそのユニットがあるのです。黒から巣立つ美琴の姿のように見え、事実このころだけを切り取ればそういう側面もあるのでしょう。しかし、そんな彼女にも、彼女が選んだこの283プロとの出会いを語る機会があります。こうして美琴の過去が描かれた今、それもまた楽しみにできるというものです。
※1/17コメント対応
Tom様より
>>「自分にもガタがくる」のような諦観に近いものの覗かせてはいるのですが、「死ぬほど」の言葉に代表されるような
>>マネージャー目線で言うなら「それでもルカを放って辞めはしないだろう」と思うほど
>>マネージャーは当然それも知っているはずなので
他のコミュで十分な内容の割に、新情報については退所してもオーディションを受けている描写がなかったり整合性は怪しかったように思います。
美琴の対処がルカマネにとって予想外だったということは美琴がアイドルを目指す理由についての認識にも齟齬があり、この後ルカが引きこもるまで働かせることを考えると、ルカマネがコミュニケーションをとれる人間と考えるのは好意的に見すぎではないかと思います。
返答
Tom 様
退所してもオーディションを受ける描写がないことについては、「始めに目をつけたのが283プロであり、オーディションとまでいかないまでも詳細か何かを聞きに283プロを訪問し、そこで採用が決まった」と取れるかと思うので、「退所して何個もオーディション受けたのに」などの明言がない以上、整合性は取れているかと。コメント内での「他のコミュ」が何を指しているかコメントの方では不明瞭であり、かつ自分は美琴のコミュをSUGARLESSとシャニソンのコミュについて読めていないので、どこかに明言がありましたら改めてお伝えください。その場合は自分の誤りです。
ルカのマネージャーは特別「コミュニケーションを(十全に)とれる人間である」と特に記載したつもりはないのですが、(感受性がゼロではないだろうな、程度として書いているつもりです)ルカと美琴が側から見て不仲に見えてはいないでしょうし、美琴の主張は一度退所してより切実にはなっているでしょうが、目的については隠すようなものではないし、美琴の普段のスタンスを見れば齟齬というほどのものは発生していないと思います。「ルカと別れてまで」や「その年齢で?」など、意外に思うポイントは考えられはしますが、もし本当に美琴の思いを欠片も重んじないような致命的な齟齬があれば、上司から話があった時もっと喜ばしく転向の話を勧められたかもしれません。ルカのソロ活動に思うところある彼女からすると、実現性はともかく「いつかは美琴とルカで」程度の想いはあったのだと思います。納得はしていないかもしれない上司の言をそのまま伝えた形とはいえ、美琴の辞意に対してあの驚きようなのを見るに、「それを考えなかっただけの何か」はあるのだろうと考え、だとするなら「美琴は辞めないだろう」という認識はどこからくるのかと。そこで考えたのが「ルカとまたユニットで、というのが美琴の願いでもあるはず」だったりするのかと思ったりもします。感謝祭以降に「やりたかった」と溢すルカの姿は、尾を引けばルカマネは知ることになるでしょうし、ルカの方には未練があるとすれば、ルカにかかり切りのマネージャーが「美琴にとってもそれが望みであって欲しい」と思ったかもしれません。勿論、もっと身勝手に「美琴が辞めたらルカはどうなってしまうんだ」というルカ本位な思いありきで美琴が辞める可能性を考えないようにしていた、なんてこともあるかもしれません。勿論ここでは解釈できうる可能性の話しかできませんので、公式からの明示があればそちらに準ずることとなるかと思います
ちなみにルカが引きこもるまで働いていたこと自体は、ルカマネがルカの気持ちも知らず酷使したからというより、ルカの発散の形がアイドル活動であることは描かれ、またそれを邪魔しないようにするという形で尊重するルカマネの姿が描かれていたので、これも一つのコミュニケーションではあったと思っています。「話したところでルカマネに何が出来たのか」というところもあり、留学に関する隠し事もあり、クリティカルにルカを救える発言も出来てはおらず、「コミュニケーションがとれる人間」という判定をこの結果のみで判断するなら妥当にも思えますが、ルカには間違いなく心配の声は届いてたし、「ルカマネに働かせていた」「やりたくもないソロで続けさせられている」ような意識はルカから描かれてはいません。勿論傷つきながら続けていたことは事実ですが、それは283にきてからもある種同じであり、ある種ルカが自分で望んだ行為でした。ので、大きく取り立ててルカマネをコミュニケーションが取れない人と扱う気は少なくとも自分にはありません。もちろん、よりネガティブに見ることも可能ではあると思いますので、そこはTom様のお好みに応じた解釈をしても(少なくともそこの答えが明示される前になら)良いのかなと思います。
最後に、コメントいただきありがとうございます。個人の覚書のように示しているので、直接こうしたコメントをいただくのは初めてなのですが、ご興味を惹けたのなら幸いです。
返答終